ギャンブルとがん治療の必勝法


【日 時】2020年9月21日(敬老の日) 13:00~16:00(開場:12:45)
【参加資格】膵臓がん患者とその家族
【参 加 費】無料
【定 員】 100名
【内 容】
第一部 講演:佐藤典宏先生
   「膵臓がんの標準治療と代替医療~外科医の立場から~」
第二部 患者さん同士の交流会。コロナにも膵臓がんにも負けないぞ!

ウェブ会議ツール「Zoom」を使ったWeb交流会となります。
スマホだけで簡単に参加することができます。


詳しくはオフィシャルサイトで

9月20日9:00AMまで参加申込受付中です。
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がんの治療はギャンブルだと、よく言われます。

免疫チェックポイント阻害剤のオプジーボだって、効果のある患者は3割程度だと言われます。あなたに効くかどうかはやってみなければ分かりません。今やっている抗がん剤に効果があるかどうか、これも確率でしか分かりません。

このギャンブルに必勝法はあるのでしょうか? それを、数学を使って考えてみます。数式を見たら頭が痛くなるという方は、無視して飛ばしていただいても結構です。中学・高校程度の数式ですが、まぁ、こんなものかと、何となく納得していただければ、この記事の目的は果たせます。

コイン投げゲーム

コインを投げて表が出たら1円もらえて、裏が出たら1円取られる賭けをする。

表の出る確率をp、裏の出る確率をqとしておこう。コインに癖がなければ、$$p=q=\frac{1}{2}=0.5$$ である。

最初に所持金 m円を持って賭けに参加し、1円ずつ賭けていく。目標の N円になるか、ゼロ円になって破産するまで賭けを続けることとする。

勝ってN円を手にして帰れる確率を P(m,N) と書くことにする。この確率は、

$$P(m,N)=\frac{1-(\frac{q}{p})^m}{1-(\frac{q}{p})^N}$$

で表わすことができる。この公式の導き方は、理論物理学者 大栗博司氏の特設サイトにあるので、関心があれば見て欲しい(あたまが痛くなること請け合いだ)。

コインに癖がない場合は、p=q=1/2となり、上の式の右辺はゼロ÷ゼロで計算できないので、別に導き出すと

$$P(m,N)=\frac{m}{N}  ,(コインに癖がない場合)$$

となる。

10円を20円にする確率は、P(10,20)=0.5 となるので、持ち金を2倍にして帰れる確率と破産する確率は五分五分となる。

胴元がコインに細工してあり、あなたに不利になるように、表の出る確率がp=0.47、裏の出る確率がq=0.53と、3%の違いがあったとしよう。これを計算すると、

$$P(10,20)=\frac{1-(\frac{0.53}{0.47})^{10}}{1-(\frac{0.53}{0.47})^{20}}≒0.23$$

となる。持ち金10円を、2倍の20円にして勝って帰れる確率が、50%から23%に下がってしまうのだ。わずかの細工をしただけで、あなたの勝つ確率は半分以下になる。

持ち金と目標を多くしたらどうなるか? 50円を100円にしようとすると、

$$P(50,100)=\frac{1-(\frac{0.53}{0.47})^{50}}{1-(\frac{0.53}{0.47})^{100}}≒0.0025$$

となる。勝てる可能性は、400回に1回ほどしかないことが分かる。

逆に、q=0.53の裏が出る方に賭け続けたら、

$$1-0.0025≒0.9975$$

となるので、確実に儲けることができる。

1円を賭けるということと、持ち金を2倍にする目標は同じであるが、わずかに3%の確率の増減によって、持ち金と目標額が違えばこんなにも確率が違ってくるのである。

ギャンブル必勝法

この計算から言えることは、ギャンブルに勝つためには、ほんのわずかでも良いから確率の高い方に、十分な持ち金を用意して、根気よく賭け続けることである。

国際的な投資ファンドなどは、莫大な資金を用意し、AIなどを使って極わずかに確率の高い方を瞬時に見つけ出して、大きな投資を続けることで儲け続けることができているのである。

残念ながら我々貧乏人には、スパコンやAIを使うことも、莫大な資金を用意することもできないから、株や投資によって勝ち続けることが難しいのである。

また、少しでも不利なギャンブル、胴元が確率を操作できるような賭けには絶対に参加してはならないことも分かる。簡単に破産してしまうだろう。

健康で長寿を生きる極意

だれでも健康で長生きをしたいと願っている。丈夫で病気知らずの体質に生まれたことは、持ち金 m円が多いことに似ている。長生きをすることは、m円を 2倍のN円にすることにたとえられるだろう。

この賭に勝つためには、バランスのよい食事をし、運動を習慣とし、ストレスを溜めないで、充分な睡眠をとり、禁煙をして酒は飲み過ぎないで、交通ルールを守って安全運転をしてなど、毎日の生活の中でほんの少しだけ、リスクを避けるような生活の積み重ねを心がけることだ。

体力や免疫力を高めることは、持ち金m円を多くすることに対応するだろう。

健康オタクになる必要はないが、ほんの少し確率の高い選択をして、それを積み重ねれば大きな確率で望みが叶うことが、数学の力を借りれば納得できるはずだ。

大津秀一先生の『1分でも長生きする健康術』には、簡単で当たり前のことが書かれているが、それらが科学的根拠(エビデンス)とともに紹介されている。つまり、確率pが明確な健康法が示されているということだ。

一つの健康法で1分長生きできたとして、それをいくつも、長く続けることで P(m,N)はとんでもなく大きな、1に近づく値になるのである。

なぜ標準治療を無視してはいけないのか


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がん治療に話を進めよう。

膵臓がんを告知された。手術はできません。抗がん剤治療になるが、余命は6ヶ月です。

こう言われて、標準治療では助からないと、免疫細胞療法などの代替医療に走る患者が絶えません。

確かに標準治療で治らないがんも多いです。しかし標準治療は、臨床試験によって効果のある確率pが少しでも大きいと確かめられた治療法である。

一方で、標準治療以外の治療法は、効果のある確率が標準治療に及ばないから認められていないのです。

いわば、標準治療はp=0.53、代替医療はq=0.47に例えられるだろう。(実際の確率はもっと差があるのかもしれません)

標準治療を拒否して代替医療だけを選択することは、それを続ければ、先に計算したように、「ほぼ確実に負ける。標準治療よりも、わずかに効果が小さいものでも、それを選び続けたら、累計の確率は0.0025となるような、悲惨的な結果が予想できるのです。

運良く400に1つは効果が出る例もあります。巷の代替医療クリニックはそれを宣伝に使うのですが、数学を使って考えてみれば、その他大勢には効果がなく、その欺瞞性は明らかでしょう。

それ以前の問題として、代替医療クリニックは治療結果の「分母」を言わない例が多い。効果のあった患者数だけを売りにするが、何人の患者中の何人に効果があったのかを示さなければ、pもqも計算のしようがない。従って、このギャンブルに参加するかどうかの判断の元となる確率を求めることもできない。

奏功率を出しているところもあるが、あるクリニックなどは「膵臓がんでの奏功率80%です」と、ノーベル財団が聞いたら、来年のノーベル賞候補かとすっ飛んできそうな嘘を平気で患者に告げていた。

アメリカにおける研究で、標準治療を受けた560名と代替医療のみを受けた280名の生存率を比較した報告がある。

このように代替医療群の予後は最終的には25%も生存率が低くなっている。明らかに、

$$P(10,20)=\frac{1-(\frac{0.53}{0.47})^{10}}{1-(\frac{0.53}{0.47})^{20}}≒0.23$$

の計算の示すとおりになっているのではなかろうか。

よほどの理由がない限りは、標準治療を避けることは、ギャンブルでほぼ確実に「破産」するのと同等である。

少しでも不利なギャンブル、胴元が確率を操作できるような賭けには絶対に参加してはならないことも分かる。簡単に破産してしまうだろう。

と先に書いたことを思いだして欲しい。

同じグループの研究で、こちらは標準治療+代替医療で併用したグループと、標準治療のみを受けたグループを比較したものである。

標準治療にプラスアルファがあるのだから、成績がよくなりそうだが、実際には代替医療を併用した場合は、返って悪くなっている。

その理由は、代替療法併用群では、7%が手術を拒否し、34%が抗がん剤の治療を拒否し、53%が放射線治療を拒否していることが示されている。

併用群では標準治療をしっかりと受けていなかったのである。治療成績の悪いのはそれが原因であると、この報告は結論づけている。

では、しっかりと標準治療を受け、なおかつ代替医療を併用したらどのような結果になるだろうか。

二つのグラフを比べてみると、2番目のグラフで代替療法を取り入れたグループの生存率は標準治療だけのグループに、1番目のグラフよりも近づいている。

代替療法併用群が標準治療の一部を拒否しなければ、あるいはプルスアルファの効果が証明できたかもしれない。

代替療法を併用したら、より生存率が悪くなった。だから代替療法を取り入れるのは危険だ、という解釈は早計だろう。

標準治療を受けるという条件の下での、代替医療で効果がある確率だから、条件付き確率(ベイズ確率)で概要なり見込みを計算できるかもしれない。

もっと面倒な数学になるが、機会があれば挑戦してみよう。

この記事を書くきっかけとなった本

この記事を書くきっかけとなったのは、理論物理学者で「超弦理論」の研究者である大栗博司氏の『数学の言葉で世界を見たら』から大部分を借用しました。

また、大栗博司氏と仏教学者の佐々木閑氏との対談『真理の探究』は、科学と仏教(といっても釈迦の時代の初期仏教ですが)の関係を論じていて、「老病死」の悩みを抱える現代人にとって、もっと自由に生きる生き方を示しているように見えます。

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