膵臓がんで19年、長期生存者の特徴

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【日 時】2020年1月18日(土) 13:30~17:00(開場・受付:13:20ごろ)
【場 所】京急本線 京急蒲田駅東口から徒歩3分、JR蒲田東口から徒歩13分 大田区産業プラザ3階 特別会議室
【対 象】膵臓がん患者とその家族、遺族
【参加費】1,000円(会場使用料及び資料代)
【定 員】 80名
【内 容】
●講演:押川勝太郎先生「がん治療の心得は登山と同じと知ってましたか?~トラブルを織り込んだ先読み能力が寿命を伸ばす~」
●患者さんどうしの情報交換会~フリートーキング

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最終更新日

Google Scholarで「膵臓がん」をキーワードにして検索していたら、気になる論文を見つけました。

秋田大学学術情報リポジトリに掲載されている「膵臓がん術後長期生存者のサバイバー体験の検証とケアの一考察 ―健康生成論的視点から―」です。

こちらに論文をPDFでリンクを貼っておきます。⇒「 膵臓がん長期生存者の体験

1990年頃に、浸潤性膵管癌のステージⅢで、膵頭十二指腸切除術兼術中放射線照射を受け、その後(論文作成時点で)19年間生存しているA氏。発症したのは50歳代でした。

この当時で術中放射線照射をするとは、進んだ病院ですね。

主治医の、がんサバイバーであるA氏に対する畏敬の念から、膵臓がんを克服できた要因を探り、今後のがん患者ケアに活かしたいとの目的を告げて、A氏と妻に対してインタビューを行った記録です。

当時は患者に「がん」を告知することは稀でした。A氏も医師からは「膵臓がんの”す”の字も告げられなかった」と語っています。

疾病の理解

検査の目的も告げられず、しかたないのでA氏は、若いドクターを捕まえては何の検査かを問いただし、本を買ってきては、自分なりに検査の目的を考えて、次第に「重大な病気」だと理解するようになります。買った本も2000冊にもなるそうです。

病気に対する構え

「助かるとか助からないという考えではなく、俺はこれで死ぬ、とは思わなかった」怖いとか不安という考えもなく、分からなければ調べる、どうすれば良いかを考える、そうしたジャーナリストとしてのこれまでの生き方があったのでしょう。

病気への対処行動と予防行動

そして代替療法も積極的に取り入れる。ビワの葉温灸、和食中心で、四つ足の肉は極力食べない。野菜や果物中心の食事を続けてきました。

ビワの葉温灸や四つ足の動物は食べないのが良いかどうかではなく、問題を解決するために自分で調べて実行する、常に健康ベクトルを持続的に持っていることが重要だと思います。

医師に「重症だよ」と言われた時に「ショックを受けた」「頭が真っ白になった」という表現は全く無く,‘なんだこれは’という感覚をもったということである. 「重大な病気だ」と感じながら, 一方では「俺はこれでは死なない」と思ったということであった.

この状態、私の告知されたときとまったく同じですね。「手術しても5年生存率15%」と言われても、頭の中が真っ白になることもなく、死ぬという気はなかった。次にどうするかを考えていました。

健康生成論から見た考察

論文の結論は次のように書かれています。

浸潤性膵管癌術後19年間にわたり経過観察してきた1症例A氏から, がんサバイバーとして生きてきたこれまでの体験として, 病気との向き合い方について語ってもらった. その内容を健康生成論の視点で分析・考察し, 以下の結論を得た.
1. A氏は高いレベルの理解可能感, 処理可能感,有意義感を有し, 首尾一貫して健康のベクトルを健康軸に向けるよう, 主体的かつ積極的にさまざまなリソースを活用して対処してきている.

これらの意味は、「健康生成論」を唱えたアーロン・アントノフスキーの言葉から読み解くことができる。アントノフスキーは、

ナチス強制収容所で生存していた女性の29%が、対照群の51%と比較して、肯定的な感情的健康を有していたことを発見した。彼の発見は、生存者の29%らはストレスを受けても精神的に病んでいないということだった。

「ストレスがあなたを傷つけるかどうかを決定するのは、特定のストレス要因が人生において遭遇する可能性よりも、その事象へのあなたの知覚および対応よりも、そのストレスがあなたの感覚に逆らうものかどうかという点なのである。

膵臓がんの告知という人生最大のストレスに対して、

  • 物事は秩序ある予測可能な方法で起こるものであり、あなたは人生の出来事を理解可能であり、将来起こることを合理的に予測できるという考え。【理解可能感】
  • あなたはスキル、能力、サポート、ヘルプ、または物事の世話に必要なリソースを持っており、そして物事は管理可能であって、あなたのコントロール内にあるという信念。【処理可能感】
  • 人生とは、面白くて満足感の源であり、本当に価値があって、これから何が起こるかを気にする良い理由や目的があるという信念。【有意義感】

を持って生活している患者は、長期生存者になる確率が高い、ということでしょう。これはフランクルの『夜と霧』でも一貫して記されているテーマです。

膵臓がんの予後は悪いことを認めながらも、「自分はこれで死ぬとは限らない」と考え、将来の最悪の事態に備えながらも、自分が持っているリソース(知識、体力、経済力など)を確認して、育てながら、がんと闘う人生をチャレンジングに楽しむゆとりがある患者が、長期生存者となるのです。

何が起こるか分からないから、挑戦する価値がある。


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