緑茶はがんに効くか?

京セラのお茶ミルを使い出して、3ヶ月になります。1月に放映された「ためしてガッテン」では、3ヶ月で血圧が下がった、減量したなどの効果があったなどと説明していましたが、さてお茶はがんにはどのような効果があるのでしょうか。いくつかの根拠を探してみます。

「健康食品」の安全性・有効性情報

こうしたときに、まず最初に参照するのは『「健康食品」の安全性・有効性情報』でしょう。チャ(茶) [英]Tea, Black tea, Green tea, Chinese teaで情報が載っています。「同意する」ボタンを押して、さらに「すべての情報を表示」をクリックします。「血中のコレステロールおよびトリグリセリドを低下させる」などの有効性が多く記載されています。循環器・呼吸器、糖尿病、肥満には有効性が示唆されているようです。しかし、免疫・がん・炎症に関しては、このように書かれています。

  • 膀胱がん、食道がん、膵臓がんの予防に緑茶の経口摂取で有効性が示唆されている。緑茶の飲用がある種のがん(膀胱がん、食道がん、膵臓がん)リスクを低減させるという報告がある(PMID:9795966)(PMID:8294212)(PMID:3834338)。また、乳がん再発のリスクも低減するという報告がある(PMID:11369139)
  • 日本のコホート研究で、10杯/日以上の緑茶飲用で、肺、肝臓、大腸、胃がんのリスクが軽減(PMID:9388788)(PMID:11237198)、5杯/日以上の緑茶飲用で女性の胃がんのリスクが軽減するという報告(PMID:15286468)がある。九州での比較対照研究で、10杯/日以上の緑茶飲用で胃がんのリスクが軽減するという報告がある(PMID:3143695)
  • 胃がんの予防に緑茶の経口摂取で有効性が示唆されている。この効果は緑茶を10杯/日以上摂取すると認められるという報告がある(PMID:11304697)(PMID:9578298)(PMID:3143695)(PMID:8640692)(PMID:1873447)。10杯/日以下ではこの予防効果は現れない(PMID:11228277)(PMID:3930448)
  • 2006年までを対象に4つのデータベース(コクランライブラリー、MEDLINE、EMBASE、Chinese
    Bio-medicine)で検索できた疫学研究14報について検討したメタ分析において、緑茶摂取と胃がんリスクには関連が認められなかったという報告
    がある(PMID:18364341)。
  • 2007年8月までを対象に3つのデータベース(MEDLINE、EMBASE、Cochran
    Review)で検索できた疫学研究(症例対照研究、コホート研究)13報について検討したメタ分析において、緑茶の摂取は胃がんリスクを低下させたが、
    コホート研究7報のみの解析では、リスク低下は認められなかったという報告がある(PMID:18973231)
  • 卵巣がんの予防に緑茶の経口摂取で有効性が示唆されている。最低、1杯/週以上緑茶を摂取すると卵巣がんリスクが低減するという報告がある(PMID:12163323)
  • ワシントン州在住の女性2044名(症例781名、35-74歳)を対象とした症例対照研究において、緑茶の1杯/日以上の摂取は卵巣がん発症リスクを低減したという報告がある(PMID:18349292)
  • 結腸直腸がんの予防に対して有効でないことが示唆されている。疫学調査の結果、緑茶の摂取は結腸直腸がんリスクに影響を与えないことが示唆されている(PMID:9578298)(PMID:3930448)
  • 直腸結腸腫切除後の患者125名(試験群60名、平均62歳)を対象とした無作為化比較試験において、緑茶抽出物1.5g/日(エピガロカテキンガラート 157.5mg、(-)-エピカテキン 36.9mg、(-)-エピガロカテキン 103.8mg、(-)-エピカテキンガラー

    33.3mg、カフェイン 47.1mg含有)を12ヶ月間摂取させたところ、結腸の腺腫再発率と再発腫瘍のサイズが抑制されたという報告がある(PMID:18990744)
  • 予備的な臨床試験の結果、緑茶の摂取はアンドロゲン非依存的前立腺がんのリスクに影響を与えないという報告がある(PMID:12627508)。この効果については、さらなる科学的根拠の蓄積が必要である(66)。
  • 前立腺上皮内腫瘍を有する男性60名を対象とした二重盲検無作為化試験において、緑茶カテキン(600mg/日)およびプラセボを1年間摂取させたところ、前立腺癌の発生率、血中の前立腺特異抗原、国際前立腺症状スコアの有意な低下が認められたという報告がある(PMID:16424063)
  • 日本人男性19,561名を対象とした緑茶の摂取と前立腺がんのリスク低下の関連性を検討した結果、100名が前立腺がんを発症し、5杯/日以上摂取す
    る男性と1杯/日以下の男性を比較した場合の多変量危険率は0.85(95%信頼区間0.50-1.43、p=0.81)であり、緑茶の摂取と前立腺がん
    リスク低下との間には関連性があるとはいえない、という報告がある(PMID:16804523)
  • 男性49920名(40-69歳)を対象としたコホート研究(追跡期間11-14年)において、緑茶の摂取量と全前立腺がんの発病リスクに関連はみられないが、進行性前立腺がんの発病リスクとは負の相関がみられたという報告がある(PMID:17906295)
  • 健常人124名(18-70歳、試験群52名)を対象とした無作為化二重盲検比較試験において、緑茶カプセル(詳細は不明)を12週間摂取させたところ、風邪やインフルエンザの症状の発現および罹患日数、症状発症日数が減少したという報告がある(PMID:17914132)
  • 1998年から2009年までを対象に5つのデータベースで検索できた疫学研究9報について検討したメタ分析において、症例対照研究5報の解析では、緑茶の摂取は乳がんの発生率を減少させ、前向きコホート研究4報の解析では、3杯/日以上の茶の摂取は乳がん再発のリスクをわずかに減少させるが、乳がんの
    発生率に影響は認められなかったという報告がある(PMID:19437116)

このように、がんに関する研究では発症のリスクを減少させるという肯定的なものも、関連性はないというもの、さらには逆にリスクを増大させるというものまでさまざまです。「概要」にも書かれているように、緑茶を多く飲む人は、さまざまな疾病にかかりにくいという疫学調査がきっかけとなって、単なる嗜好品というだけでなく、その健康効果がクローズアップされていることは間違いないでしょう。

『がんに効く生活』では

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シュレベールが『がんに効く生活』で緑茶(カテキン・EGCG)について触れていることは前に書きました。

「われわれの研究によると、大豆および緑茶のファイトケミカルを組み合わせることにより、エストロゲン依存性の乳がんの進行を抑える潜在的な効果がある食事療法として利用することができると思われる」がんに関する科学論文には、このように極めて慎重な言い回しが多いが、その意味するところはとても重要である。

とのシュレベールの一言が象徴しているように、この種の研究は多くの場合、決定的なことが言えません。がん患者は、科学的表現の中から期待できるものを探すことになるのです。

米国統合医療ノートにも緑茶についての記事がいくつかあります。主な記事は、

  1. 緑茶は冠動脈疾患のリスクを減らす
    2011年2月22日 … 緑茶については、摂取が多いと冠動脈疾患のリスクは0.72倍と28%も低下し、有意差がありました。1日に緑茶の摂取が1杯増える … 緑茶については冠動脈疾患のリスクを低減する可能性があるが、データが限られており、さらに研究が必要だ、 …
  2. 緑茶は満腹感を高める
    2010年12月3日 … 緑茶にはいろいろな効能がありますが、2型糖尿病のリスクを低減する可能性がときおり示唆されています。 … スエーデンの研究者らが、食後の血糖値、インスリン、満腹感に対する緑茶の作用を調べました(ソースはこちら)。 …
  3. 緑茶は乳がんリスクには影響しない
    2010年11月2日 … 緑茶が肺がん、子宮内膜がん、血液やリンパ球のがんなどのリスクを減らすことを示唆するデータをこれまでご紹介しました … 6万人ほどの人を対象にして日本で長期間にわたって行われた研究です。1990年から94年の間に緑茶摂取のデータを …
  4. 緑茶は肺がんリスクを減らす
    2010年1月14日 … そこでも緑茶とがんについての発表がありましたのでご報告します。台湾からの研究です。 … 緑茶を飲んでいても、IGFの遺伝子型が肺がんのリスク因子だった人は、そうでない人に比べリスクが3倍高いことがわかりました。 …
  5. 緑茶はうつを防ぐ
    2010年1月9日 … 日本から緑茶とうつ症状についての報告がありました。 地域社会で暮らしている70歳以上の1058人が対象となりました。 日ごろのお茶の摂取量をアンケート調査し、うつ症状を30項目の老人うつ尺度で評価しました。 11点以上を軽度のうつ …
  6. 緑茶は優れもの
    2009年10月16日 … 緑茶の研究が日本からまとめて出たのでご報告しましょう。 東北大学の研究者らが41761人のがんの履歴のない人たちを9年間観察するうちに、157人が血液・骨髄・リンパ系のがんになりました。 緑茶を1日5杯以上飲む人たちは、1杯以下の人 …

東北大学の栗山進一助教授らの研究

栗山進一助教授らは数多くのコホート研究を行っています。その中には緑茶に関する研究もいくつかあります。

  • 緑茶を飲む頻度が高いほど肝がんの罹患リスクが低い
  • 緑茶摂取と血液腫瘍発症リスクの関連について
  • 緑茶摂取と肺炎死亡リスク
  • 緑茶摂取と子宮内膜がん罹患リスクについての症例対照研究
  • 緑茶摂取と全死因死亡、循環器疾患死亡、がん死亡リスクとの関連について
  • 緑茶摂取と前立腺がん発症率との関連について
  • 緑茶摂取量と乳がん発症リスクとの関連について
  • 緑茶と胃がん発症リスクとの関連について

「緑茶摂取と全死因死亡、循環器疾患死亡、がん死亡リスクとの関連について」では、

緑茶に含まれるポリフェノール、特にエピガロカテキンガラートには循環器疾患やがんに対して防御作用があることが、細胞レベルや動物実験で盛んに研究・報告されてきました。しかしながらヒトを対象とした研究は少なく、一致した結論が得られていませんでした。
わたしたちのグループでは、宮城県大崎地方に居住する40-79歳の40,530人(男性19,060人、女性21,470人)を対象に大規模前向きコホート研究を行っており、1995年から全死因死亡については11年間、死亡原因については7年間追跡調査を行っています。今回1994年のベースライン調査での緑茶摂取に関する回答をもとに、対象者を緑茶摂取1杯未満/日、1-2杯/日、3-4杯/日、5杯以上/日の4群に分け、その後の死亡リスクを算出しました。その結果、図1~4のように、男女とも緑茶を多く摂取するほど全死因死亡リスクが統計学的に有意に低下し、リスクの低下は特に女性で顕著であることが明らかになりました。緑茶摂取1杯未満/日群と比較すると、5杯以上/日群ではリスクは男性で12%、女性で23%、それぞれ低下していました。循環器疾患死亡ではこうした関連がより強くみられ、リスクは男性で22%、女性で31%、それぞれ低下していました。循環器疾患の中では脳血管障害で特にリスクの低下がみられ、脳血管障害の中では脳梗塞でリスクの低下が顕著でありました。一方、緑茶摂取とがん死亡リスクとは関連がみられませんでした。
つまり、緑茶を飲むことは、脳梗塞などの動脈硬化性疾患リスクを低下させ、ヒトの寿命を延伸させる可能性があるということが、大規模な前向きコホート研究で明らかになったということです。

また栗山助教授は、NHKの「ためしてガッテン」で放映された内容について、「掛川市はがん死亡率が日本一低い–これは客観的なデータに基づいているようですので、このことを紹介いただくのは結構なことと思います。問題はこれが緑茶の効果であるとの印象を強く受ける構成であった点です」として、1月25日付で「「放送内容に関する研究総括者のコメント」を出しています。

ある地域のがん死亡率が低いのは、1)がんにならない、2)がんを早期に発見し早期に治療できている、3)がんの治療成績がよい、などの原因が考えられます。番組では検診受診率は高くなく、がんの医療機関が充実しているわけでもないことは伝えられていました。したがって、がんにならない、つまりがんになる人が少ないのでは、との推測までは可能です。では、がんになる人が少ないことの要因は何でしょうか。この点を緑茶の飲用習慣に帰するには現時点ではデータ不足といわざるを得ません。

掛川スタディでは、緑茶の品種やその飲み方に注目し、それが健康にどのような効果を示すのかを現在検討中です。深蒸し茶がいいという結果が得られ、論文化されたわけではありません。

しかしながら、だからといってこのコメントが緑茶の効果を否定することを意図しているものでもありません。要は現在その検証が進められているということです。確実な結果が得られるまでにはもう少し時間がかかりますので、それまでは自分に合うと思われるお茶を楽しみながらお飲みになることをお勧めします。そして、禁煙や検診の受診などすでに確立されている健康行動をしっかりととることを忘れないでください。このコメントの主旨は番組内でみなさまがお受けになった緑茶に関する印象のうち、いくつかは若干結論の飛躍がみられるというものです。

栗山個人的には、緑茶の健康効果に大きな期待をしています。

要するに、結論を出すにはデータ不足、早すぎるということです。しかし、ある種の手ごたえは感じていると述べているのです。

栗山助教授は別の「緑茶と健康」と題した解説の中で、

ヒトを対象とした疫学研究で、緑茶摂取と疾病予防との関連が明らかになりつつありますので、緑茶を多く飲むことはお勧めですが、熱い飲み物は食道がんの原因になる可能性も疫学研究から示唆されています。飲むときは少し冷ましてからいただくのがいいと思います。

とも語っています。

私の結論(がん患者はどのように対応するべきか)

については、次回ということで。


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