オニバイドの臨床試験では薬害が過小評価されている
2020年5月に、イリノテカン塩酸塩水和物リポソーム製剤(商品名オニバイド)が発売され、がん化学療法後に憎悪した治癒切除不能な膵癌への適用が承認されています。
久しぶりの膵臓がんの治療薬の登場として話題になりました。膵臓がん患者さんにおける期待も大きい薬剤です。
毒性の強いイリノテカンもナノカプセルに包んでがん細胞に直接届けようというのですから、副作用は小さく効果は大きいと期待された薬剤です。
しかし実際はどうなのでしょうか。
膵癌のオニバイド臨床試験では5例の死亡があった
BMJ onlineに2018年10月に掲載された名古屋大学医学部付属病院B.Gyawali らの論文「抗がん剤の臨床試験における有害事象(害)の報告をもっとわかりやすく」において具体例として取り上げられている、リポソームイリノテカンの膵癌臨床試験論文では、「管理できほとんどが可逆的な属性」と副作用について述べられている。しかし実際は対照群では死亡例がないのに介入群は5例が死亡している。
イリノテカンはもともと強い骨髄抑制や重度の下痢などの独占が問題になった薬剤であり、「管理できほとんどが可逆的な毒性」という表現は「過度に一般的または主観的な表現」である。
著名医学ジャーナル臨床論文は抗がん剤の有害事象を正しく伝えていない
オニバイドの件は一例であり、著名な医学ジャーナル誌において、抗がん剤の有害事象は正しく伝えられていないと警告を発している。
プレスクリール・インターナショナル誌 2021年1月号が「腫瘍学臨床試験の有害事象と結果: 誤りを導く言語表現と結果の省略」の記事では、
インパクトファクターの高いNew England Journal Medicine, Lancet. Lancet Oncology, JAMA, Journal of Clinical Oncologyの5誌に2016年に掲載された抗がん剤の第2,3相ランダム化臨床試験(122論文)を調べた結果を載せている。
そのまとめとして、「抗がん剤の有害事象は臨床試験の結果を報告する論文ではしばしば軽視されている。 臨床試験中に発生した有害事象は、論文では省略されているか、主観的な用語を使用して説明されていることがよくある。 」
https://www.yakugai.gr.jp/attention/attention.php?id=555
と述べている。
有害事象が正しく伝えられてこそ、腫瘍内科医も患者も、その抗がん剤を正しく選択して、有効に使うことができるのではないでしょうか。