オートファジーを阻害することで膵臓がんを論理的に治療する可能性
マラリアの治療薬とオートファジーを阻害する薬剤を一緒に投与したら、ある条件で膵臓がんの腫瘍が縮小し、長期間安定している。
中村祐輔先生もブログに書いていますが、膵臓がん患者には期待の持てる論文です。
Nature Medicine誌に紹介された論文は、もちろん英文ですが、こちらのその内容を解説した日本語の記事があります。
オートファジーを誘導する完全なプロセスが解析されたわけではないが、これらの結果はRas経路を止めて、オートファジーを抑制するとガン細胞を殺せる可能性を強く示唆している。そこで、Ras下流のMEK阻害剤トラメチニブを用いてRas経路を止めた細胞のオートファジーをクロロキンで抑制すると、期待通りがん細胞の増殖をつ色抑えることができることを明らかにした。
オートファジーとは、細胞が持っている、細胞内のタンパク質を分解するための仕組みの一つで、自食(じしょく)とも呼ばれています。
クロロキンは、マラリアの治療薬として利用されていた薬剤です。
ここまでだけなら普通の研究で、これまでも指摘されていたことだが、あまりにも効果が明確なので、著者らは実際の患者さんでこの結果を確かめようと、一般的な化学療法に全く反応しなくなった膵臓癌の患者さんを選び、トラメチニブの量は固定して、患者さんのガンマーカーを見ながらクロロキンの量を増やしていく治療を行い、なんとクロロキンの濃度が1200mgを超えた時、急速にガンマーカーが低下し、CTで転移癌の大きさが減少した後、4ヶ月経過してガンが抑えられたままの患者さん1例を症例として示している。
化学療法が効かなくなった膵臓がん患者の腫瘍が縮小し、腫瘍が消えてしまったわけではないけれども、4ヶ月経っても増殖を抑え続けているのは、驚きです。
理論的にもしっかりしている、動物実験でも効果が確かめられた、人の症例でも著効例が出た。あとはエビデンスになるように研究を積み上げて欲しいものです。