膵臓がんの腹腔鏡手術を勧められたら・・・

医療法人 光生会のサイトから
腹腔鏡手術を勧められたら
腹腔鏡手術で何人もの患者が術後に死亡した群馬大学病院と千葉県がんセンターの事件は、まだ記憶に新しいところです。
膵臓がんの手術の多くは開腹で行われていますが、一部には腹腔鏡手術も採用されてきています。これは、2016年4月からは肝切除術全般と膵頭十二指腸切除術にも保険適用となったためです。
主治医から膵臓の腹腔鏡手術を勧められてとき、どのように考え判断すれば良いでしょうか。
膵臓の手術は開腹手術でも難易度が高いもので、腹腔鏡手術が進歩した現在でも、腹腔鏡を用いた膵臓手術は限られた施設でしか行われていないのが現状です。東京医科歯科大学や慶應義塾大学付属病院などが積極的に取り組んでいるようです。
利点と欠点
腹腔鏡手術には次のような利点があります。
- 傷が小さく、痛みが軽い
- 手術後早くから歩くことができるので回復が早い
- 手術後おならが早く出て、食事も早く開始することができる。
- 早く退院でき早く通常の仕事に戻れる。
- 美容的に優れており若い女性に適している。
一方で、手を腹腔に挿入できないため糸で縫合したり、出血部を結紮したりする事が困難で、手技的に難しく、次のような欠点があります。
- 人間の指などのような触覚がない。
- 見える方向が一方向で、視野が限られている。
- 一般的には立体的な3次元映像が得られない。
- 腹腔に挿入できる手術器械に制限がある。これらの結果、微小な腫瘍を取り残す危険性がある。
- 摘出物の回収が困難な場合がある。
腹腔鏡手術は先進医療でも何でもないのです。お腹を大きく開ける開腹手術と同じことを、お腹を小さく切って、なんとかやっているのに過ぎません。腹腔鏡でないとできないわけではないのです。
特に、肝胆膵がんは開腹手術でも難易度が高い手術が多いのです。手術は安全性と根治性を満たして始めて良い手術と言えますが、腹腔鏡ではどちらも難しくなります。
肝胆膵の学会内では「 どうしてこんな難しい手術に保険が通ったんだ」という声も出ているそうです。
しかし、例えば会社の経営者で自分が1ヶ月も入院したら会社が立ちゆかないとか、高齢で開腹手術には耐えられそうもないような場合は、リスクを承知で腹腔鏡手術を選択することもあり得るでしょう。
腹腔鏡手術は開腹手術に比べて保険点数が高く設定されています。つまり、患者の支払う費用は割高になります。高額療養費制度があるとはいえ、月をまたいだ場合はその恩恵が小さくなることもあります。
診療報酬が高額に設定されているので、無理にやりたがる病院が出てくる恐れもないとは言えません。病院の経営のために、開腹手術よりも腹腔鏡手術を勧めているのではないのか、この点も考慮しておくべきだろうと思います。
群馬大学病院と千葉県がんセンターの腹腔鏡手術による死亡例では、これらの施設が報告した論文には、死亡例は一つも記載されていませんでした。こうした隠蔽体質が残っているのですから、隠された死亡例がまだあるに違いありません。
医師20人に聞きました
「週刊現代」が現役の外科医20人にアンケートをした結果があります。それによると、6割の医師が、「やってはいけない」「なるべくやめたほうがいい」と回答しています。「開腹手術よりは安全」と答えた3人のうち2人は産婦人科の医師でした。
「手術中に転移が発見された場合には、開腹手術に移行することも多い。ならば最初から開腹でいい」
「たしかに、高い技術を持った医師がやれば、普通の手術より負担は少ない。しかし、本当にうまい医師というのは実は少ないのです。『絶対に安心』と言えるほど、十分な技術を持った医師が育っていないと思います。」
などと、否定的な意見が多い。
膵臓がんの手術で腹腔鏡手術を勧められたら、こうした点も考慮した上で、迷ったらセカンドオピニオンを受けると良いでしょう。
ただし注意することは、膵臓がんはいわゆる「足が速い」。セカンドオピニオンや再検査などで数ヵ月間が空くと、いざ手術をしようとしたときには、腫瘍が大きくなって「手術不可」となることがあります。それも考えに入れておいてください。