ASCO2019 膵癌の話題2件

ASCO2019での膵臓がんに関する発表を、杏林大学医学部腫瘍内科学教授 古瀬 純司 先生が解説しています。

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POLO試験 オラパリブ(リムパーザ)で増悪のリスクが47%低下

BRCA遺伝子変異がある場合、導入療法でプラチナ製剤を投与し、維持療法でPARP阻害薬を投与すると高い効果を示すことが膵癌でも示されました。

増悪に関する追跡期間中央値は、オラパリブ群9.1カ月(0-39.6)、プラセボ群3.8カ月(0-29.8)でした。

PFS(無憎悪生存期間)中央値は、オラパリブ群7.4カ月、プラセボ群3.8カ月、ハザード比0.53(95%信頼区間:0.35-0.82)、p=0.0038となり、オラパリブ群で有意に延長しました(図1)。

しかし、 OS(全生存期間)の中間解析では、中央値はオラパリブ群18.9カ月、プラセボ群18.1カ月、ハザード比0.91(95%信頼区間:0.56-1.46)、p=0.68となり、有意な差はありませんでした(図2)。

日本で実施する際の課題として、BRCA遺伝子解析をどの段階で行うのが良いか、その検査体制が整えられるかがあげられています。

APACT試験 術後補助療法でnab-P/G療法とゲムシタビン単剤の比較

術後補助療法としてnab-パクリタキセルとゲムシタビンの併用療法(nab-P/G療法)をゲムシタビン単剤療法と比較した第III相のAPACT試験の結果も発表されました。

研究グループの評価によるDFS中央値は、nab-P/G療法群は16.6カ月、ゲムシタビンのみ投与群が13.7カ月で、有意にnab-P/G療法群が長かった。

しかし、独立審査による判定では、DFS中央値は、nab-P/G療法群は19.4カ月、ゲムシタビンのみ投与群が18.8カ月であったが、有意差はなかった。

これに対する古瀬先生の見解は、

この結果は、膵癌の本質を表していると考えられます。画像だけで増悪を判断していると、膵癌ではOSに関連するようなイベントを拾いきれないということです。APACT試験では、臨床的な情報はなしに、独立審査で画像だけで増悪を判断するとされました。膵癌の臨床はそれではだめで、患者さんの状態や腫瘍マーカー、画像診断などを合わせて増悪を判断することがOSにつながります。nab-P/G療法は術後に行ってもそれなりに効いていると思いますが、試験の計画が実状に合っておらず、失敗してしまったように思います。

ただ、有意差があったといっても、 研究グループの判定でもOSのハザード比は0.82 ですから、それほど良好な値ではない。

日本では術後補助化学療法としてTS-1が良い成績を出しており、FOLFIRINOXと同等なので、これに置き換わることはないと思われます。

 


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