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肥満とがん&糖質制限食

糖質制限食とカロリー制限食のディベートが、来年1月15日の第15回日本病態栄養学会年次学術集会(国立京都国際会館)で行われるそうです。ディベートでの糖質制限食派の演者は江部康二先生、カロリー制限食派の演者は、高輪メディカルクリニックの久保明先生です。この学術集会の内容をちょっとのぞいてみると、がん治療時の栄養療法とか、カーボカウントの利点と注意点とか盛りだくさんなので面白そうですが、京都では参加は無理ですね。

肥満とがん発症の関係は明かですが、がん治療後の患者はどのような栄養管理をすれば良いのか。医療機関でもがん患者の治療後の栄養管理にはまだまだ関心が薄いようです。そもそもほとんどの医者が栄養について勉強していません。「それは栄養管理士の仕事だろう」と考えているのでしょう。

坪野吉孝先生は世界がん研究基金による報告書第2版を解説する中で、

「がん体験者の食事に関しては、まだわかっていないことがあるし、これから明らかになってくることがたくさんあるでしょう。しかし、現在の段階でも、推奨されていることがあるのですから、それに基づいた食事に取り組むことをお勧めします。できることはけっこうあるはずです」
世界がん研究基金による報告書の第2版は、食物・栄養・運動とがん予防に関する世界の叡智を集めたものである。がん体験者の食事に関しても、ここで推奨されていることが、現在最も信頼できる内容なのだということを忘れないでほしい。

と言われています。

私も膵臓がん200911061になる前には体重が80キロを超えていました。最高では84キロまでいったこともあります。肥満とがんの発症には明から相関があると言われています。こちらのデータでは、膵臓がんの28%は肥満が原因であるとしています。

しかし、肥満がどのような機序でがんの発症につながるのかは、明らかになっていません。NCI Cancer Bulletin2011年11月15日号「肥満とがん研究特別号(PDF)」にはいくつかの興味深い記事が掲載されています。(文字での記事はこちら

■肥満と癌研究
「肥満と癌リスクをつなぐ機序の解明」
「口腔ミクロビオームを探る」
「ヨーグルトの健康への影響について分析」
「適正バランス:癌サバイバーの適正体重維持のために」
「その他の情報」

かつては単に受動的なエネルギー源貯蔵所だと思われていたが、今日、脂肪組織は驚くほどたくさんのホルモン、成長因子、そしてシグナル分子など、いずれも体内の他の細胞のふるまいに影響する物質を産出することが知られている。

世間の一般常識?では、がんになると激やせすると思われているのですが、記事にもあるように、アメリカでは超肥満のがん患者が多いというのには驚きでした。当然再発率も高いはずです。

インスリンも成長ホルモンです。上に書いた世界がん研究基金の報告は、1960年以降に世界各地で書かれた50万件の研究報告から7000件を選び出し、がんと体重、食事との関係を分析した結果、『BMI値(体重を身長の2乗で割った数値)を20~25に保つのが望ましく、肥満によって乳がんや膵臓がんのほか、直腸、食道、子宮内膜、腎臓、胆嚢のがんになり易い』と結論づけています。

我ら糖尿人、元気なのには理由(ワケ)がある。 ――現代病を治す糖質制限食
「肥満→インスリン抵抗性→高インスリン血症→発がん」という今までの研究報告に一致するものです。 江部康二先生と作家の宮本輝氏の対談本『我ら糖尿人、元気なのには理由がある』があります。宮本輝氏も、江部医師に相談しながら糖尿病を糖質制限食で治した経験から、この対談になったのです。この対談で江部医師が次のように語っています。

江部 そうです。これは世界共通の肥満度を判定する指数なんですが、この指数で表される肥満の度合いが、がんの発症に最も関係していることがわかったんですよ。
では、なぜ肥満ががんにつながるのか、ということなんですが、これはインスリンの過剰分泌が大きな要因になっています。
インスリンそのものが細胞成長因子なんです。がん細胞というのは毎日5000個くらい発生しては、それを免疫細胞がやっつけるというのを繰り返しているわけです。ところが、インスリンが大量に出ているとがん細胞の増殖を異常に促進してしまうんですよ。ですから、インスリンの過剰分泌は肥満を起こすだけでなく、がん化した細胞を増やして、がんを巨大に育ててしまうわけです。
ですから、肥満ががんを引き起こす大きな要因として、インスリンの過剰分泌があることは間違いないんですね。

宮本 そうすると、精製された糖質を日常的に食っている現代人は、常にがん発症の危機にさらされているわけですね。

江部 そうです。だから、現代社会ではこんなに文明国型のがんが増えているんです。
インスリン過剰とがんとの関係についてさらに証拠となるのは、2005年のアメリカ糖尿病学会で発表されたカナダの研究者の報告です。これによると、インスリンを注射している糖尿病患者さんは、インスリンを注射していない糖尿病患者さんに比べて、約二倍もがんになりやすいんです。
インスリンというのは人体に絶対に必要なものですが、それが過剰になってしまうと、肥満になったり発がんを促進したりしてしまうわけですね。

こんな説明を聞くと、肥満であろうとなかろうと、がん患者はインスリンに注意を払うべきでしょうね。私も含めて、あまり血糖値のことは気にしていない、異常な値でもないかぎりは問題ないと考えているがん患者が多いのではないでしょうか。また、できてしまったがんと血糖値、糖質制限食の関係について興味深く語っています。

がんのなかには、ブドウ糖をあまり取り込まないタイプのものもあり、例えば前立腺がんなどはこの検査ではわかりませんが、がんの八割から九割はPETでわかります。こうした検査が成り立つほど、がん細胞にはブドウ糖を多く取り込むという特徴があるんですね。ですから、ブドウ糖をたくさん食べるタイプのがんならば、糖質制限食によって兵糧攻めになる理屈ですね。

ただ、がん細胞はこれほど単純にはいかないところもあるんです。
グルットという、ブドウ糖の取り込み装置の話を前にしましたが、多くのがん細胞がグルット1を持っているんです。

前に説明したようにグルット(糖輸送体・グルコ-ストランスポーター)には1から12まであり、グルット1は細胞の表面にあるものです。これは正常な細胞では脳細胞や赤血球、網膜の細胞など一部にだけあるもので、血糖さえあれば優先的にブドウ糖を取り込めます。これに対して、心臓や骨格筋などのグルット4は普段、表面にはなく血糖を取り込めません。また内臓細胞もグルット1は持っていません。ところが、こうした細胞ががん細胞化したときに多くの場合グルット1を獲得するんですよ。

だから、私も糖質制限食で血糖を減らせばがんを兵糧攻めにして消滅できるんじゃないかと思ったこともあるんですが、敵もさるもので、グルット1を獲得して生き延びてしまうんですね。

それでも、野放しに糖質を食べて、血糖がいつもどかどかと体内にある状態に比べれば、糖質制限食では血糖量のレベルが違いますね。がんの進行速度はやはり違ってくると思います。すでにできてしまったがんに対して、進行速度を遅くするという意味では兵糧攻めになっています。
糖質制限食でがんの進行が遅くなる、これは十分に可能性があります。

やはりがん細胞は賢くて手強いのです。確実なエビデンスはないですが、効果が出れば儲けものと考えて、糖質制限食をやってみる価値はあります。


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