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がんの自然治癒はどうすれば起きるのか

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再発・転移したがんでは治ることはありません。抗がん剤は延命効果を狙うだけです。抗がん剤は効くのか、効かないのかという近藤氏や梅澤医師らの議論は、あくまでも延命効果があるのかないのかとの議論であり、治ることは前提にしていません。これは現代医療の限界ですからしかたありません。しかし、がん患者の誰もが、もしかすると自分だけは治る、治りたいと思っています。そこで怪しげな代替療法に走ることにもなるのです。

がん患者が代替療法を取り入れることには反対ではありません。代替療法と言ってもピンからキリまであります。何を代替療法と言うかの定義にもよりますが、エビデンスがないことが代替療法なら、がんペプチドワクチンもリンパ球療法も、ホメオパシーも同じです。同じですが、そこには自ずから違いがあります。「原理的に効くはずがない」ホメオパシーと、「エビデンスが確立していない」がんペプチドワクチンをまったく同列に扱うことはできないでしょう。

医療従事者が代替療法を積極的に勧めることには反対ですが、がん患者がホメオパシーや丸山ワクチンをやってみようと考えることは理解できます。ホメオパシーにはプラシーボ効果以上の効果はないのですが、患者としては、治るのならプラシーボだろうがなんだろうが良いのです。プラシーボ効果を期待するのならエビデンスは関係ありません。なぜならプラシーボ効果を除いたものがエビデンスですから。むしろ心の治癒力、気持ちのありようなど、どうすればプラシーボ効果を引き出すことができるかを考えるべきでしょう。

緩和医療と心の治癒力
彦根市立病院緩和ケア科部長・黒丸尊治医師の『緩和医療と心の治癒力』は、そんな私の考えとほぼ同じ内容で書かれています。黒丸医師の日本ホリスティック医学協会副会長の肩書きを見て、あの帯津良一氏が会長を務める組織の人だと、少し構えて読み始めたのですが(安保徹氏も名を連ねている)、予想に反して内容はまじめで説得力のあるものでした。

そもそも代替療法などにすがるべきではないのでしょうか。私は決してそうとは思いません。医者からもう治療法はありません、と言われたら誰だってショックを受けます。この現実を受け入れ、残された時間を有意義に過ごそうと思える人はそれで良いと思います。でも、そう思える人ばかりではありません。何とかならないだろうかと嘆き苦しみ、最後の抵抗を試みる人がいてもまったく不思議ではありません。その抵抗の手段のひとつが代替療法なのです。こんなことにすがってもダメかもしれない、と思いながらも、やはりすがらざるを得ないのです。それが人間なのではないでしょうか。

潔く死を受容できる人は希であり、多くの人はジタバタとしながら何とかならないかと思っている。それで良いではないか。医者が別の抗がん剤を勧めて「効かないかもしれないが、ダメモトでやってみようか」と言うのと、効かないかもしれない代替療法をダメモトでやってみることに違いはないだろう、と思います。

癌が消えた―驚くべき自己治癒力 (新潮文庫)
がんの自然治癒に関して漫然とした関心を持っていたという黒丸氏は、それを学問として研究している人たちがいるという理由で心療内科医になる決断をします。中川俊二氏や日本の心身医学の草分け的存在である池見酉次郎氏らと親交を持つ過程で、がんの自然治癒の症例を知ることになったのです。中川氏は最後の日本心身医学会で80症例目になる自然治癒の症例を発表しましたし、北大教授の小田博志氏もドイツで12人の自然治癒の患者にインタビューしています。キャロル・ハーシュバグの『癌が消えた―驚くべき自己治癒力 (新潮文庫)』には多くの癌の自然治癒の物語が紹介されているのです。

黒丸氏も千人以上の患者さんを診てきて、末期癌が消えてしまったり、進行が止まってしまったりする患者を何人も経験し、「末期がんが消えてしまうということはしばしば起こることとは言えないまでも、決して起こりえないようなことでもありません。自分の体験からしても、一般的に考えられているよりもはるかに多い頻度で起こり得るものだと思っています」と述べています。

がんの自然治癒が起きるには、何かのきっかけで「心の治癒力のスイッチ」が押されることが必要です。同じことは『プラシーボの治癒力―心がつくる体内万能薬』でハワード・ブローディも述べています。

これではどのような心の状態になったときに「治癒力のスイッチ」が入るのでしょうか。残念ながら、これがよく分かっていないのです。がんが良くなるくらいだから、よほど強烈で前向きな気持ちが必要かというと、そうとも言えないのです。末期の肝がんの患者の例では、発芽後の誕生をきっかけに人が変わったように穏やかになり、それがきっかけかどうかは不明ですが、肝がんが消えてしまった。ところがこの患者さんにはがんの告知がされてなかったのです。自分が癌だとは知らなかったはずなのです。あるいは開き直る心が自然治癒に繋がったと思える患者もいる。自分の命は神様にお任せし、人の幸せのために全身全霊で宗教活動をすることが自然治癒に繋がったと思われる患者もいる。ところが逆に、死を覚悟して自然治癒に向かっているかもしれないと思っていた患者が「あなたの癌は治るかもしれませんよ」と言われたとたんに、症状が悪化し始めてなくなったこともある。

黒丸氏は、自分の体験からもがんの自然治癒は100~200人に一人くらいは起きていると考えています。

がんは複雑系だから、複雑系では「特別なことが起きるのに、特別な理由は必要ない」のです。そのことはこれまで何度かに分けてブログで紹介してきました。自然治癒は起きるし、それも思ったよりも頻繁に起きているのです。どうしたらそれが起きるのか、まだ人類はその知識を持っていませんが、心の状態が関与していることはまちがいないのです。

マイケル・ラフは『癌が消えた』で次のように言っています。

「たぶん寛解は、同じ死に絶えるメッセージを癌細胞が受け取っているのでしょう。癌は、DNAを溶かし、クロマチンを凝縮させ、細胞を徐々に喪失させる遺伝子を活発化するような化学的メッセージに正常な細胞と同じくらい、弱いのです。」
ラフは、感情が腫瘍の死に大きな役割を果たすことは可能だ、と考えている。「それほど強烈なものである必要はないと考えています。癌は大きな異常ではありますけれど、一定期間にわたる微妙な変質の結果です。治癒もまた微妙な変化で、シーソーが再び降りてきたようなものです。たぶん感情の分子がシーソーを押したのでしょう。」

彼は身体の防御の仕組みを、カオス説で説明する。<略> 心理的力は小さく弱いため、癌による「併合」に影響を与えることはできないという従来の見方と違って、心-体のつながりはミクロの世界で、そこは勝利は強い方へ行くだけではなく、頭のいい方へ行くという世界、情報が力である世界だ。脳には感情と結びついている分子のレセプターが多くある。この分子は最終的に病気に対する前線となる。免疫細胞は体中を回る間に脳と交信して、報告をし、指示をもらい、別の体の現場へ公式声明をもって急行し、傷を治す処置をする。驚異的回復が示しているのは、ある一定状況のもとでは、癌は突破できない砦というよりは、情報の突風の前に震えるもろいトランプの家のようなものであるということだ。

「治りたがる患者には、奇跡的治癒が起こることは希である」というのも一面の真実かもしれません。治る患者には「老子的世界観」と言っても良い、それに似た心の有り様がある、そんな気がするのです。


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がんの自然治癒はどうすれば起きるのか” に対して1件のコメントがあります。

  1. すず より:

    「原理的に効くはずがない」ホメオパシーというのは、新聞の記事を
    読んでのことでしょうか?
    私はホメオパシーを利用しているわけでもなく、支持するわけでは
    ありませんが、ドイツに医療関係者の知り合いがいるので聞いたところ、少なくともドイツの医療大学でホメオパシーの勉強を必修でしなければならないほど、あちらでは当たり前のことと聞きました。
    医師の処方がなくても購入できる安全という国が安全と認めている
    薬だそうです。
    ちょっと気になりましたので、書き込ませいただきました。

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