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癌治療学会:膵がん治療の概観

切除不能膵癌の二次治療として、オニバイドが6年ぶりに承認され、膵臓がんの予後改善に期待されます。

コロナ禍のなか、第58回日本癌治療学会がハイブリッドで10月に開催されました。その中から膵臓がんに関する今後の治療法についてまとめてみました。

ハイブリッド方式の開催となった第58回日本癌治療学会学術集会の臓器別シンポジウム「膵癌治療の現状と今後」の中から、膵癌に対する化学療法、ゲノム医療の動向、さらに切除可能境界膵癌の術前治療について紹介する。

化学療法

1次療法の使い分け

副作用の強いFOLFIRINOXを克服しようと、イリノテカンを180mg/m2から150mg/m2に減量して、5-FUのボーラス投与を行わないmodified FOLFIRINOXのフェーズ2試験で、OS中央値は11.2カ月でFOLFIRINOXと遜色のない結果となった。

一方、ゲムシタビン+nab-パクリタキセル(GnP)はフェーズ3試験のMPACT試験で検証され、OS中央値は8.5カ月であり、ゲムシタビン単剤は6.7カ月と比較して有意な生存期間の延長が証明されている。

この2つのうち、mFOLFIRINOXが優れているように見えるが、臨床試験の患者背景が違うので確かなことは言えない状況である。

現在、転移性膵癌を対象に、標準治療としてゲムシタビン+nab-パクリタキセル(GnP)、それに対するmodified FOLFIRINOXと、5-FUの持続静注の代わりに経口抗癌薬のS-1を用いたS-IROXの優越性を検証するJCOG1611試験が行われている。この結果が待たれる。

2次治療におけるオニバイド

予後不良の切除不能膵癌でも、2次治療の有効性は示唆されているが、国内での臨床試験ではネガティブな結果が続いてきた。そのため暫定的にS-1が用いられてきた。

そうした中、3月にナノリポソーム型イリノテカン製剤(nal-IRI:オニバイド)が承認された。nal-IRI+5-FU/LVのOS中央値は6.1カ月、5-FU/LVでは4.2カ月で、OSハザード比は0.67だった。

「膵癌診療ガイドライン2019」では、開発名のMM-398から一般名の「イリノテカン塩酸塩水和物 リポソーム製剤」に変更された。

切除不能膵癌の2次化学療法は、ゲムシタビン関連レジメンのあとは、ナノリポソーム型イリノテカン製剤(nal-IRI:オニバイド)を含んだフルオロウラシル関連レジメンを行うことが提案されている。

1次化学療法でフルオロウラシル関連レジメンの後はゲムシタビン関連レジメンが、MSI-Highの場合はペムブロリズマブ(キイトルーダ)、NTRK融合遺伝子陽性の場合はエヌトレクチニブ(チロシンキナーゼ阻害剤「ロズリートレク」)による治療を行うことが提案されている。

ゲムシタビン+nab-パクリタキセル(GnP)の1次治療の後、mFOLFIRINOXとオニバイドのどちらを選ぶべきかとの質疑応答で、がん研有明病院の尾坂氏は、「われわれも悩ましいところである」とした上で、「2次治療での毒性も考えて、トータルとしての治療戦略を考えると、エビデンスレベルが高いのは今の段階ではnal-IRIではないか。余力がありそうな、特に年齢が若い患者さんであればFOLFIRINOXも考慮してもいいのではないか」とコメントした。

今後の膵癌化学療法の方向性
  • ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬のイブルチニブや、ヒアルロニダーゼ製剤PEGPH20、ペグ化インターロイキン10製剤pegilodecakinの大規模なフェーズ3試験が最近行われてきたが、いずれもネガティブな結果
  • 生殖細胞系列のBRCA1/2遺伝子変異を有する膵癌に対するフェーズ3試験のPOLO試験。主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)は、プラセボ群3.8カ月に対してオラパリブ群は7.4カ月、ハザード比0.53と、高い有効性を示したが、OSでは有効性が示せなかったが、分子標的に対して薬を開発した膵癌で初めての試験であり、非常に注目すべき試験
  • 膵癌においてBRCA遺伝子変異の頻度はおよそ5%にすぎないが、DNA損傷応答(DDR)の欠損がある膵癌患者に対して白金系薬剤を用いた場合、生存が改善されることが示されている
  • DDR変異に関連する中心的な遺伝子変異はBRCA1/2だが、ATMやRAD50/51など、DDRに関連するマイナーな変異まで含めると、対象となる膵癌患者は20%にまで増える可能性がある
  • そういった患者を見つけるにはゲノム診療が必須となるが、その対象は標準治療がない固形癌患者、または局所進行もしくは転移が認められ標準治療が終了となった固形癌患者(終了が見込まれる者を含む)に限られている。
  • BRCA遺伝子検査をしている間は治療を待たなければいけないのかといったことも含めて、いろいろな議論が残っている

ゲノム診療への期待

  • 高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)のある患者に対しては、免疫チェックポイント阻害薬ペムブロリズマブ(キイトルーダ)の有効性が示されている。しかしMSI-High膵癌は膵癌全体の2%から3%にすぎない。
  • NTRK融合遺伝子をターゲットに、昨年、エヌトレクチニブが保険承認されたが、膵癌におけるNTRK融合遺伝子の発現頻度は0.4%
  • 米国でも、標的に合った治療ができた患者は1割に満たない。
  • KRAS野生型とNRG1融合遺伝子は今後キーワードになる
  • 膵癌では多くの患者がKRAS変異を有しており、KRAS野生型は膵管腺癌の8-10%である。
  • 全ゲノム解析を行なった研究では膵癌患者47人中、KRAS変異のある患者は44人(94%)、KRAS変異がない患者は3人(6%)だった。このKRAS野生型でNRG1融合遺伝子を持っていた患者に対してPan-ERBB受容体阻害薬のアファチニブを投与したところ効果が見られたと報告している。
  • KRAS変異については、KRAS G12C変異に対するAMG510が注目されている(ASCO2019 #3003)。
  • 膵癌では、遺伝子パネル検査に必要な量の検体を採取しづらいが、最近超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)の穿刺針の世代が変わって、かなり組織が取れるようになってきている
  • また、膵癌ではリキッドバイオプシーによる血中の循環腫瘍DNA(ctDNA)の測定も注目されている

 


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