がんと炎症の関係

がんと炎症との関係について、私がその重要性を知るようになったのはシュレベールの『がんに効く生活』という書籍でした。「私のがん攻略法」には、これ一冊あればがん治療対策は十分だと書いて紹介しています。また、昨年12月1日の立花隆の『思索ドキュメント がん 生と死の謎に挑む』というNHK番組の紹介記事でも炎症とがんの関係について、『がんに効く生活』の内容を紹介しました。そして、日本では多くの医師がまだ炎症とがんとの関係については知識が乏しい、患者は自分で炎症反応について学習する必要があるとも書きました。

「癌Experts」に「悪液質への介入-浮上した炎症制御の重要性」という記事が掲載されました。(2010.2.8) 日本でも炎症反応を制御することとがん治療の関係について、少し関心が高まってきたようです。

記事内容紹介

癌研有明病院の向山医師が登場します。悪液質の症状の多くがインターロイキン-6(IL6)やIL1、腫瘍壊死因子(TNF)αなどの炎症性サイトカインの作用として説明できるようになってきた。IL6が肝臓の薬物代謝酵素の活性を抑制する結果、「抗がん剤やオピオイド鎮痛薬の有害事象が発現しやすくなる」ことも分かってきた。

炎症とがんとの関係を長年にわたって研究してきた三重大学教授の三木誓雄氏は、「がんの組織がIL6とともにIL6受容体をも高発現していることに注目してきた。その結果、
IL6が中心となってがん悪液質が発生、しかもがん組織自ら産生したIL6を自ら受容して増殖する患者にとっては大変迷惑な循環現象が起こっていると捉え
るようになった。」「食べても、食べても痩せる」という悪液質の特徴の背景には炎症があると三木氏はいう。がんに由来する炎症マーカー(CRP)値上昇はがんが発見される何年も前から続くことになり、結果的に大きなダメージを患者の身体に与えている。

「悪液質」というと、進行した末期癌患者だけの問題と考えがちだが、「炎症」というキーワードで考えると、「がん全般に関わる可能性も出てきた。言い換えると、がんとは炎症をベースに進行する病気の1つであるという点だ。がんが炎症を引き起こし、それが薬剤の代謝をかく乱し、疼痛などがんに付随して表れる多彩な症状の原因となっているのだ。がんと炎症は不可分の関係にある。」

そこで最近注目されているのが2009年6月に一般食品として市販された飲料「プロシュア(キャラメル味)」(販売元:アボットジャパン)。1日2パックを通常の食事に加えて取るWshot00104
ことによって、エイコサペンタエン酸(EPA)を2.2g摂取することができる(亜鉛やビタミンC・ビタミンEも入って1パック300kcal)。魚油に含まれるEPAは、その代謝過程において抗炎症性の物質を産生することから、炎症性の症状を改善する効果が認められている。三木氏は直腸がんで多発肺転移を起こしたstageⅣの患者に摂取してもらい、50kgに減った体重が4ヶ月後に58kgまで増加し、当初無理だと思われたFOLFOXをフル用量で投与できるまで回復した症例があるという。向山氏もこの食品が有効かどうかの臨床試験を準備していると述べている

EPAに関しては「健康食品の素材情報データベース」にこれまでの臨床試験の結果が紹介されている。安西さんの「米国統合医療ノート」にもオメガ-3やEPAに関する記事があり、

このように、血中のEPAを高く維持するのは、とても大切なことのようです。しかし1番目の研究のように、EPAだけをサプリメントで飲んでもいい効果が得られるとは限りません1。

(今日のまとめ)
サプリを盲信し、それだけに依存するのは賢明とは言えないようです。まずは肉を減らし、魚をたくさん食べ、他の食事内容や生活習慣にも気を配ること。それができたらサプリメント、という順番でしょうか。

1 サプリでは効果がない、と早とちりしてはいけません。効果が認められたという報告もあります。
今月はじめオンライン版のランセットに、数千例の慢性心不全の患者にオメガ3を投与し、約4年間追跡した研究が発表されました。この試験ではオメガ3服用群が、プラセボ群より有意に死亡率が低いという結果が出ました。同じグループが平行して同じ計画で高脂血症治療薬ロシバスタチンの効果も検討しましたが、この薬の服用群の死亡率はプラセボ群と差がありませんでした。

と書かれている。

新・現代免疫物語 「抗体医薬」と「自然免疫」の驚異 (ブルーバックス)症性サイトカインであるIL6の働きを止める薬として、関節リウマチに劇的な効果があるIL6受容体抗体トシリズマブ(中外製薬)をがん治療に適用拡大することにも期待している。この薬は『新・現代免疫物語』(ブルーバックス)でその開発秘話が紹介されている。私もブログで「薬・抗体医薬」のタイトルで取り上げている。

中外製薬は、国立がんセンター中央病院、同東病院(千葉県柏市)と共同で、切除不能膵がんにたいして、標準治療薬であるゲムシタビンにトシリズマブを併用した臨床試験(第1相/第2相)を開始している。

「ターミナルケアばかりではなく、これまで考えられていた以上に早期の抗炎症治療介入の重要性が明らかになりつつある。まだ、がんと炎症との関係に注目した研究は少ない。一部の動きに過ぎない。しかし、がん治療の新しい1ページを開く気運が出てきたことは確かなようだ。」と結んでいるが、今後の積極的な研究を期待したい。

ただ、IL6の働きは単純ではない。プラスとマイナスの働きがある。IL6の炎症性サイトカインという側面だけを見て、単純に働きを止めると副作用が問題になろう。

  • 発熱・炎症を起こす
  • リウマチの症状を引き起こす
  • 肝細胞を刺激する
  • 血小板を作る
  • 悪液質にも影響する
  • 骨を吸収する
  • 骨髄腫細胞を成長させる

さて、我々がん患者はどのように対応すればよいか?「プロシュア」は27パックが11,730円であり、1日2パック摂取するとして、1ヶ月26,000円あまりの費用がかかる。これが負担にならない患者は飲んでみればよい。相当甘いから辛党は音を上げるかもしれないが・・・。EPAは青みの魚に多く含まれている。26,000円でサバかイワシを買えば相当量のオメガ-3とEPA,DHAが摂取できるだろう。寿司屋に行っても、中トロは止めてサバかイワシにしておく。財布にも優しい。私はもっぱらこの方法で摂取することにしているが、米国ではオメガ-3不飽和脂肪酸とEPA、DHAを含んだサプリメントや魚油を精製した錠剤が盛んに購入されているようだ。サバとイワシを積極的に摂っていればサプリメントは必要ないだろう。私は「プロシュア」は買わない。

EPAの含有量:

  • さば1切れ(80g)     1.5g
  • まいわし(1尾 80g)  1.1g
  • さけ1切れ(80g)     0.4g

『がんに効く生活』でシュレベールは、次の場合にがんという武装集団を解体することが可能になるという。

  1. 免疫システムががん細胞に対して行動を起こすとき
  2. がん細胞が成長し、新しい領域を侵略するのに必要な炎症をつくりだすことを体が拒否したとき
  3. 血管が、がんの増殖に必要不可欠な栄養を供給することを拒否したとき

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がんと炎症の関係” に対して1件のコメントがあります。

  1. 村上 より:

     新聞で知り、こちらをご訪問、記事を少し拝見したところです。最新記事ではEPA関連でしたが、我々には欠かせない栄養素ですもんね。私自身は幸運なことにこれまで特別な病の経験はないのですが、今後も確実にそれが持続するように心掛けています。病の領域には立ち入らないようにして私もプログを書き続けていますが、せめて75までは元気にいきたいです。お互いがんばりましょうね。私もがんばります!(トラックバックできないようですのでコメントさせて頂きました)

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