水素水ってなに?(1)

 

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ガラスの森美術館にて


水素水があいかわらずブームですね。アフィリエイト目的のサイトもたくさんあります。

水素サプリメント、還元水素水、電解水素水、水素風呂、マイナス水素イオン、プラズマ水素、水素吸蔵サンゴ、水素吸蔵ゼオライト、活性水素・・・。水素と名のつくたくさんの健康法が氾濫して、どれがどう違うのか、混乱しそうです。

がん患者の中でも関心が高いもののようです。それで、中心的と思われる

  1. 活性水素水(電解還元水):白畑實隆
  2. 水素水:大田成男 (こちら

について考えてみました。

「活性水素水」は、九州大学大学院農学研究院の白畑實隆教授が提唱しているもので、水の電気分解の際に金属から放出される電子によって、水素が金属粒子と結合したものを指しているようです。白畑實隆教授のサイトには

人体の約2/3は水であり、人が生きていくためには、毎日新鮮な水を飲む必要があります。水は食品と異なり、無理なく飲み続けることができます。体内の過剰の活性酸素を消去する能力や生体機能を調節する能力などを持つ「健康に良い水」を日常的に飲用することにより様々な疾病の予防及び改善が可能になると期待されています。

とし、水を電気分解したときに発生した水素が陰極表面に付着したものを「活性水素」と指す、と定義しています。

白畑教授とタイアップしている(株)日本トリムのサイトでは、

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電気分解の際にできた水素(H2)を含むアルカリ性の水を「電解水素水」と図のように説明しています。水を電気分解すると陰極側に水素が発生します。

陰極:2H2O + 2e → H2 + 2OH
陽極:H2O            → 1/2O2 + 2H+ + 2e

陰極表面に水素が付着した水が「電解水素水」と言われているようです。「活性水素」なる「単原子水素」が水中に存在している訳ではないのです。電解還元水についての明確な定義はないが、活性酸素除去効果をもつ還元水であるといっているのです。

水を電気分解すればあたりまえのように生じるものであり、ここまでは中学の理科程度の知識で理解できる、科学的にも正しいものです。

白畑教授らが「水素ラジカルの検出方法及び定量分析方法」(公開特許公報P2002-35420A)を申請しています。しかし、これは製造特許であって「電解水素水」の効果を実証するものではありません。日本トリムの整水器は医療用具製造承認を取得しており、『トリムイオンは「医療機器」なんだよ』と書かれていますが、正式名称を家庭用電解水生成器というこれには、効能、使用目的として厚生労働省告示第112号にて「胃腸症状改善のためのアルカリ性電解水の生成。一般家庭で使用すること」とあります。白畑教授はこれについて「胃腸症状改善、不定愁訴改善については二重盲検法で効果が確認されている」と述べています。確かにその通りですが、医療施設で使用されるものでもないし、それ以外の効用を証明するものでもありません。家庭用医療機器にはマッサージ器やコンドームなどが含まれているのであって、それと同じカテゴリーの機器だというだけのことです。

白畑教授は「水のこころ」というエッセイで次のように書いています。

 約15年ほど前に活性酸素する電解還元水の研究を始めた頃に注目したのは電解還元水の多量飲用によりがんが消失するという臨床報告でした。調べてみますと、確かに電解還元水により様々ながん細胞の増殖や転移・浸潤が抑制されることが分かりました。白血病の細胞を正常細胞に変化させる作用も見出されました。免疫系細胞を活性化して腫瘍免疫を増強する働きも認められました。
がんの抑制にもっとも有用なのは正常細胞には作用しないでガン細胞だけを殺す選択性です。モズク由来のフコイダンはガン細胞表面の糖鎖に変化を起こし、アポトーシスを誘導しますが、正常細胞の表面糖鎖には変化をおこしません。副作用のない還元水にも同様な効果が期待されます。

まぁ、期待するのは勝手として、科学的な裏付けがあるのかが問題でしょう。フコイダンを褒めちぎっているのを見ると、期待薄ですけど。

 エイズ(後天性免疫不全症)に関する研究で2006年にノーベル生理学・医学賞を受賞したLuc Montagnier博士は会議の中でエイズウイルスの感染に関係する短い配列の遺伝子DNAの作用によって創られた特有の構造の液晶水がエイズ感染を助長する電磁波を発信するという驚くべき発見について話をされました。水に「ありがとう」と声をかけると美しい結晶ができ、「ばかやろう」という声をかけるときたない結晶ができるという江本勝氏の研究結果がロシアの科学者らによって確認され、会議では水が人間の意識を反映するという江本氏の水の霊性に関する先駆的業績に対し深い敬意が寄せられました。
一方、液晶水は通常の水の中にも存在しており、電気分解で作成する高い還元エネルギーを持った電解還元水では液晶水の存在比率が高まっていると推測されています。正常細胞では秩序だった水の割合が約60%であるのに対し、ガン細胞では約20%であると言われています。電解還元水は液晶水の存在比率が低いガン細胞に作用して、細胞内の水をより秩序の高い水に変化させることによりガンの悪性の性質を抑制するのかもしれません。生命の源である水の驚くべき性質が次第に明らかにされつつあります。

近年、水がレーザー情報を発信する情報伝達物質として極めて重要な働きをしていることが明らかとなってきた。水・意識・脳機能との相関を明らかにすることで、水に意識エネルギーが宿るという現象を解明し、細胞・組織の統合的な働きを支えている意識(生命)エネルギーの存在を明らかにしていきたいと考えている。

一時流行した江本勝の「水からの伝言」を未だに信じているようですから、相当怪しげな教授には違いありません。「水が記憶する」と言ったら科学者としてはアウトでしょう。

がんに対して効果があるのでしょうか。白畑教授が日本農芸化学会誌に論文「還元水による動物細胞の機能制御と医療への応用」Vol.74(2000) No.9 P994-998 を発表している。

 一般にガン細胞は高い酸化ストレス状態にある.これは主としてミトコ血ドリアDNAの酸化損傷により,活性酸素の発生率が高まるという老化のミトコンドリア説によって説明できる.最近このガン細胞の高い酸化ストレスがガン形質(転移・浸潤,薬剤耐性,ガン遺伝子活性化,染色体の不安定化など)の維持に重要な役割を果たしているのではないかという仮説が提唱されている.
そこで,ガン細胞内部の活性酸素を還元水で消去すれば,ガン細胞のガン形質に何らかの変化をひき起こすことができるのではないかと考えられた.実際,ヒト肺ガン細胞株A549およびヒト子宮ガン細胞株HeLaを電解還元水を含む10%血清添加培地で培養したところ,細胞内H202が消去されるとともに,ガン細胞の増殖速度の低下が認められた.また,ガン細胞の悪性の性質である軟寒天培地中でのコロニー増殖能が還元水中で顕著に低下した.

とあるように、所詮試験管の中でがん細胞の増殖が抑制された(らしい)という程度の話です。発表は学会誌であり、厳正な査読のある権威ある雑誌というわけでもない。

活性酸素が有害であり、生活習慣病などの原因の一つであるという仮説は、概ね妥当なものとして多くの支持を受けている。しかしまだ研究が進められている分野の一つであり、今後の応用性が待たれるものにはちがいがない。 しかし電解還元水を飲むことによって活性酸素を除去する効果(抗酸化作用)があるとしても、水成分が通過する口腔、食道、胃腸などに限られるわけで、どのようにしてがん細胞の中やミトコンドリアにたどり着き、どのような機序で効果があるのかの説明はない。

最後にこちらの論文を紹介しておきます。要約の更に要約を挙げるとすれば、

  • ホシザキ社の三曹型電気分解装置を用いて食塩水を電解して得た陰極側の水
  • 日本トリムの「アイムファイン」
  • 新しい水の会より購入した「活性水素君」を脱イオン水で抽出して調整したミネラルスティック水
  • 日田天領水(日田天領水株式会社より購入)

を実験材料として選択し、生体物質の酸化反応阻害効果の確認、スーパーオキシドラジカル(O2?)と水酸ラジカル(・OH)の消去効能をESRにより測定などの実験を行った結果、

  • 4検水とも各反応系において、定量的に検出しうる抗酸化作用を示したが、その効果は100μMのカフェー酸またはビタミンCと比較して著しく弱く、また、経時的に減退する傾向もみられた。
  • 4検水とも、O2?に対しては一定の消去効果を示したが、・OHに対してはほとんど消去効果を示さなかった。

結論として

  • 4検水ともに、試験管内では一定の抗酸化作用があるが、ポリフェノール、ビタミンC、トコフェロールや、白畑グループが想定した「活性水素」のような強力な、「酸素ラジカルと直接反応して消去する」能力を持つ物質は存在していないと考えられる。
  • 電解還元水及びミネラルスティック水では、それぞれ、電気分解および金属マグネシウムの溶解によって生じた水素ガス(水素分子)が原因物質と考えられる。
  • 「アイムファイン」および日田天領水では、溶存している分子状水素に加えて、還元性ミネラルも抗酸化作用の発現に関与している可能性がある。
  • 起きている現象は、普通の分子状の水素および還元性カチオンの作用により説明可能であるので、「活性水素」を想定しなければならないような現象は起きていない。

つまり、抗酸化作用があっても微々たるもので、ビタミンCを飲んだ方がまだましで、その抗酸化作用にしても他のミネラルや分子状水素(H2)で説明可能であって、電解還元水だの活性水素水などを持ち出す必要もない。

活性酸素は必ずしも悪玉とは言えません。NK細胞、マクロファージなどの免疫細胞ががん細胞をやっつけるときには活性酸素を噴出します。活性酸素が十分になければ、私たちの免疫機能は正常に働かないのです。

抗酸化剤、ビタミンEとβカロチンの使用は、「心血管疾患とがんいずれの予防効果もなく、βカロチンは喫煙者の肺癌リスクを増加させた」という臨床試験の結果がありました。やたらと活性酸素を除去すべきではないのです。

ということで、私の判定は「エセ科学」です。


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