がんの最後は痛いのか?

土日は体調を崩してしまい、終日家で休養していました。Pancanのパープルリボンキャラバン2010に参加を予定していましたが、取りやめ。中村祐輔教授らの話を聞きたかったのですが、そのうちオンデマンドでビデオがアップされるでしょうから、それを期待しています。

このように、少し体調が悪いだけで「再発か?」と考えるのががん患者です。3年経とうが10年経とうが変わらないと思います。がんの末期は激しい痛みに襲われると、一般的の考えられていて、その中でも膵臓がんは七転八倒の痛みである、と言われます。「風のガーデン」の主人公・白鳥貞美の場合もそのように描かれていました。最近は韓国ドラマでもがんというとなぜか膵臓がんです。

がんの最後は痛くない
しかし、このような常識はまちがっている。多くの医者でさえも、がんの最後は痛いものだと誤解している。本当は「がんの最後は痛くない」のだと、9年間に800人のがん患者を看取った、在宅緩和ケア医の証言です。タイトルもそのまま『がんの最後は痛くない』。書いたのは、千葉のさくさべ坂通り診療所の大岩孝司院長です。

七転八倒をする患者は現にいる。しかしそれは緩和ケアのやり方が悪いのであり、鎮痛剤の使い方がまちがっているのだ。在宅ケアでこそ、がんの痛みのない終末医療が可能なのだと証言します。住み慣れた自宅で終末を迎えることが、がんの痛みを和らげるのだと。しかし、本当に在宅で最後を迎えられるの?急変したらどうするの?家族が負担になって共倒れになるのでは?費用がかかるのでは? こうした疑問に具体的な例を挙げて「心配要らないよ」と言ってくれます。費用を例に取れば、在宅の方が病院にいるよりも安くなる。なぜなら差額ベッド代が要らないから。ほとんど保険診療の範囲内で収まる。患者の現状と病気の進行を予測できていれば、急変したときも慌てなくてすむのだ、と言います。

中島梓の『転移』でも、あるいは5月に亡くなったルイ茶長さんも、前日までブログを書くほどで、激しい苦痛は感じていない様子でした。膵臓がんの場合は、局所再発で膵臓の裏にある腹腔神経叢を侵せば白鳥貞美のような痛みになるのでしょうが、肝臓に転移するようなときには、そのような激しい痛みにならないようです。

WHO三段階除痛ラダーに従って、きちんと鎮痛剤を使えば、ほとんどのがんの痛みは和らぎます。痛みを自分でコントロールできるようになる。日本はまだまだモルヒネの使用量が少なすぎる。また、モルヒネが効かない痛みを考えるとき大切な概念として「トータルペイン」という考えがある。これは近代ホスピスの創始者であるシシリー・ソンダース女史が提唱したもので、がん終末期の痛み・苦痛は、

  1. 身体的痛み
  2. 社会的痛み(会社での居場所がなくなる、今後の治療費をどうする等)
  3. 精神的痛み(残された家族はどうなる、治療法を間違えたのかも・・)
  4. スピリチュアル・ペイン(霊的痛み)
    自己の存在への疑問。俺の人生は何だったんだ・・・

の4つを相互に関連したものとして、トータルでとらえなければならない、というソンダースのが考えです。

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1977年、一人の日本人医師が、セント・クリストファー・ホスピスを訪問してソンダース女史に会います。そして日本にはまだ存在していなかった「在宅ターミナル・ケア」を、先駆的に自分の病院で実践するようになりました。この人が鈴木内科医院の院長・鈴木荘一先生で、日本における在宅ケアの草分け的存在です。私の会社の近くでもあり、会社の健康診断から、もうかれこれ30年来この医院にお世話になっています。膵臓がんになってからも癌研で処方された薬をここでいただいています。今はご子息の「赤ひげ先生」鈴木央副院長が私の主治医です。看護師を引き連れて、患者の自宅へ、坂の多い街を電動自転車で疾走しています。(「週間がん もっといい日 Vol.107」に鈴木央先生のインタビューが載せられています。)

 鈴木医師の疼痛管理の考え方は、極めてシンプルなもの。モルヒネ、オキシコドン、それに貼り薬のフェンタニールの三つのオピオイドを、WHOラダーに則って使っていく。ただし、そのプログラムで行くと決めたら、徹底してラダーに沿った治療を進める。強い痛みには強い薬を、弱い痛みには弱い薬を、躊躇なく使っていく。医療用麻薬を中途半端に使うと、かえって苦痛を招く危険性があることを、鈴木医師は経験的に知っている。
「緩和ケアの目的は、単に痛みを取るだけではないんです。痛みが取れれば精神的なケアも進むし、それによって日常生活にもゆとりができる。苦痛が消えることで食欲が出る人もいて、それによって栄養状態が改善されれば、化学療法のパフォーマンスステータスが上昇することだってある。決して消極的治療ではありません」。

在宅診療の医療上のメリットもある。自宅を訪ねれば患者の生活水準を嫌でも知ることになるが、そこから患者の苦痛の一因を推し量ることもできるのだ。鈴木医師が以前、経験した肺がん患者のケースを話してくれた。
「痛みが激しくて、麻薬の投薬量は増えていくばかり。食事も摂れないので、病院では高カロリー輸液を入れ、呼吸も苦しいので酸素もどんどん送り込んでいた。それでも、痛みが取れないまま在宅に切り替わったのですが、ご自宅にお邪魔してわかったのは、その方の最大のストレスは、“経済的不安”だということ。それで輸液や酸素の投与は止めてしまい、薬もできるだけお金のかからない投与法に変えたところ、きれいに痛みが取れました」

「とにかく患者にも医師にも知ってほしいのは、がんの痛みがあるなら、どんな状況であっても麻薬は使えるということ。積極的治療の段階で麻薬を使うことは、安全性の面でも何ら問題のないことであり、たとえ早期のがんであっても、痛みがそこにあるのであれば、緩和ケアが介入すべきということを、当たり前の知識として持ってもらうことが大切なんです」

このインタビュー記事を見ただけでも、ソンダースのトータルペインの思想が貫かれていることが分かります。『がんの最後は痛くない』にも同じことが書かれていますが、こちらは親子二代の経験的確信ですね。

こんなわけですから、私のがんの最後は鈴木先生にすっかりお任せする予定なので、痛みについてはまったく心配していません。すると「死」に対する不安も半分以上はなくなる気がします。


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