3つのオルガンで聴くバッハ
東京芸術劇場には、ルネサンス、バロック、モダンの3つのパイプオルガンがあります。椎名雄一郎氏が一晩で3つのオルガンを弾きわける演奏会があり、そのライブ録音がCDで販売されています。
上がルネサンス・バロック・オルガンです。普段はこちらのオルガンが正面を向いています。その裏側にモダン・オルガンがあり、回転させて正面を向ける構造になっています。
この3つのオルガンは、それぞれ調律法が異なっています。ルネサンス・オルガンは、ミーントーン調律法が採用されていて、ところどころで不協和音が聞こえてきますが、それがまた味わい深いのです。
バッハの時代は、ミーントーン調律法から不等分調律法への過渡期でした。バロック・オルガンは不等分調律法が採用されていますが、バッハの後期の作品は不等分調律法では演奏が困難な作品もあります。
モダン・オルガンは平均律に近い調律法が採用され、巨大なオルガン全体が鳴っている響きが広がります。
バロック・オルガンで演奏された「パッサカリア」は不協和音が聞こえてきますが、これが当時のオルガンの音なのかとして聴くと、不揃いもまた良いものです。
バッハのオルガン曲と言えば「トッカータとフーガ」。モダン・オルガンでの演奏は、我が家のタイムドメインシステムでも重層で濃密な響きです。
ピアノも調律法でずいぶんと音が変わります。
内田光子のピアノ、ジェフリー・テイトがイギリス室内管弦楽団を指揮したモーツァルト ピアノ協奏曲第20番ニ短調は、平均律ではなく、ヴェルクマイスター第3といわれる18世紀の古典調律法で調律されています。
これもまた豊かな響きがすばらしい演奏です。バッハやモーツアルトの作品を、彼らが生きた時代の調律法で聴いてみるのも楽しいひとときです。