還暦に拾った命

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今日は誕生日で還暦です。昨年の誕生日は癌研に入院した日でした。

60歳までよく生きたものだと思います。20代で大きな交通事故で奇跡的に助かっています。そのときに前歯はほとんどなくなって、以来ずっと部分義歯できました。その時の義歯を今でも使っているのですから、当時の歯科医の技術が良かったのでしょう。52歳で直腸がんになりました。肛門に近い癌なので本来なら人工肛門になるところを、東邦医大大森病院の教授から新しい手術方法を試してみないかと提案されて、うまくいった結果半年間の人工肛門でしたが、その後は普通に自分の肛門から便を出せるようになりました。

二度も命拾いをして、しかも運良く、「不幸中の最大の幸い」といってもよいほど運に恵まれてきました。

最初の事故の後は「せっかく拾った命だから、努力して立派な人生にしたいものだ」と考えました。そのように頑張ってきました。
二度目の直腸癌のときには「せっかく拾った命だから、のんびりと生きようよ」と思いました。面白いものですね。若いころに拾った命と、50歳を過ぎてから拾った命では受け取り方が違いました。

そして三度目の正直でしょうか、癌の中でも王様といわれる膵臓癌です。これも手術ができないほど進行して発見されることが多いのですが、幸いと言ってよいのか、手術ができ、ほぼ完全な切除ができました。

三度目は「せっかく拾った命だから、————」
何を入れるべきか決められずにいます。

決められずにいる原因は、膵臓癌の予後は決して良くないし、手術ができても5年生存率は5%~18%の間だからかもしれません。
一度目、二度目は、まだまだ生きられるはずだという考えがありましたが、三度目は「せいぜい数年の命か」という確信があるからかもしれません。

「楽しく生きよう」もよいし、「死について哲学しよう」でもよいかなとも。

後白河法皇が編纂させたといわれている『梁塵秘抄』に、

遊びをせんとや生まれけむ 戯れせんとや生まれけん 
遊ぶ子供の聲きけば、我が身さへこそ動がるれ

の今様があります。人は目的があって生まれてきたわけではありません。金を必要以上に持つことも、地位も名誉も、そんなものがどうだというのでしょうか。人生は遊ぶことだという、そのままを実践したのが良寛でしょうね。

こう考えてみると、自分で努力して生きてきたのではなく、生かされてきたのだということを強く感じます。人間のできることなんかはたかが知れています。自然・天・神・仏なんでも良いのですが、そうした宇宙の営みの一つとして『生かされてきた』のだと。

せっかく拾った命だから、生かされるままに生きよう』

これで行きましょう。
こう考えれば、5年生存率もエビデンス(科学的な根拠)も関係ありません。自分で選んだ治療法に責任をとり、結果はなんであれ受け入れるだけ。

天寿を全うするまで、ただ今を、今を生きる。明日のためではなく、今をそのまま生きる。今日は明日のための準備期間でなく、明日は永久に来ないのだから、今をそのまま生きる。努力はしない。のんびりもしない。花がただ咲いているように、鳥がただ歌っているように、私という人間を、ただ生きる。

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還暦に拾った命” に対して1件のコメントがあります。

  1. キノシタ より:

    トクナガさん、小竹さん。コメントありがとうございます。
    私自身まだ「腹に座った」かどうか、よく分かりません。いざとなると、おたおたするかもしれません。若いころの交通事故で危うく助かったのですが、「人間は簡単に死ぬんだなぁ」と思ったのが一番影響しているのかとも思います。

  2. 小竹 より:

     還暦おめでとうございます。私も団塊世代の病人ですが、きのしたさんの覚悟にはただただ学ぶだけです。
     きのしたさんは、そうした死生観が腹に座ったと感じられたのはいつごろからでしょうか。未熟な私は、目や耳には入れども、なかなか腹に座りません。

  3. トクナガ より:

    60回目のお誕生日、おめでとうございます!
    キノシタさんのブログには、いつも教えられ、励まされております。ありがとうございます。
    「私という人間を、ただ生きる」・・・私も目指したいと思います。

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