がんと歯周病
先日海老天の尻尾をかじっていたら、ガリッと嫌な音がしました。触ると、上のブリッジが架かっているすぐ隣の差し歯がぐらぐらとしている感じです。
昨日歯科医院で診てもらいました。「差し歯が取れかかっている。根元からもう一度やり直しましょう」と言われました。
歯周病が進んで健全な歯の根元がグラグラしているのかなとヒヤリとしましたが、差し歯の接着部分が外れかけていただけのようで一安心。
歯周病は気にしています。以前は軽度の歯周病だと言われたこともあったのですが、ブラッシングや口腔ケアを続けた結果、現在は進行も止まっており、歯茎もしっかりとしています。
歯周病菌と大腸がんの発がん
先日横浜市立大学の発表で、口の中の歯周病菌が大腸がんの発がんと関係があるとの研究発表がありました。
横浜市立大学は6月28日、大腸がん患者さんのがん組織と唾液に共通した菌株が存在していることを発見したと発表しました。この研究結果は、口腔内のF.nucleatum(フソバクテリウム・ヌクレアタム)という細菌が大腸がんに関与していることを強く示唆しているそうです。
F.nucleatumは、大腸がん患者さん以外でも多くの人が口腔内に持っている常在菌の一種で、歯周病の増悪化にも関与することが報告されています。
随分前から言われていたことなんですよね、大腸がんと歯周病菌の関係は。それがより一層はっきりとわかったということでしょう。
歯周病があると膵臓がんのリスクが2倍
膵臓がんと歯周病との関係も以前から取り立たされています。歯周病があると膵臓がんを発がんするリスクが2倍になるのだとも言われています。
久留米大学がんワクチンセンターの「週刊 がんを生きよう」が興味深い記事を連載しています。
膵臓がんと口内細菌の物語
今回発表された研究では、口内細菌のうちどのタイプに感染している健常人が、その後膵臓がんを発症しやすいかを調査して報告しております。
その結果、P.gingivalis (ポルフィロモナス・ジンジバリス)という嫌気性細菌が検出された人は1.59倍に、A.actinomycetemcomitans (アグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンス)という嫌気性細菌が検出された人は2.19倍に発がんリスクが増加したと報じております。どちらも歯周病の原因菌としてよく知られております。近年この菌は免疫系からのユニークな回避機構をもつということが報告されました。
これらの菌増殖の微小環境は、嫌気性、免疫回避等の観点から膵臓がんの増殖環境と類似しております。今後もっと多くの微生物で発がん性が証明される可能性があります。今回取り上げた口内細菌による膵臓がんの発がん性についても今後の課題です。調べたサンプル数が、調査後に膵臓がんになった361例と、ならなかったコントロール群371例と比較的少ないにもかかわらず、この学会発表を「がんを生きよう」で取りあげた理由は、膵がん細胞と2つの口内細菌の増殖環境が類似していることです。
歯周病の治療や口腔ケアはがんの治療においても非常に重要です。みなさん、あまり話題にもしませんが、佐藤典宏先生の著作『がん手術を成功にみちびくプリハビリテーション』では次のように紹介されています。
プレハビリテーションとして最初にしてもらったこと
まずは、すぐに以下のことをしてもらいました。
- かかりつけの内科クリニックで血糖値をコントロールするため薬を調節
- 歯科を受診してもらい口腔ケア(歯周病のチェック、歯垢・歯石の除去、ブラッシング指導)
- 禁煙
- 呼吸訓練のための器具(トライボール)を購入
- マインドフルネスの本を購入
- 奥さんにタンパク質の量を考えた食事メニューを指導
- 薬局でホエイプロテインと乳酸菌サプリを購入
- 近所のスポーツジムに入会
膵臓がんとの戦いは情報戦ですよ。
病院での標準治療だけではなく、ある程度のエビデンスがある治療法、代替療法ならば、どんどん取り入れた方が良いと思います。