免疫チェックポイント阻害薬で、逆にがん増殖速度がアップ

これは重要な論文ですね。

「消化器系の悪性腫瘍患者における免疫療法後の超進行」

免疫チェックポイント阻害薬で治療を受けた消化器系の患者で、腫瘍の著しい増殖(超進行:Hyperprogression)が認められたそうです。

免疫チェックポイント阻害薬の使用前と使用後のがん増殖の早さ(腫瘍成長率:TGR)の比をTGKRと定義し、TGKR≧2を「超進行」としました。

評価可能な患者のうち、超進行の割合は、研究者と癌腫にもよりますが、9%~29%にもなると報告されています。

北京大学附属がん病院で、免疫チェックポイント阻害剤を使った消化器系の悪性腫瘍の患者45人から評価可能な患者25人が特定されました。5人の患者は、超進行性であるとみなされました。5人のうち3人は神経内分泌癌(NEC)であり、他の2人は腺癌でした。5例中、4例は抗PD-L1抗体(アテゾリズマブ、商品名:テセントリク)で治療され、1例は抗PD-L1抗体に抗CTLA-4
抗体(イピリムマブ、商品名ヤーボイ)が併用されています。

なぜこうしたことになるのか、理由は不明ですが、論文の結論では「さらなる調査が緊急に必要です」とされています。

2年前のNature誌にもこんな記事がありました。

腫瘍を小さくするはずの免疫療法が、返って腫瘍を大きくしているとすれば、たいへんなことです。

オプジーボは論文の対象になっておりませんから、超進行があるのかどうかはわかりません。

ただし、別の研究者らからは、これらの研究に対して、次のような問題提起もあるようです。

  1. 評価対象となる患者が少ない(検出力不足)
  2. 「進行」の評価基準が RECIST(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors)だけでは不十分(がん全体の進行を定量的に評価するモデルが必要)
  3. “Hyperprogression” が起こる背景が不明

夢の治療法、あるいは免疫療法は第4の治療法とも言われていますが、がんはしたたかです。

生命の発生以来、何億年もかけて進化してきた免疫システムは、非常に高度で複雑なシステムです。宇宙の神秘以上にその全容はまだ明らかになっておらず、我々人類の知識は免疫のしくみのほんの一部を理解しているに過ぎないのだと思われます。

しかし科学者は、たゆまず免疫システムの解明とがん撲滅への研究を進めてくれるに違いありません。


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