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『カノン』脳間海馬移植が可能となった近未来が舞台

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新日鉄住金 鹿島製鉄所の夜景。出張のついでに撮影した。


カノン (河出文庫)

カノン (河出文庫)

中原清一郎
920円(08/04 15:17時点)
発売日: 2016/12/06
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中原清一郎の小説『カノン』は、脳間海馬移植が可能となった近未来が舞台です。

「馬の脳」と呼ばれる「大脳辺縁系(だいのうへんえんけい)」には、「海馬(かいば)」という部分があります。海馬は、タツノオトシゴのような形をしています。
日常的な出来事や、勉強して覚えた情報は、海馬の中で一度ファイルされて整理整頓され、その後、大脳皮質にためられていくといわれています。つまり私たちの脳の中で、「新しい記憶」は海馬に、「古い記憶」は大脳皮質にファイルされているのです。

58歳の寒河江北斗は膵臓がんの末期で(膵癌は治らないがんの代名詞だからなぁ)ベッドに寝たきりの状態です。余命幾ばくもないことを知っている。しかし、何とか生きたい。健康な体に戻りたい。氷坂歌音(かのん)は32歳のジンガメル症候群という記憶障害にかかった女性。直近から過去に向かって徐々に記憶が薄れ、脳内物質を体に送る機能が衰えて最後は死に至る病である。

歌音には4歳になる男の子がいて、彼女は記憶が薄れていく自分の代わりになって、息子の達也の母親となってくれる相手を探している。この二人が脳幹海馬移植に同意して、歌音の体に寒河江北斗の記憶が「上書き」される。歌音は膵臓がん末期の体にその記憶を移して、徐々に死に向かっていく過程を体験することになるが、それでもかまわない、息子のことが第一だと考えている。

なにがなんでも生きたいという北斗と、子供のために死に逝く体に閉じ込められても良いという歌音。58歳の男性の意識が32歳の女性の体に入るのだから、いろいろと波瀾万丈。

アイデンティティはどこに存在するのか。脳か体なのか。心とは、記憶とは何か。生きるとは何か、死とは。生きるに値することがあるのか。難しい問題を投げかけながらも、一気に読ませる作者の力量にも感歎します。


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