膵臓がんのペプチドワクチン「エルパモチド」の第三相臨床試験で有意差が出なかったことで、急速に期待感がしぼんでしまったがんペプチドワクチン。最近はその情報にもあまり接することがなくなっている。プレジデントOnLlineに『がんワクチンは個別型から汎用型へ』と題した記事が載り、最近の事情を紹介している。
がんワクチンは個別型から汎用型へ。決定版は「再生医療」か
現在でも、膵臓がんのワクチンは国内で2つ(OCV-C01とOCV-101)が、海外(ノルウェー)でTelovocの臨床試験が進んでいる。このうちOCV-C01とTelovocは第三相試験である。エルパモチドも胆道がんの臨床試験が進行中である。

オンコセラピー社はエルパモチドと新たに開発したがん特有抗原「オンコアンチゲン」など複数の成分をブレンドした「カクテルワクチン」の臨床試験を進めている。膵臓がんを対象とした「OCV-C01」は第III相試験が進行中。昨年の中間解析では大きな副作用は認められず、安全性が確認されている。あとは朗報を待つばかりだ。
私としては、京都大学再生医科学研究所の河本教授らの、iPS細胞から大量の元気なT細胞を誘導するという研究に注目している。
理研、iPS細胞技術で同じがん抗原のT細胞を大量に分化誘導することに成功
免疫クリニックが自由診療で行っている、リンパ球を体外で増殖させる「活性化自己リンパ球療法」や樹状細胞に自身のがん細胞を体外で取り込ませる「樹状細胞療法」などがあるが、これらは科学的に効果があると証明されているものではない。
卵巣癌で亡くなった米原万里さんの『打ちのめされるようなすごい本 (文春文庫)
』には「癌治療本を我が身を以て検証」という章があり、「活性化自己リンパ球療法」の体験談を辛らつに書いている。治療費は高いけどこの程度の効果である。担当した医師がリンパ球療法よりも手術を薦めるのは、ある意味では良心的とも言えるし、自信のなさの表れとも言えようか。
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