がん治療で無視できない腸内細菌

Akkermansia muciniphila ヤクルト中央研究所のサイトより
腸内フローラ
次世代シークエンサーといわれる遺伝子解析装置の開発など、最近の分子生物学の進歩により、腸内細菌の新しい事実が明らかになってきました。
なんと、潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患、糖尿病や高血圧など生活習慣病、脳精神疾患、ギャンブル依存症など種々の疾患と深い関係があると報告されています。
もちろん、私たちの関心事である「がん」とも深い関係がありそうです。
「ためしてガッテン」では『腸内細菌パワー覚醒術』というのをやっていました。
京都府北部「京丹後」といわれる地域。古くから健康長寿で知られ、さらに大腸がんの罹患率も低いという特殊な地域。その原因は何なのか、地域の高齢者の体を徹底的に調べる一大プロジェクトが進められています。見えてきた一つの可能性が特別な「腸内細菌」の存在。体内の炎症を抑える良い働きをしてくれる、ある“善玉菌”が多いことがわかってきました。
腸内細菌の一種「真菌」が膵臓に移動して、正常な細胞を癌化させるのかもしれないという研究結果が「ネイチャー」誌に発表もされました。
私などは、腸内細菌の大部分は大腸菌だと教えられてきたのですが、糞便を採取して検出するしかなかった時代の常識が、遺伝子解析によって明らかになり、大腸菌は数%しかいないと分かったらしい。
私たちの体内には“生きた”細菌が、およそ1000種類以上、100兆個の細菌が生息し、1.5から2kgの腸内細菌叢(腸内フローラ)を形成していると言われております。
腸内細菌と免疫療法の関係
シカゴ大学のグループは、同じ週齢の同じ種類のマウスがそれを供給する会社によって抗腫瘍効果が異なる事を発見しました。原因は、異なる会社からのマウスがお互いの糞を食べていたことにより、糞便にある腸内細菌が抗PD-L1抗体の抗腫瘍効果に影響を与えた可能性があるとしています。
CD8陽性T細胞を主とした免疫反応であることが示され、この抗腫瘍効果を規定しているのはビフィズス菌であることも分かってきました。
この報道のあと、スーパーからヨーグルトが消えたそうです。
最近、Institut Gustave Roussyのグループは、抗PD-1抗体で治療した患者糞便からのデータで、肥満や糖尿病と関連していると言われているアッカーマンシア ムシニフィラ菌が、抗腫瘍効果と強く関係していると報告しました。
また、Faecalibacterium菌が多くあると予後が良好であり、Bacteroidales菌が多いと予後不良でると報告をしております。
このように、次々と新しい研究結果が報告されています。
腸内細菌叢は、ヒトの免疫と深い関係があるようです。がんの発症にも、発症後の免疫治療にも関係しています。
がんの予防には、 腸内細菌叢を変化させることが、非常に重要だと考えられます。
さて、がん患者はこれにどのように対応すればよいか?
それは佐藤典宏先生がブログで詳しく丁寧に書かれています。