膵臓癌の術後生存期間、GEMよりもTS-1が優位

膵臓がんの術後補助化学治療としてゲムシタビン(GEM、ジェムザール)とTS-1の比較を、日本全国の33施設でおこなった第Ⅲ相試験の中間解析結果がニュースで流れています。

日経メディカルオンラインの「膵臓癌の術後生存期間がTS-1で改善」が、もっとも詳細に述べられています。

予後が悪い癌の筆頭である膵臓癌の生存期間が手術後の補助化学療法で改善することが、日本全国の33医療機関が参加した第3相試験の結果、明らかになった。この試験の名称は「JASPAC 01」。

日本では現在、進行再発・手術不能膵臓癌にはゲムシタビン(GEM)とTS-1が使用されるが、その延命効果は同等であることが証明されている。GEMとTS-1はともに、癌細胞のDNA合成を阻害することによって、効果を発揮する抗癌剤だ。

今回報告されたJASPAC 01試験は、手術で切除可能と診断されたI期~III期の膵臓癌患者385人を手術後に、既存の標準治療薬であるゲムシタビン(注射薬)を投与する群(GEM群)、TS-1(経口薬)を投与する群(TS-1群)の2群に割り付け、全生存期間、2年生存率、無再発生存期間を比較するというもの。

症例の登録は2007年4月から2010年6月までの3年3カ月にわたって実施された。2012年7月までの追跡データに基づいて中間解析を行った結果、第三者評価機関である「効果・安全性評価委員会」から中間解析の結果を早期に報告するように勧告され、今回の発表となった。

その結果、全生存期間はTS-1がGEMより優れていることが統計学的に証明され、ハザード比は0.56(95%信頼区間:0.42-0.74)だった。2年生存率は、GEM群の53%に対して、TS-1群は70%。また無増悪生存期間(中央値)はGEM群の11.2カ月に対してTS-1群は23.2カ月でハザード比は0.56(95%信頼区間:0.43-0.71)であった。

膵臓がんの術後補助化学療法においてGEMが標準治療となったのは、ASCO 2008におけるCONKO-001の最終報告で、手術単独群よりもGEM6ヶ月投与した群の方が全生存期間を有意に延長したというものでした。このブログではこちらこちらに紹介。

それ以後、いろいろの抗がん剤の試験が行なわれましたが、GEM以上の成績を出すことはできなかったのです。

このJASPAC 01試験については、Sho先生のブログで、「膵癌術後補助化学療法の転機?」と題して、昨年の9月時点ですでに感想を述べられています。(情報が早いですね!)

Sho先生が、早速このニュースを受けて「膵癌術後補助化学療法の転機?(2)」を書かれています。

大鵬薬品:膵がん切除例を対象としたTS-1臨床試験(JASPAC 01)に関するお知らせ

ASCO2011のGEST試験では、「進行膵癌にゲムシタビンとS-1の併用療法はゲムシタビン単剤をOSで上回れず、S-1はファーストラインで利用可」として、TS-1の非劣性が証明されていたのです。今回の試験は術後補助化学療法においても「非劣性」を証明する目的で行なわれたようです。しかし予想に反して(思いがけなくも)期待以上の結果が出たというわけです。今回は、より詳細なデータを付けてマスコミに向けて中間発表を行なったものです。

ASCOの結果とあわせれば、膵臓がんの術後補助化学療法では、

手術単独 < GEM < TS-1

となります。今後はTS-1が標準となるのではないでしょうか。2年生存率で単純にみれば、GEMでなくTS-1を投与していたならば、13%の患者が生存できたということになります。5年生存率はどのくらいになるのでしょうか。CONKO-001の結果では、GEMで15%程度ですから、20%以上あるいは30%にまでなってくれると良いですね。

(メディアによっては「S-1」と書いている場合もありますが、正確には「TS-1」です。「T」は大鵬薬品のT。最初の商品名は「S-1」であったものを、商標登録の問題でTS-1とした)

TS-1の開発者である白坂哲彦氏のインタビューなどが載っています。


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膵臓癌の術後生存期間、GEMよりもTS-1が優位” に対して1件のコメントがあります。

  1. ゲムシタビンとS-1を比較すると,効果にそれほど大きな違いはなく,毒性もほぼ同等だそうです。
     ただ,毒性の現れ方に違いがあり,ゲムシタビンは主に血液毒性が、S-1は消化器毒性が報告されているとのことです。
     したがって,毒性を考慮すると,下痢や食欲不振などの消化器症状の強い症例ではゲムシタビンを選択した方がよく,白血球や血小板が低い症例や感染症の心配がある症例ではS-1を選択した方が良いということが言えます。
     この,ゲムシタビン,S-1,2剤併用療法はそれぞぞれ,メリットとデメリットがあるようで,患者の状態によって使いわけが大切ということになるため,今後も研究が必要だと考えます。

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