膵がん早期診断の血液バイオマーカー

国立がん研究センターがプレスリリースで「膵がん早期診断の血液バイオマーカーを発見」と発表し、ニュースになっています。

国立がん研究センター研究所の本田一文ユニット長らは血液中の特定のたんぱく質を調べ、膵臓がんを早い段階で発見する手法を開発した。従来の血液検査では難しい早期の膵臓がん患者を見つけることができる。検査キットも開発済みで、年内にも1万人規模の検証を始め、実用化を目指す。

研究チームは膵臓がん患者の血液に含まれる物質を調べた。たんぱく質「アポリポプロテインA2アイソフォーム」の濃度ががん進行とともに下がることを突き止めた。

国立がん研究センターの日本語記事を見る限りでは、感度は確かに良いが特異度(膵癌でない人を膵癌でないときちんと判定する能力)がイマイチのような気もする。

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ま、スクリーニングとの位置づけだからそれでも良いか。見逃しがないように「疑わしき」を検出して、CTで精密検査し確定する。それで膵癌の早期発見につながれば嬉しい。

原文のサイエンティフィック・リポーツ(電子版)の記事はこちらです。
Plasma biomarker for detection of early stage pancreatic cancer and risk factors for pancreatic malignancy using antibodies for apolipoprotein-AII isoforms

でも、上の左の図と下の図Eが同じものなのだが、原文の図と比較するとずいぶん印象が違う。

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※IDACP: invasive ductal adenocarcinoma of the pancreas(浸潤性膵管癌)
※ ELISAs:enzyme-linked immunosorbent assays (酵素結合免疫吸着測定法)

図Bの右端の、ELISA apoAII (ELISA apoAII-ATQ/AT) の評価法では、健康人とIDACPが、他の手法よりもより分離されていることが分かる。ステージによらずほぼ同じ程度の感度なのはすばらしい。

しかし、判定レベルをどこに取るかによるけれども、感度を90%としたとき、偽陽性率がだいたい50%ほどになりそう。膵臓がんの罹患率が約3.4%だから、仮に1000人のうち膵臓がんの方が34人いたとして、その90%=31人は膵臓がんが早期に見つかる(3人は見逃し)が、残り966人の50%=483人が膵臓がんではないのに膵臓がんの恐れと判定され、CT検査で余計は被ばくとお金がかかり、はっきりするまでは精神的な苦痛を受けることになります。検査の結果「膵臓がんの疑いあり」と判定されて、実際に膵臓がんの人の割合は、31÷500=6.2% です。

これでは使いづらいよね。まだ研究が始まったばかりだから、これから改善されるのでしょうが。

膵臓がんは早期に発見して手術しないと完治することは難しい。数年以内の実用化だというから、期待しています。


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