薬・抗体医薬

週末は音楽と読書三昧。チェリスト長谷川陽子の師であるフィンランドのアルト・ノラスのCD『チェロ・カンタービレ』を聴く。静謐なチェロの音色にオーケストラの華麗な響きが伴って、ときには激しく、時には静寧な彼の演奏に魅了される。ドヴォルザークの「森の静けさ」を聴いていると、なぜかソローの『森の生活』の一場面を思い起こした。『森の生活』にあるようなスローライフなら、がんにはならないに違いない。

ブルーバックスから2冊

新・現代免疫物語 「抗体医薬」と「自然免疫」の驚異 (ブルーバックス)

『新・現代免疫物語 「抗体医薬」と「自然免疫」の驚異』
「自然免疫」は「獲得免疫」に比べて程度の低い機能だと思われていた
従来の知識は、近年では見直されつつある。自然免疫なしに獲得免疫が機能することはないということらしい。がんに関していえば、獲得免疫はB細胞、樹状細胞などを使おうとするがんペプチドワクチン療法など、一方自然免疫のほうは、ナチュラル・キラー細胞でがんをやっつけようとするANK療法ということになるのだろうか。

慢性関節リュウマチの新薬開発の章では、リコンビナント抗体で劇的に治るようになった関節リュウマチの二重盲検法による臨床試験を実施していたときの話しがある。通常の二重盲検法の治験では、医者も患者も自分がプラセボを処置されているのか、新薬を投与されているのかは、分からない。しかしこの新薬の時は数ヶ月で分かってしまった。なぜなら新薬投与群の患者は「みるみるうちに顔色が良くなり」症状が改善していった、と書かれている。

本当に効果のある薬とはこうしたものだろう。多くの抗がん剤は自分がプラセボ群なのか新薬投与群なのかは、治験が終わってもよく分からないほどその効果は小さい。先にも書いたように、統計を使って薬の効果を説明をしなければならないということは、統計を使わなければ説得できないほどの効果しかない、ということなのです。

分子レベルで見た薬の働き 第2版 (ブルーバックス)

『分子レベルで見た薬の働き』

薬がどうして効くのか、という当たり前だがまか不思議なことをわかりやすく説明している。薬、多くの場合タンパク質、は20種のα-アミノ酸で構成され、その立体構造が薬の働きに大きく影響している。立体構造を取ることによって、一次元の並びの上では遠く離れた分子同士が、水素結合すること。この立体構造の「くぼみ」が薬の作用機序にとって重要だという。第3章「がんとの闘い」では、白金製剤シスプラチン・分子標的薬イマチニブ・代謝拮抗薬フルオロウラシル、針葉樹キャラボクから抽出されたタキソールなどの開発話しと、分子的に見た抗がん作用が、図を用いて説明されている。素人にもわかりやすい。免疫が抗体という驚異的な分子構造によってどのようにがんをやっつけるのか、専門的な内容が簡潔にまとめられている。

がん患者は抗がん剤の名前は知ってはいても、自分の身体の中でどのようにして働いているのかはよく知らない。生物は分子による化学反応で生きていることを思い知らされる著作である。


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