PCR検査の感度は100%

新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が一ヶ月延長されました。

政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議は4月22日、医療提供体制とPCR検査体制について、「対策のフェーズが変わった」と述べ、「医療崩壊防止と重症化防止により死亡者数の最小化を図っていくかに力点を置く」と強調していました。

また、5月4日の緊急事態宣言延長の記者会見で、「当初は、重症化を防ぐために限られたキャパシティを集中させざるを得なかった」と説明しました。そのうえで「さまざまな対策で徐々に件数を増やしているものの、思ったほどのスピードで検査の件数が増加していない。必要な人が検査を受けられるよう増やしていく必要がある」、「陽性者は発表数値の10倍はいる」などと、他人事のように語っています。

しかし彼らが、「PCR検査を増やせば医療崩壊が起きる」と言っていたのは事実ですから忘れちゃいけません。

しかし、その後もPCR検査件数はこれまでと変わらず、検査してもらえないという声が溢れています。

ドイツや韓国のように、大量のPCR検査で陽性者を見つけて隔離する政策に移行する気はなさそうです。

PCR検査抑制の一つの理由とされてきたのが、「PCR検査の感度は低い」「見逃した感染者が逆に感染を広げてしまう」というのがあります。

実際にはどうなのでしょうか?

PCR検査の感度

インフルエンザの簡易検査キットでは、クリニックで先生が鼻に綿棒を突っ込んで検体を採取します。

RT-PCR検査(Reverse Transcription polymerase chain reaction)もそこまでは同じですが、その後の処理が違うのです。検体にあるウイルスのRNAを逆転写でDNAを複製し、それを指数関数的に増幅させることに寄って陽性かどうかを判断します。

元の検体サンプルに2個のウイルスがいれば検出できるとされています(感染研のサイト)。

鼻と喉から採取した検体のそれぞれから3本のサンプルを作成して測定します。そして、6本のサンプルのうち2本以上がポジティブであれば「陽性」で、6本全てがネガティブのとき「陰性」と判定されます。1本だけがポジティブなら再検査となります。

仮にサンプルのウイルス検出精度が70%であるとしたとき、偽陰性率(陽性患者を誤って陰性と判断する割合)は30%となります。

6本のすべてがネガティブのとき「陰性」と判断するのですから、このときの偽陰性率は

$$ (\frac{30}{100})^6\times100=0.0729$$

です。したがって

$$100-0.0729=99.9271$$

99.93%の確率で測定できます。

各サンプルのウイルス検出精度が50%であるとしたときでさえも、同様に98.4%となるのです。

$$100-(\frac{50}{100})^6\times100=98.4375$$

PCR検査は、プロトコルに従って検査をすれば、感度も特異度もほぼ100%と考えてよいのです。

PCR検査の拡充を訴えてきたのは、山中伸弥:京都大学iPS細胞研究所所長、中村祐輔:がんプレシジョン医療研究センター所長、本庶佑:京都大学特別教授、児玉龍彦:東大名誉教授らの、遺伝子研究に関わり、PCR検査を日常的に使ってきた科学者たちでした。

一方でPCR検査拡大不要論を唱えてきた方の多くはPCR検査など自分でやったこともない方たちでした。

感度が低いはどこから

尾身茂氏自身が「軽症者でも迅速にPCR検査をするべき」と述べるように変わってきたので、PCR検査不要論は影を潜めているが、検査を受けていれば助かった命があるはずです。これに対してどのような責任を感じているのでしょうか。

PCR検査は感度が低いから、逆効果だという主張の根拠となったのは、多分BuzzFeed JAPANのこの記事ではないかと思います。

この記事で、聖路加国際病院、QIセンター感染管理室マネジャーの坂本史衣氏が根拠として出しているのが次の論文です。

核酸のスペル(nucleic acid)を間違えるような方が書いた論文ですね。

bioRxivという査読前の論文を読めるようにしたサービスに投稿されたものです。新型コロナウイルスPCR検査の感度が30-50%と低めな原因として、PCR前の加熱処理がウイルスの安定性に大きな影響を与えている。ウイルス不活性化のために検体を比較的高温で処理したために検体中の結構な量のRNAが分解されてしまい、感度が低くなった。

壊れやすいRNAを56℃や92℃で温めるなんて、こんな馬鹿なことをやってはだめですよ、との内容の論文です。PCR検査の感度が悪いと言っているのではありません。

もう一つはこちら

タイトルから明らかなようにCOVID-19に対する胸部CTの感度を、PCR検査と比較したものです。51人の患者で、日数経過ごとにPCR陽性と胸部CTの所見とを比較しています。

初日の胸部CTの感度は98%で、PCRの感度(71%)よりも大きかった。 (それぞれ98%対71%、p <.001)

しかし、最終的には、7日後にPCRも陽性率100%になっている。したがって、この論文の結論は、

PCR検査で陰性である場合でも、後々陽性になる可能性があるから、胸部CTの併用を勧めます。

となっているのです。PCR検査の感度が70%だと言っているのではありません。

RNAは壊れやすいが、知識のある人間が取り扱えば、PCR検査の感度は十分です。でなければ専門家会議の委員が「もっと増やすべき」と言うはずがないでしょ。


膵臓がんと闘う多くの仲間がいます。応援のクリックをお願いします。

にほんブログ村 病気ブログ 膵臓がんへ
にほんブログ村

にほんブログ村 病気ブログ がんへ
にほんブログ村


スポンサーリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です