なぜ我々は存在するのか?

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下仁田温泉で見つけた道祖神


がんの転移が疑われるが、どこに転移巣があるのか分からない場合に、PETまたはPET-CT検査をします。私も術後1年のころ、膵臓がんの転移が疑われたのでPET-CTの検査を受けました。幸い転移ではなくほっとしたことがあります。(こうして生きているから当たり前か!)

このPETは「ポジトロン断層法(positron emission tomography)」の略です。ポジトロンとはプラスの電荷を持った電子、陽電子(β+)のことです。通常の電子はマイナスの電荷を持っているのですが、フッ素18などの放射性同位元素が崩壊(β+壊変)するときにβ+を放出します。この陽電子は、近傍にある人体を構成する水分子の電子と反応して、消滅します。(電子対消滅)このとき電子の静止エネルギーに等しい511keVのガンマ線を反対方向に2個放出するのです。このガンマ線を検出することで、人体をほぼ全部を一度に検査できるのです。

反物質はSFの世界の話ではなく、私たちがん患者には身近な存在なのです。陽電子は電子の「反物質」と言われ、陽子に対して反陽子、中性子に対して反中性子など、全ての物質に反物質が存在します。しかし現実には、我々の住む宇宙には反物質はごくわずかしか存在していません。宇宙が誕生したビッグバンの直後には、物質と反物質は同じ量があったのですが、10億個に2個という小さな確率で反物質の寿命が短くなることがあり、その結果ほとんどの物質と反物質は互いに反応して対消滅したのです。そして、差し引きでわずかに残った物質が現在の宇宙を構成していると、最新の素粒子理論は説明しています。そして反物質の寿命に関係してくるのがニュートリノという素粒子です。『がんと闘った科学者の記録』の戸塚洋二さんが研究していたのがニュートリノでした。

こうして現在の宇宙が存在することができました。私たちの身体を構成している酸素や鉄などの思い元素は、宇宙が進化する過程で星が超新星爆発し、それらの元素がばらまかれて、やがて暗黒物質の重力によって引き寄せられ、新たな星ができる。その一つが太陽系であり地球です。私たちの身体は、実際に”星屑”でできているのです。そしていずれは元の星屑として返さなければなりません。

宇宙の全エネルギーを100%とすると、星と銀河は0.5%、それ以外に宇宙に漂っている物質が4.4%、ニュートリノが0.1~1.5%で合計しても5%ほどです。そして残りが暗黒物質といわれているもので23%、大多数が暗黒エネルギーで73%です、暗黒物質も暗黒エネルギーもその実態は分かっていませんが、存在すると考えないといろいろは現象が説明できないのです。

村山さん、宇宙はどこまでわかったんですか? ビッグバンからヒッグス粒子へ (朝日新書)
つまり、私たちはわずかに5%の普通の物質の、そのまたごくわずかのことしか知らないのです。ゴーギャンがその絵に秘めた問い「我々はどこから来たのか 我々は何ものか 我々はどこへ行くのか」の問いは、もっと哲学的な問いでしょうが、素粒子論の立場からはある程度分かるようになってきました。「我々は何者か」は、きっと永遠の問いであり、誰もが死ぬまで答えを探す問いなのでしょう。

朝日新書の新刊、村山斉『村山さん、宇宙はどこまでわかったんですか? ビッグバンからヒッグス粒子へ (朝日新書)
』と『宇宙になぜ我々が存在するのか (ブルーバックス)
』は、宇宙の成り立ちと私たちが存在するわけに分かりやすく答えてくれます。


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