アブラキサンが審議会で了承される
11月28日に開催された薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会において、アブラキサン点滴静注用100mg(大鵬薬品)に、治癒切除不能な膵癌への効能・効果を追加することが了承されました。あとは厚生労働大臣がハンコを押せば、年内には正式に承認されるものと思われます。
年内にも使えるようになって欲しいですね。多くの膵臓がん患者が待っています。
先日の記事でアブラキサンとパクリタキセルの比較試験はされたことがない、と書きましたが、その出典はNEJM誌2014年4月17日号に載った論文です。
Comparative Effectiveness Questions in Oncology
- ナブパクリタキセル(商品名アブラキサン;大鵬薬品)転移性膵臓がん
- テムシロリムス(商品名トーリセル;ファイザー)腎細胞がん
- エベロリムス(商品名アフィニトール;ノバルティスファーマ)転移性乳がん
- アビラテロン(商品名ザイティガ;ヤンセンファーマ、2014/7/4製造承認・薬価未収載)転移性前立腺
- レゴラフェニブ(商品名スチバーガ;バイエル薬品)ソラフェニブ転移性結腸直腸がん
など5つの抗がん剤が対象となっています。
わずか数ヶ月程度の延命効果しかないのに、高価な新薬を使うのはコスト的に問題だろう。しかも、同程度の効果があると見込まれる別の廉価な薬剤との比較試験は実施されていない(メーカーはやろうとしない)。
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新しい抗がん剤による1年間の治療費の平均は、今や10万米国ドルを超える。そして、これらの治療の多くのベネフィット―生存期間を週あるいは月単位で改善するというケースもしばしばである―はそれらの値段には見合わないように思える。
去勢抵抗性前立腺がんに対して開発された酢酸アビラテロンは、ステロイドから男性ホルモンであるテストテロンの生成過程で重要な役割をもつ酵素CYP17を阻害するが、その作用機序は、古い薬ケトコナゾールによく似ている。
承認の根拠となった第Ⅲ相試験でアビラテロンは生存期間の中央値を10.9か月から14.8か月に延ばしたが、しかし、その時、ケトナゾールはこのスタディの対照薬ではなかった。ケトコナゾールとアビラテロンの生物学的な違いはおそらく小さいが費用の違いは大きい。
アビラテロンのケトコナゾールとの比較臨床試験を実施することが必要である。
アビラテロンのメーカーは自社の市場シェアを減らすことにつながるだろうこのような試験に対して、資金を出すことも他の誰かによるそのような試験にアビラテロンを無料で提供することも同様に望まないだろう。つまり試験実施のためには第三者が両剤を購入する必要が出てくるのだ。
ではそのコストはどれほどだろうか。驚きの答えは約7千万米国ドルだ。
アブラキサンとパクリタキセルの比較臨床試験は、3770万米国ドルあれば実施できる。
いくつかの利害関係者(NCIのがん治療評価プログラム、大規模な腫瘍学会等のグループ、支払者のグループなど)が共同すればこれらの費用(2500万~6900万米国ドル)を生み出すことは可能だし、新薬メーカーにとっても、新薬を比較臨床試験に無料提供することはメリットにつながると著者らは主張する。それは中立的機関によって元化合物(対照薬)との直接比較臨床試験により真に有効であるということが示されれば、ベストな治療をしたいと願う腫瘍医達の使用欲求を導くはずだからだ。