糖質制限食のディベートー勝負あり

12月2日の「肥満とがん&糖質制限食」で紹介した第15回日本病態栄養学会年次学術集会(国立京都国際会館)でのディベートの報告が、江部先生のブログにアップされています。この学術集会始まって以来の大盛況だったようです。結論から言えば「勝負あった」ということです。糖質制限食に関する関心が一挙に高まるに違いありません。今後はがんと糖質制限食の関係についての研究が進展することを望みます。

Sho先生(がん治療の虚実)の連載記事も終わったようで、「炭水化物摂取とがん⑩まとめ」としてアップされました。なかなか読み応えのある記事ですので、こちらの連載も読まれることを勧めます。そして糖質制限食について自分なりの判断をしてみることです。Sho先生は「個人的意見であるが」としながら、

実はがん治療で糖質制限食を活用してみたい気持ちはある。
現時点では推奨できないと書いたが、高いエビデンスレベルまで証明されるのは相当時間がかかるだろうし、ランダム化試験は不可能に近いと思われるからだ。

と書かれています。これまでのは「公式見解」であり、個人的意見と使い分けるのは「東大話法」ではないか、という突っ込みは止めておき、正直に書かれたことを歓迎します。

糖質制限食をやってみれば分かるのですが、実際には肉や魚を摂る機会が増えてむしろカロリーは多く摂取するようになります。しかしそれでも体重が減少するという傾向になるのです。控えるのは主食であるご飯やパン、麺類ですから、抗がん剤治療中で食欲がない場合にも、食物の選択肢は増えるはずです。食べられるものを食べるということがより可能になるのではないでしょうか。しかし、あくまでもエビデンスレベルの低いのが現状ですから、主治医と相談しながら、自分の責任で取り入れるかどうか決めればよろしいでしょう。

むしろ、済陽高穂氏らの提唱しているゲルソン療法まがいの食事療法と真っ向から対立する食事になりますね。朝日新聞のウェブに記事か広告か分からないこんなものがありました。

【新刊】『晩期ガンから生還した15人の食事』発売~膵臓・食道・胃・大腸・肺・前立腺・卵巣・乳ガン……奇跡の症例~

手術不能の膵臓がんに「効果があった」と言うのですが、これこそエビデンスレベルの低い「症例紹介」にしかすぎません。しかもジェムザールとTS-1も併用していたのですから、腫瘍が一時的に縮小することは良くあることです。患者のその後のことなどは書かれていません。

済陽式食事療法をやっていた膵臓がんの方で映像作家の寺田聡さんがブログ「済陽式ガンの食事療法-ディレクターの日記」を書かれていました。済陽式のDVDまで作成してAmazonで販売もしていましたが、昨年の9月に3年間の闘病生活の末亡くなっています。合掌。

この方の例なども「有効例」としてカウントされるのでしょうね。ゲルソンの娘は、抗がん医者は現場でどう考えるか剤治療中はゲルソン療法をやってはいけない、膵臓がんには効果がないとはっきり書いているのですが、ゲルソン療法を改良した治療法だという触れ込みなのでしょう。

グループマンの『医者は現場でどう考えるか』で「医師はデータではなく、患者の物語に耳を傾ける必要がある」として、EBMに関してはこんな一節を述べています。

いわゆる科学的なエビデンスに基づいた医療(EBM)は急速に広がり、今や多くの病院において規範になっている。統計学的に立証されない治療法は、臨床試験の成績に基づいた一定量のデータが得られるまで、ご法度なのだ。

もちろん医師は誰でも、治療法を選択する際にその研究成果も検討すべきである。しかし、EBMに頑なに依存する今日の医学では、医師が数字だけに頼って受動的に治療法を選択する危険がある。

統計は、目前にいる生身の患者の代わりにはならない。統計は平均を表わすものであり、固体を表わさない。医薬品や治療に関する医師個人の経験に基づく知恵ー臨床試験の成績から得られた「ベスト」の治療法が、その患者のニーズや価値観に適合するかどうかを判断する医師個人の知識ーに対し、数字は補足的な役割でしかない。

私の主治医である鈴木央先生もその著書で、患者の「物語により沿う」と題して、現場はEBMだけでは動かないと、おなじ考えを述べています。その内容はこちらのブログで紹介したところです。


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