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『がんと闘った科学者の記録』戸塚洋二・立花隆

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妻につきあってヨーカドーに買い物に行きました。女の買い物は長いので、短気な私はとうていつきあっていられません。ひとりで館内にある書店をぶらぶらしていたら、ある本が目に付きました。『がんと闘った科学者の記録』です。

がんと闘った科学者の記録 (文春文庫)

がんと闘った科学者の記録 (文春文庫)

戸塚 洋二
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物理学者である戸塚洋二さんの闘病記ブログを立花隆が編集したものでした。戸塚洋二さんは、ニュートリノに質量があることを発見され、「次回のノーベル物理学賞候補」といわれてきた人です。彼が昨年の7月に亡くなっていたこともはじめて知りました。そして一年間に渡ってブログに闘病記を書いていたことも。

ブログはまだ残されています。→ The Fourth Three-Months

2000年に大腸癌が見つかり(ステージ3a)、直腸と結腸を30センチも切除したとのこと。時期といいがんの部位といい、私とよく似ています。私も2000年に直腸を切除しています。戸塚さんと立花隆さんの対談に書かれていますが、手術した後5年生存率は80%だ、と言われたそうです。私も確か70か80%といわれた記憶があります。

私は他人の闘病記は読まない、まして闘病の結果亡くなってしまった方のブログは読まないことにしています。しかし戸塚さんのブログは、私も同じ物理学を学んだ(といっても世界的な物理学者と比較するのは不遜ですが)者として、また同じ大腸癌だということもあり、興味を持って読んでいます。(まだすべてを読んではいませんが)

やはり科学者ですね。自分の癌のCT写真をデジタル化して、腫瘍の大きさを計測してグラフ化したり、抗がん剤の投与と腫瘍の大きさの関連性を論じてみたりと、科学者が故にデータを駆使して考察しようとする姿が書かれています。病院からいただいたエックス線写真をビューアーの上に載せてデジカメをマクロモードにして腫瘍の写真を撮っています。私もまったく同じことをしています。Ca19-9やCEAの数値もExcelで時系列的に追っかけています。

冷静に自分のがんを見つめ、「私はがん克服を人生目標にしているのではありません。がんを単なる病気の一種と捉え、その治療を行っているに過ぎません」と言い切ります。勤務地の近くの草花や木々のこと、教育のことなどへの言及もおおく、闘病記と言うよりはエッセイと言えると思います。

壮絶な闘病記で、研究者としても立派な業績を残され、がんと正面から闘った姿には感動します。

しかし、私は「違うんじゃないかなぁ」と思います。同意できない点が多々あります。もちろんこれは価値観・人生観・哲学の問題であり、戸塚さんの人生観をどうのこうのというのではありません。

本人も書かれていますが、5年生存率80%と言われて安心してしまったのでしょうか。退院後も手術以前と同じ研究生活に戻るのです。それ以上に、報道もされましたが、スーパーカミオカンデの事故があり、その復旧の責任者として昼夜に分かたず多忙な生活を送ることになります。これでは再発しても当たり前ではないかというような生活です。
これまでの多忙で無茶な生活ががんを作ったのであるから、生活習慣を180度転換しない限り、がんが治ることはない、という考え方が見られないことです。抗がん剤で再発したがんが治ることはないと理解しながらも、それ以外の治療法を考慮していないようなのです。(休眠療法に関する記述はありましたが)

ゲルソン療法とまでは言わないまでも、食事を変え、ストレスを極力減らし、仕事も任せられるものは任して、自分の健康に責任を持つことを考えるべきでした。自分自身に優しくなるべきでした。がんになる人はまじめで仕事熱心、彼に任せておけば大丈夫、こんな信頼されている人ほどがんになるのです。これは統計的にも明かです。

彼ほどの科学者なら、心と病気の関係、精神腫瘍免疫学が近年成し遂げた理論的成果も理解できたはずです。後数ヶ月の余命と覚悟をしています。何が何でも、奇跡的にでもがんを治すんだという気構えがないのです。科学者らしくデータ通りに余命を受け入れ、データ通りの標準的抗がん剤治療で少しでも延命しようとします。しかし、私が思うに、死を受け入れることと、がんと闘って打ち勝つファイティング・スピリットは両立しうるものなのです。

もっともっと物理学の統一理論をひっくり返すような大発見も、彼が生きていれば成し遂げられたに違いありません。残念です。

出版された本はブログの一部であり、すべてに目を通したわけではないので、見当外れのコメントかもしれません。決して戸塚さんの行ったことを駄目だと評価しているのでもありません。科学的に証明されマニュアル化された治療だけを信じていたように思えて、科学者の性を見たような気がします。

できることならば私のブログも彼のような深い内容のあるものにしたい、そんな気にもさせられるブログと本でした。


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『がんと闘った科学者の記録』戸塚洋二・立花隆” に対して5件のコメントがあります。

  1. キノシタ より:

    のっぽ先生。
    >最近は、「生きたい。」というスピリットの部分が結構、大きいのではないか、と思う様になりました。
    そうですよね。「這いずってでも生きたい」などと書かれていましたね。
    常々私も心の有り様がもっとも影響しているのだろうと想っています。エビデンスはありませんが。
    これからも同じように進まれることを期待しております。

  2. のっぽ187 より:

    キノシタさん
    立て続けの投稿、失礼致します。
    私が、ここまで来れたのは、運の要素が大きい、と考えています。
    ただ、もし、何か寄与する物があったとすれば、西洋医学の知識と、「生きたい。」というスピリットがあったのではないか、と思っています。
    今までは(つい最近までは)、西洋医学の知識が(自分を救うのに)多少、役に立ったかも知れない、と思っていたのですが、最近は、「生きたい。」というスピリットの部分が結構、大きいのではないか、と思う様になりました。
    改めて、素敵な記事だな、と感心し、つい、コメントをしてしまいました。

  3. のっぽ187 より:

    キノシタさん
    >妻も子供ももちろんコントロールできません。できるのは自分の気持ち・考え方だけ。コントロールできないことには悩まない。選択肢のないことにおろおろしない。こうした生き方で行こうと思います。
    妻も子供も居ませんが。
    私も、かくありたいです。

  4. キノシタ より:

    大久さん。コメントありがとうございます。
    戸塚洋二さんがお元気でいたら、今回のノーベル賞は彼が受賞したのでしょう。でも天国で部下の受賞を喜んでいるに違いありません。
    治らないがんと告知されたあとに生き方は人それぞれ。どれが正解というのもないとは思います。私の場合は「やるべきことをやったら、結果を受け入れる」「がんとの闘いだけに生きているわけではない」との思いが強かったですね。
    自分の身体、その中にできた腫瘍でさえ、コントロールできないのです。妻も子供ももちろんコントロールできません。できるのは自分の気持ち・考え方だけ。
    コントロールできないことには悩まない。選択肢のないことにおろおろしない。こうした生き方で行こうと思います。
    生かされるままに生きていく、です。

  5. 大久 栄(おおひさ さかえ) より:

    初めてお邪魔します。
    今日、NHKで戸塚洋二氏の番組を観ながら検索していたら、
    あなたのブログに出会い、かきこ(古いなあ)したくなりました。
    仙台市在住で、段階の世代の夫と連れ添って三十数年の私です。
    私は今のところ癌ではありませんが、両親がそうでしたし、
    と言ってもどんな死に方をするかわからないので、気にせず今を生きています。
    我が家は13年前から里親をしています。
    たった一人の子どもを預かることしかできずにお話できる経験もありませんが。
    7歳でやってきたその子の観察をしながら、また自分自身を観察しながら、
    人間というのは上手くできていると感心することばかりです。
    脳にそれを支える機能が備わっているのだろうと思います。
    心と体と言いますが、どちらもバランスよく必要な情報をやり取りしているのでしょうね。
    そうそう、何故お邪魔したかというと、あなたの雰囲気が気に入ったのです。
    ブログを少し読んだだけで失礼な物言いです、すみません。
    なんか物の見方が私と似ている人だなと感じました。
    チェロを弾かれるのも素敵やなぁと思いました。
    私もピアノを少々弾いていたし、チェロの中層低音が心地良くて好きです。
    宮沢賢治もチェロを弾いていたのですよね。
    お薦めの本に「米原万理」さんのもありました。
    私大ファンです。現役で通訳をされている頃は全く知らずで、残念です。
    今日の戸塚氏への感想は、
    頭の中には何がやりたいか、そんな発想が続いていくのかなあと。
    そんな意思に従うことが自分らしさで生き抜くことかと。
    ぴったりの言葉がまだ出ませんが、
    自分ならと考えないわけにいかない番組でした。
    では失礼します。

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