ダークチョコは脳を若返らせ、がんにも効果があるのか?

少し前に、「カカオを多く含むチョコレートを食べると脳が若返る可能性がある」との勇み足の発表に批判が出たとのニュースがありました。

チョコを食べない対照群を設けないなど、ずさんな試験計画で、これでは信頼性がないと批判されても当然です。

「チョコレートを食べると脳が若返る可能性がある」とした研究発表について、データ不足などで信頼性に欠けるなどと批判が出ていた問題で、内閣府は8日、実験をやり直すことを有識者会議に報告した。内閣府の支援で食品大手「明治」と共同研究した山川義徳氏はその後の記者会見で「予備段階の研究を紹介した。反省している。エビデンス(証拠)強化に努力したい」と述べ、やり直す意向を示した。

では、カカオなどのポリフェノールと健康、特にがんとの関係はあるのでしょうか?これまでの研究結果をまとめてみました。

ダーク・チョコの抗がん作用

日経Goodayの記事が載っています。

健康にいいといわれるチョコレートとアーモンド。このスーパーフードを一緒に食べるとどのような相乗効果が得られるのか。慶應義塾大学医学部の井上浩義教授と明治の共同研究グループは、アーモンド入り高カカオチョコレート(カカオ分70%)を1日8粒、8週間摂取する試験を実施。便通、肌質の改善に効果があるという結果を報告した。

便通、肌質に効果があったという報告ですが、この組み合わせはがんにも効果が期待でします。

チョコには結腸がんの予防効果がある

チョコレートには結腸がんの予防効果があるとの、スペインでの研究がありました。ラットでの研究ですが、原料のカカオに結腸がんなどの腸疾患予防に効果があるとする論文です。

 研究チームは、カカオ含有率が12%の餌を8週間、ラットに与えた後、がんの誘発要因を加える実験を行った。その結果、カカオを多く含む餌を摂取していたラットは、結腸がんの兆候である異常陰窩巣の形成が大幅に低下していた。陰窩(いんか)とは、直腸や結腸の内壁表面に見られる管状の腺で、正常に機能しているときは常に腸の内壁を再生し粘液を生産する。
また、抗酸化機能も高まり、発がん性物質による酸化損傷が減少していた。こうした実験結果から研究チームは、体内で腫瘍を発生させる細胞増殖に関連した細胞シグナルの伝達経路をカカオが遮断し、体の防御システムとして機能しうると結論付けた。カカオを多く摂取する食生活は老化細胞や不健康な細胞が自然死する「アポトーシス(機能的細胞死)」を促し、新細胞が生じる余地を作る効果があることも突き止めた。これが、がんの進行を防ぐ「化学予防メカニズム」になるという。<原文

心代謝障害のリスクを減少

昨年の9月には日経メディカルオンラインに「ダークチョコレートに心代謝障害の発症リスクを減少させる効果が示唆」という記事も載っています。こちらは欧州心臓学会(ESC2011)で発表されたメタ解析の研究結果です。

4576報の文献から、7報が選定基準に合致した(参加者総数は11万4009人)。この7報の試験間にはチョコレート消費の測定法、方法およびアウトカムに大きな違いが認められた。7試験のうち5試験において、心代謝障害のリスクに対し、チョコレート消費がより多いグループに有益な効果があることが報告されていた。一番チョコレートの消費量が多いグループは、一番少ないグループに比べ、心血管疾患を37%(オッズ比:0.63、95%信頼区間:0.44‐0.90)、脳卒中を29%(オッズ比:0.71、同:0.52‐0.98)、それぞれ減少させていた。

また、健康に良い成分はビターカカオに含まれており、砂糖や脂肪分に含まれているのではないとし、「市場に出回っているチョコレートは非常にカロリーが高いので、食べ過ぎは、肥満や糖尿病ばかりか心臓病のリスクをも上昇させる恐れがある」と注意も促した。

効果があるのはビターチョコですよ。それもカカオ成分70%以上の良質なものを選びましょう。カカオに牛乳を混ぜると、カカオの抗がん作用が弱くなります。ミルクチョコなどはダメです。

この論文に関しては、代替医療の著作も多い坪野吉孝氏はアピタルにこのように書いています。

チョコレートのような身近な食品が、心血管疾患などの病気の予防につながる可能性を指摘した点で、興味深い論文だ。ただしこの分野の研究はまだ新しく、論文の数も7件しかなかった。そのため現時点では、チョコレートと病気予防との因果関係が確認されたと結論することはできない。臨床試験を含めた研究が、今後さらに必要だろう。

ポリフェノールの抗がん作用

さらに、次のような報道もありました。

20160908_20_24_01チョコレートに含まれるポリフェノールにそうした作用があるようです。

ポリフェノールは、植物性食品の色素や香り、苦味、辛味などの化学成分である「フィトケミカル」の一種です。ポリフェノールは、すでに明らかになっているだけでも、約8000もの物質の総称です。そのなかで、化学構造に応じて、さまざまなグループに分類されています。例えば植物エストロゲンともいわれるイソフラボンやスチルベン(特に心血管疾患発症のリスクを減らし、寿命を延ばすなどと話題のレスベラトロール)、フラバノール(認知症のリスク軽減への関連などが話題)などが代表です。

ポリフェノールを多く含む食品

ポリフェノールの含有量の多い食品は、果物では①ブルーベリー(300mg/100g) ②すもも(245mg) ③イチゴ(230mg)、飲料では、①赤ワイン(230mg/100ml) ②コーヒー(200mg) ③緑茶(110mg)の順です。()内は100g,100ml辺りの含有量。

ブルーベリーやすもも、赤ワインをたくさん摂ることは難しい(飲んべえでなければ)ので、緑茶、ダーク・チョコ、コーヒーで摂るのが手軽でしょう。

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「CACAO88」なら、1枚にポリフェノールが160mg。1日2枚ならブルーベリー100gに含まれるポリフェノールが摂れます。簡便ですね。

さらに、チョコと緑茶を同時に摂れば、ポリフェノールとがん細胞が隣接組織へ侵入する働きを抑制し、がん細胞に影響を補給する血管新生を抑制すると言われているカテキンの一種、エピガロカテキンガラート(EGCG)も摂れます。

『がんに効く生活』では・・・

シュレベールの『がんに効く生活―克服した医師の自分でできる「統合医療」』でも「付録 抗がん効果のある食物リスト」(P.209)の中にブラックチョコレートが含まれています。

ブラックチョコレート(カカオ分70%以上)には、多くの抗酸化物質、プロアントシアニジン、ポリフェノールが含まれている(チョコレートひとかけらには、赤ワイン一杯の二倍、よく蒸らした緑茶一杯と同程度のポリフェノールが含まれている)。これらの成分には、がん細胞の成長や血管新生を抑える働きがある。

一日に20グラム(板チョコの半分程度)までであれば、カロリーの摂りすぎになることはない。GI値は中程度であり、精白パンよりもはるかに低い。

として、やはり緑茶といっしょに摂ることを推奨しています。

赤ワインとチョコ

【2017年2月12日 AFP】赤ワインとチョコレートはがん治療薬になりうるとする研究結果が、米カリフォルニア(California)州ロングビーチ(Long Beach)で10日開催されたTEDコンファレンス(TED Conference)で発表された。

 米マサチューセッツ(Massachusetts)州のNPO組織、血管新生基金(Angiogenesis Foundation)は、腫瘍(しゅよう)に栄養を運ぶ新しい血管ができないようにする物質を含む食品の特定を進めている。血液を供給させないことで、がん細胞を「餓死」させられるという。ブルーベリー、ニンニク、大豆、お茶にこのような抗血管新生特性があることが知られているが、発表した同基金のウィリアム・リー(William Li)総裁によると赤ワイン用ブドウとダークチョコレートにもこの効果があることが分かったという。

腫瘍に栄養を運ぶ血管の新生を阻害する薬は、すでに10種以上が医療現場で使用されている。同基金が一部の食品と承認されたがん治療薬の効果を比較したところ、大豆、パセリ、赤ワイン用ブドウ、ベリーなどで薬と同等またはそれ以上の効果が確認されたとしている。これらの食べ物を一緒に食べた場合、効果はさらに上がったという。

赤ワインもポリフェノールを多く含む食品です。

できてしまったがんでも効果がある?

さて、抗がん作用があるらしいことは分かりましたが、できてしまったがんにも効果が期待できるのでしょうか?『がんに効く生活』でシュレベールは次のような例を挙げています。(P.171)

生化学者リシャール・ベリヴォー博士は、余命数ヶ月と宣告された膵臓がんに苦しむ友人レニーの妻から一本の電話を受け取った。妻は「あなたが食物の抗がん効果に興味を持っているって聞いたわ。治療効果があると思われるものならなんでも試してみたいの。もうこれ以上失うものなんて何もないでしょ。」と言った。

ベリヴォーはレニーのために”抗がん効果のある食物リスト”を作成した。キャベツ・ブロッコリー・ニンニク・大豆・緑茶・ターメリック・ラズベリー・ブルーベリー・ブラックチョコレートなどであった。

「がんは肥満のようなものだから、毎日の努力が必要なんだ。毎食ごとにこれを食べること。これ以外は食べないこと。炎症を活性化させるオメガ6を控えて、オリーブ油を使うことを告げた。数種類の日本料理とともに。

レニーは数週間後にはベッドで体を起こすことができるようになり、日に日に好転して、家から出て外を歩けるようにもなった。

レニーはそれから4年半生きた。膵臓がんが直りはしなかったが、長い間腫瘍は安定したままで、一時は4分の1ほどに退縮した。

Foods to Fight Cancer: Essential Foods to Help Prevent Cancerベリヴォー博士のこのリストは、ペーパーバック『Foods to Fight Cancer: Essential Foods to Help Prevent Cancer』として今でも多くのがん患者に読まれています。『がんに効く生活』にはその一部が紹介されています。

 

食物の相乗効果がだいじだよ

がん患者は、ターメリックが効くと聞けばそれを飲んでみる。牛蒡子が良いと聞けば薬局に在庫がなくなるほど殺到する。深蒸し茶がテレビで紹介されたらそれに走る。しかし、大事なのは、一種類の食物ではなく相乗効果です。ベルヴォーは研究成果を三つにまとめまています。

  1. 一部の食物は、がんの成長を促進する”プロモーター”となる。
  2. 逆に”反プロモーター”となる食物もある。それは、がんの成長に必要な機能を阻害し、がん細胞をアポトーシスに追い込む。
  3. 食物は毎日、1日3回、人体に働きかけるものである。そのため、がんの進行を促進、抑制する生物学的機能に多大な影響を与える。

M.D.アンダーソンがんセンターのフィドラー教授は、がん細胞が利用する成長因子ごとに色分けすることに成功した。共同研究者に膵臓がん細胞を顕微鏡で見せながら、細胞ごとに色が違うこと、ある細胞は赤や黄に、核は青になり、別の細胞は綠にといった具合であることを示した。(P.194)

膵臓がんの腫瘍を見ると、さまざまな色が現われており、がん細胞が(細胞ごとに異なる)さまざまな成長因子を利用していることがわかる。「ここから得られる結論は?」フィドラーはたずねた。「赤の成長因子を抑えても、綠にやられてしまう。綠を抑えても、赤にやられてしまう。ということは、これらを一度に全部やっつけるしかない。」

ニューデリー医科大学の研究では、マウスに抗がん効果のある成分を一種類だけ与えると、がんを発症するマウスは半分に減った。二種類を与えると3分の1になった。三種類を与えると5分の1に低下した。4種類を与えたら、10分の1だけががんを発症した。

このことから言えるのは、単一の抗がん作用食物だけでは十分でなく、それぞれの抗がん成分が他の成分と相乗効果をもたらすということである。相乗効果、つまり複雑系的にいえば、各要素が相互に複雑に関係し合って、驚くような効果を発揮することがある。いや、むしろ実際の人間の体、がん細胞の中では、多くの要因が複雑に絡み合って化学反応が進行しているのであり、その一つの要因だけを取り出して、要素還元的に分析するのがEBMであり、エビデンス至上主義だ。ダーク・チョコだけではダメなのです。食事全体を抗がん効果のあるものに変え、がんが育たない体内環境を作ることが大切です。

「現時点では因果関係が確認できたと結論することはできない」などは、学者や医者に言わせておけば良い。そもそも因果関係は”厳密には”確定できるものではない。人間に見えるのは”相関関係”だけであり、ヒュームが言うように因果関係は確認することは不可能です。

複雑系においては原因と結果は一対一には対応しない。だから抗がん効果のある食物のエビデンスなどは、永久に出てきはしない。そのようなものを待っているのは「百年河清を待つ」行為であり、ばかげています。マウス実験で効果があると分かれば、残された時間が限られているがん患者は、それを試してみるべきです。

アーモンドの抗がん作用

ついてに、アーモンドです。

シュレベールもナッツ類を抗がん食物として推奨していますが、ここではロイターの記事を紹介します。

[シカゴ 17日 ロイター] – 米国の研究チームが、週に57グラム以上のナッツを食べた結腸ガン経験者の再発率とガンによる死亡率が、食べなかった人よりはるかに低いとの研究結果を発表した。この量は、アーモンドなら48粒、カシューナッツなら36粒の量となる。

ダークチョコをお茶ミルで挽いて入れた深蒸し茶といっしょに摂る。アーモンドをつまみながら食べる。私の昼食は時々これです。糖質も少ないので血糖値にもやさしいです。

<これまでの記事に加筆・追加したものです。>


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