補完代替医療を考える(1)

がん細胞-電子顕微鏡でスキャン

補完代替医療は大きな関心事

がん患者にとって、補完代替療法は大きな関心事です。理由のひとつは、現在医学の標準治療では治らないがんも多いということです。膵臓がんはその典型です。

以前に比べて手術で治るがんが増えてきたとはいえ、再発・遠隔転移したがん、手術不能のがんでは抗がん剤・放射線治療は延命治療であり、完全治癒を目指すものではないことを、今では多くのがん患者が知るようになったからでしょう。

もうひとつには、治療を医者任せにするのではなく、自分にも何かができるはずだと考えるがん患者が増えてきたことです。その何かとは?自分にできることは?と考えていくと、自己免疫力を高めることしかないという結論に行き着き、自己免疫力を高める方法として何らかの代替療法を探すことになるのです。

自分の命は自分の管理下に置きたいというのは、人間として当然の要求だと思うのです。
しかし、いわゆる権威のあるサイト、信頼のおけるサイトというところには、自己免疫力を高めることの重要性を説いたものは少ない。

もっぱら悪徳がんビジネスが「自己免疫力」を宣伝の道具として使っているわけで、これらと一線を画したい「信頼のおけるサイト」では触れることが難しいこともあるのでしょう。また、自己免疫力に関してのエビデンスが乏しいのですから、エビデンスの明確でないことを公共的なサイトで紹介することには躊躇することも理解できます。

例えば、がん情報センターに「患者必携」というページと小冊子があります。

「患者必携 がんになったら手に取るガイド」

ここには「補完代替医療を考える」とのページはありますが、『がんの代替療法(民間療法)を使用するときには必ず担当医に相談し、自分にとって本当に必要なものか、慎重に検討しましょう。』と一般論は書かれています。

しかし、がん患者として何か積極的にできることはという疑問に対しては、ほとんど書かれていません。巷の怪しげなクリニックの見分け方も一般的です。公式なサイトだから特定の病院、クリニック名を出すことはできないのは理解でしますが、もう少し歯切れ良く説明をして欲しいものです。

米原万里の補完代替医療体験記

翻訳家の米原万里さんが、ご自身の体験を実名入りで本に書いています。

打ちのめされるようなすごい本 (文春文庫)

打ちのめされるようなすごい本 (文春文庫)

米原 万里
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卵巣がんで亡くなった米原万里さんのこの本には(本のタイトルも「すごい」ですが)、「癌治療本を我が身を以て検証」という章があります。週刊文春に亡くなった年の2006年に週刊文春に掲載されたものですが、ここに米原さんが実際に体験された代替療法について、詳しくかつ辛辣に書かれています。

金を返すからこう来なくていいと言われたのが2件、自分からもらった薬を段ボール箱に入れて送り返したり、まさに「お笑いがん治療」とでもいうべき内容です。爪をせっせともんだってがんが治るはずがないのに、米原さんでさえ騙されてしまうのですね。これから代替医療に命を賭けようかと考えているがん患者にとって、大いに役立つかもしれません。

以後の内容は米原万里さんの著作からの抜粋ですから、営業妨害、名誉毀損と訴えたい方がいたら、あの世の米原万里さんを告訴してください。

癌治療本を我が身を以て検証

癌治療に関する書籍を読みまくり、代替療法と呼ばれる実にさまざまな治療法に挑戦してきたのだ。身を以て、本が提案する治療法を検証してきたとも言える。結果的に抗癌剤治療を受けざるを得なくなったその経緯は、万が一、私に体力気力が戻ったなら、『お笑いガン治療』なる本にまとめてみたいと思うほどに悲喜劇に満ちていた。

活性化自己リンパ球療法

読み進む内に最も惹かれたのは、癌と闘う自分自身の免疫力を高める方法。中でも、免疫の主役である白血球中のリンパ球を、患者の血液から抽出し培養強化して患者の体内に戻す活性化自己リンパ球療法だった。手術、放射線、抗癌剤の三大療法に較べてはるかに身体に優しいのがいい。

星野泰三/水上治著『高速温熱リンパ球療法 ガン治療最後の切り札』(メタモル出版)が勧めるのは、活性化自己リンパ球療法と(癌が熱に弱く、リンパ球は高温で活性化するという特徴を生かした)温熱療法を組み合わせた魅力的な治療法なのだが、健康食品の宣伝販売に熱心すぎて金儲け一辺倒が透けて見える上に、成功例ばかりを列挙しているのが逆にひどく怪しく思えた。著者のもとで治療を受けていた従兄弟が亡くなったのを思い出し、好奇心もあって一応資料を取り寄せてみる。院長である著者の星野が背にするロココ風インテリアに思わず笑ってしまう。

活性化自己リンパ球療法を推奨する多数の本の中にあって、淡々とした叙述に終始する江川滉二著『がん治療 第四の選択肢』(河出書房新社)は、いかにも学究肌の真摯な探求心、癌患者の苦痛を少しでもやわらげたいという静かな情熱が伝わってきて胸を打つ。

癌の再発予防のために、著者が開設した瀬田クリニック系列の新横浜メディカルクリニックに通うことに決めた。培養されたリンパ球が最大値に達するのが採取後二週間ということで、二週間に一度通院して血液の採取と培養されたリンパ球の静脈への注入を行う。

一時期瀬田クリニックで修業をしていた医師から、実は患者の一〇%を医師が占めていると聞かされた。日本の人口比から考えると突出した数字。医師たち自身が、いかに三大療法を信用していないかを物語っていて可笑しい。

初日、「現在当院で治療中の患者の中で貴方が一番軽症ですね」と励まされる。本書の中でも、この療法は予防的に用いた方が効果的であるはずだと書かれていたのを思い出し、さらに心強くなる。

ところが、その日、瀬田から新横浜に出向いていた著者の江川滉二医師が、「できれば、開腹し転移の恐れがある卵巣残部、子官、腹腟内リンパ節、腹膜を全摘し抗癌剤治療を行った(J医大0医師の①バージョン)上で当治療を受けた方がいい」と述べたので、耳を疑った。①バージョンの苦痛と危険を避けたいがためにこの治療を受ける決心をしたというのに。これは、「第四の選択肢」では無かったのか。単なる三大療法を和らげ補佐する副次的療法に過ぎないのか。それにしては、高すぎるのではないか。

私の剣幕に驚いたのか、当面はこの治療法だけで大丈夫でしょうということになった。しかし、私の中で治療法に対する懸念と不安は膨らむ。それは、一年四カ月後の再発によって裏付けられた。少なくとも私には、当療法は予防的効果を全く発揮しなかったことになる。

再発が判明した時点で、J医大のO医師よりも熱心に手術を勧めたのは、新横浜メディカルクリニックのK院長だった。「さもないと三カ月以内に痛みが出てきて歩行困難になる」と脅しさえした。同院のウリである活性化自己リンパ球療法よりも三大療法に対する信頼の方がはるかに強いように見受けた。

サメ軟骨・フローエッセンスなど

お呪いのつもりで、友人の勧めるフローエッセンス(ネイティヴアメリカンに伝わる抗癌効果のあるとかいうハーブテイー)、サメ軟骨、それに『悪性ガンは腸から治せ!』(メタモル出版)が推奨する乳酸菌飲料を服用していた。いずれも藁をも掴みたい癌患者の弱みに付け込んで犯罪的に高価であったが、再発によって全く無効であることを確認できた。

近藤誠が前掲書で「一般に患者。家族は、いかがわしいものであればあるほど、大金を支払わされている」と述べているのは至言。

断食療法、食餌療法

まず注目したのが、二〇〇五年二月二四日号の読書日記で紹介した『ガンは恐くない』の森下敬一博士の治療法である。その論旨は以下の通り。

癌は酸毒化した血液の浄化装置であるから、癌をいくら叩き潰そうとしても、肝心の血液の浄化が行われなければ、再発は防げない。逆に血液が浄化されれば、癌は自然に消滅する。血液の酸毒化を抑制するには、食餌療法が最適である。

早速、森下敬一博士が主宰する、お茶の水クリニックに赴く。二月半ばの恐ろしく寒い朝。古いマンションのワンフロアー、廊下も部屋も高度成長期以前の小学校のように寒い。

血液酸毒化の要因の一つに冷えもあったはずなのに、と思う。予約を取るのも一苦労だったが、待合室は満席。芋を洗うような混み具合の中で、体脂肪率、肺活量、握力、骨密度、内臓、血圧、血液などの検査が行われる。これも、小学校の健康診断を紡彿とさせる。

検査結果をふまえての、森下博士の診察は午後になるので、近くにある、森下食餌療法に則った食堂で昼食をとる。酵素ジュース、豆入り玄米ご飯にごま塩をかけたもの、たくあん、干しぶどう、こんにゃくの白あえ、高野豆腐、お数入りのみそ汁。驚くほど少量。

これをすべて百回以上噛んで食べろと言う。唾液こそが最良の薬であり、食物に含まれる発癌物質も噛むことで消滅するのだ、と。しかし、鮨を百回も噛む気はしないなあと思う。

森下博士の診断。肝臓、腎臓、婦人科系の働きが落ちている。体脂肪率が高すぎるので三分の一に落とすように。 一日に一時間は汗を流し、一週間に一度は半日ほど山歩きをするように。癌は、食餌療法と吸玉療法を徹底してやれば、半年後には完治するだろう。その上で、強化食品なるものと薬草茶を数種処方された。一〇万円を軽くオーバー。

帰宅してから、近藤誠医師の至言「いかがわしいものであればあるほど、大金を支払わされている」を思い出し、購入したものを段ボールに詰めて返却した。ただし、森下式食餌療法と運動療法だけは取り入れることにした。

ハイパーサーミア(温熱療法)

さらに注目したのは、癌細胞が熱に弱いことを利用した温熱療法(ハイパーサーミア)。

このテーマで数冊目を通したが、菅原努/畑中正一著『がん・免疫と温熱療法』(岩波クティブ新書)が分かり易くコンパクトにまとまっている。患者が高熱を出すウィルスや細菌に感染した結果、癌が自然消滅した例はかなり昔から医師たちによって観察されて来た。

癌細胞が四二 ℃で死滅するので、体内に出来た癌細胞を選択的に四二~三 ℃に加熱する方法が世界各地で模索されるようになった。体内の患部に正確に熱が到達する電磁波の究明など、多くの難関を乗り越えて著者たちはついにサーモトロンという機材を開発する。

加熱は免疫力を高めるという副産物ももたらすというから、いいことずくめではないか。早速、日本ハイパーサーミア学会のHPにアクセスして、サーモトロンを導入している医療機関を検索する。

リストの中から横浜市立大学医学部附属市民総合医療センター放射線科に電話をすると、現在はやっていないとつれない返事。横浜市立市民病院放射線科に尋ねると、電話口に出た医師が懇切丁寧に説明してくれた。

温熱療法はあくまでも部分療法なので他に転移が無いことが確実な場合しか有効でなく、現在は抗癌剤や放射線療法の補助的手段でしかないと。神奈川県内には他に千代田クリニックという個人病院があり、HPを覗くと、ハイパーサーミアにより多数の成果を上げている旨謳っているので予約を入れた。

そこへ、文藝春秋の担当編集者Fから看過できない情報が入る。肺癌を病む作家のKが本書を読み、かなり期待を持って都立駒込病院を訪ねた。

応対したKという東大医学部出身の放射線診療科医が、「放射線と温熱療法の当初、併用で効果を高める治療を積極的に推進してきたものの、現在では、温熱療法は害が無いどころか転移の危険があり、自分も実際に転移で患者を失った苦い経験がある。今では全国の主要な病院ではほとんどやっておらず、効果があるとしているのは九州の産業医科大ぐらいだ」と言ったという内容を本書の著者である菅原医師に問い合わせると、同僚の近藤元治医師から次のような回答があった。

「K先生がそんなことを言っているとは夢にも思いませんでした。根拠は、温度が上昇すると癌組織の血流が増えるから癌細胞を血液でばらまくと言うものと推測しますが、学問的根拠に欠けています。貴女の心配は無用ですが、ハイパーサーミア学会でも取り上げ議論するよう取りはからいます」

学会の議論の動向など待っていられない身の私は、不安を抱えつつも千代田クリニックを訪問。外科医出身という院長にこの間の論議の内容を伝えると、「放射線科医というのは、診断は他科の医師が行うし、実際の施術は技師が行うものだから、暇すぎて理屈っぽくて過激になり易いのよ」と一笑に付した。

心電図や肺のX線検査をした上でサーモトロンを試す。ワンクール八回、保険が利くので、検査費含めて二万円強。治療時間は一時間弱。患部のある箇所の上下両面から液体の入ったマットを当て、これを徐々に温めていく。

二九℃で私は音を上げた。脂肪が熱によって捻転していく痛みに耐えられなくなったのだ。施術後、院長に、部分麻酔を使えないものだろうか、と尋ねると、にわかに顔を歪め、「貴女には向かない治療法だから、もう来るな。払った費用は全額返す」と言われてしまった。病院の事務方によると、患者に治療法について云々されることが我慢ならない性格で、こういうことは度々あるとのこと。

安保徹/福田稔の刺絡療法

当読書日記二〇〇三年一一月二七日号で紹介した『免疫革命』の著者安保徹の著書に目を通すと、『免疫学問答』(河出書房新社)にしても、『体温免疫力』(ナツメ社』にしても、『ガンは自分で治せる』マキノ出版)にしても、詐欺ではないかと思うほどにあまりにも内容に反復が多く、前作のコピーに少しだけ新味を加えるという造りだ。おそらく出版社が先に刊行された本と寸分違わぬ本を書いて欲しいという依頼の仕方をしているのではないか。

好意的に解釈すれば、文学者は同じことを語るのに毎回異なる表現を模索するのに対して、科学者は同じことは同じ表現でしか表現できないのかも知れない。藁をも掴む思いの癌患者に金と時間の空費を強いることになるのだから罪作りである。

ただ、癌の発生を免疫系の仕組みから解釈し、人間には癌を自力で治す力が秘められているとする安保理論そのものは魅力的なのだ。癌患者は例外なく免疫抑制状態にあり、それを解除するだけで癌は自然退縮に向かう。

ところが三大療法(手術、抗癌剤、放射線)はいずれも強烈に免疫を抑制するので一時的に癌を縮小できても新たな癌発生の条件を作っている。必要なのは、免疫力の向上。白血球中の顆粒球は交感神経の、リンパ球は副交感神経の支配下にあるので、癌と闘うリンパ球を増やすには、副交感神経が機能するリラックスした生活に転換すべく、①生活習慣を見直し、②癌に対する恐怖ストレスから解放され、③免疫を抑制する治療を受けず、④積極的に副交感神経を刺激する。④については、安保理論成立の切っ掛けとなった、福田稔医師の考案した爪もみ療法を紹介。

『奇跡が起こる爪もみ療法』(安保徹/福田稔監修 マキノ出版)は、両手の薬指を除く各指の爪の付け根をかなり強めに揉むことで、誰もがどこでもいつでも自分で副交感神経を刺激しリンパ球を増やすことができるとしていて、写真入りでやり方を説明している。当然、入浴中や電車での移動中など私はせっせと爪もみに勤しんだ。

ただ、これはあくまでも福田稔医師が考案した療法の簡易バージョンで、本格的な治療では、刺激箇所は爪の付け根以外の箇所にも及んでいるようで、いくつもの成功例が列挙されている。福田稔著『難病を治す驚異の刺絡療法』(マキノ出版)によると、治癒例は癌はおろか、パーキンソンなど多くの難病に及んでいる。

当然、直接福田稔医師の治療を受けたいと願うのだが、彼の本拠地は新潟。同じ療法を首都圏で実践している医院は無いものか、インターネットで検索したところ、刺絡療法(自律神経免疫療法)の聖地と呼ばれているらしいXクリニックを発見。

早速電話を入れるが、かなり混んでいて一月半後に予約が取れる状態。刺絡部門を担当する七名の医師の一人、Zが東京近郊に癌治療に特化したクリニックを開設しているのを知り連絡すると、予約が可能なのは一カ月後、毎年千人の患者を断るほどに盛況の模様。諦めていたら三時間後に先方から電話があり「今週中の都合のいい日にいらっしゃい」という有り難い提案。どうやらZ院長が、某新聞に連載していた拙エッセイの愛読者で特別に計らってくれたらしい。

この時点では物書きであることの幸運に感謝したものだが、その後、逆に不運だったのではと後悔することになる。

クリニックを訪れてまず見せられるのがビデオ。マクロファージが癌細胞を浸食していって最終的に滅ぼすさまが撮影されている。「肉体内の様子ですか、それとも実験室のビーカーの中での出来事ですか」と尋ねると、院長は「えっ」とそんな質問をされるのは初めてという反応。どこかに電話を入れて、「実験室です」との答え。「癌細胞はヒトのですか」と問うと、またしても「えっ」と発して「ヒトだと思うけどなあ」と言いながら電話をかけ、「ラットでした。ラットの癌細胞です」とのこと。

治療室に通されると、持参したMRIやCTの画像にざっと目を通した院長は、「貴方と同じように卵巣原発が鼠蹊部に転移した癌がここの療法を受けて消滅した例がある」と嬉しいことを言う。

「ただ一年後だったか、甲状腺のあたりに転移して新潟の方で放射線治療を受けたということだけど、その後どうなったのかなあ」とこちらの不安を煽るような不吉なことを平気で発する。

次に治療を始めるのかと思いきや、「僕は患者の話をじっくり聞く方針なんです」と切り出すと、待ちかまえていたように、自分を取材した雑誌記事をこちらに読ませたりしながら約一時間半にわたり持論を一方的に展開。安保徹先生は必ずノーベル賞を取るはずだとか、活性化自己リンパ球療法の某クリニックに勤めたことがあるが、安保徹の免疫論を与太話と馬鹿にされたので辞めたとか、そのクリニックは驚くほど患者の死亡率が高い、それは三大療法、特に抗癌剤治療を薦めているからだとか……。

説得力があったのは、活性化自己リンパ球療法では、リンパ球を体外に取り出して二週間後に体内に戻すので、その後そのリンパ球が体内で活力を保つのはせいぜい一、二週間程度、そこへいくと、刺絡療法では、体内にあるリンパ球を治療直後に増殖させるのでリンパ球の寿命が長い、しかも一回につき活性化自己リンパ球療法一回分と同じ程度に増殖させながら、料金は一万円未満というくだり。

「安保徹『免疫革命』はお読みになったと思うけど、『免疫革命 実践編』はまだでしょう」と院長。「そこにも書いてあるけれど、安保教授は『転移は癌が治るサイン』と述べているが、臨床現場でそんな例は希有です」と、安保理論で私がかなり期待した箇所をあっさり否定。

実際に治療に入る。治療前に採血。注射針で全身の治療ポイントを浅く刺して副交感神経を刺激していく。針の代わりに治療用に開発されたレーザーを使っても効果は同じとのこと。治療は週一回、四回目の治療直前に採血して、それまでの治療効果を見る。

『実践編』を早速購入。執筆者の一人が現在までに手元に集まったデータをもとに「リンパ球が二五%以上あって、リンパ球数が一三〇〇以上あれば、七〇%以上の人が快方に向かう」という手応えを得ていると言う。

最近の血液検査のデータを確認すると、私の場合、リンパ球の割合が三七・三%、数は二一六〇で、可能性のあるカテゴリーに入る。ところが、四回目の治療直前の採血結果では三二・三%と割合が落ちていて、しかも腫瘍マーカーは不気味に増え続けている。八回目の治療直前の採血結果では、三七・七%、二六五〇と持ち直しているが、五月の連体を挟んで二週間ほど治療を休んだ後のこと。

効果に疑問を持った私は、治療直後の検査を依頼した。すると、三四.一%、二三〇二とわずか三〇分以内にリンパ球が激減している。「私は幸運な七〇%以上の人々には入らないのでは」と問うと、「平均すると増えていくものなんだ」「平均と言っても私の場合はどうなんです」「科学は平均を基準に置くんだ」「医学は応用科学ですから、個別具体的な患者に合わせて適用されるのでは」「いちいちこちらの治療にいちゃもんをつける患者は初めてだ。治療費全額返すから、もう来るな」という展開になったのだった。こうして刺絡療法と共に爪もみ療法もただちに止めた。効く人もいるのだろうが、私には逆効果だった。

*****************ここまで********************************

何度読んでもおもしろい文章ですが、安保徹氏の「転移はがんが治るサイン」とか「将来のノーベル賞候補(亡くなったのでその可能性はゼロだが)」をいまだに信じている患者もいるから、粗雑本の刷り込みは恐ろしい。


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