マインドフルネス瞑想

「ガンなどの重い病気に、瞑想が直接的影響を及ぼすかのように言う者もいるが、そうした主張を裏づける科学的根拠はない」と、サイモン・シンは『代替医療のトリック』(文庫版では『代替医療解剖 (新潮文庫)
』)で述べている。これはたぶん正しいだろう。一方で、ストレスががんに大きな影響を与えるということには、多くの科学的根拠があり、シュレベールも『がんに効く生活―克服した医師の自分でできる「統合医療」』で強調している。

超越瞑想は、精神的・身体的ストレスを低減するという点で多くの研究論文が公表されており、がん患者に対しては生活の質(QOL)の改善に有効であるとされている。釈迦の教えにヒントを得た認知療法であるマインドフルネス瞑想は、初期乳がん患者のストレスを低減し、免疫機能、生活の質(QOL)の改善をもたらしたという報告もある。

つまり、ストレスががんを育てるという仮説が正しければ、瞑想によってがんを育てない、あるいは育てることを遅らせるというメリットを享受することが可能になるかもしれない。”科学的根拠はない”と言ったサイモン・シンも同じ本でプラシーボ効果の重要性を認めているのであり、つまりは心と身体はつながっている、自己治癒力は心の有り様と関係していると認めているのである。科学的に実証されていないということは、必ずしもあなたに効果がないということではない。

しかし、そのこと(がんが治る)だけを強く意識するのは逆効果である。ジョン・カバットジンは『マインドフルネスストレス低減法』で次のように注意を喚起している。

「自分のストレスをコントロールし、病気と闘うために免疫システムを向上させたい」という期待をもって、多くの癌やエイズの患者たちが瞑想を始めようとしています。

しかし、私たちは、「瞑想で自分の免疫システムを強化できる」という強い期待をもつことは、実際には自分のもっている癒やしの力を十分に引き出すう
えでの障害になる、と考えています。なぜならば瞑想は、ゴールをめざすものではないからです。あまりにも期待感や目的意識が強すぎると、瞑想の精神が損な
われ、効果どころか逆に障害になってしまうのです。瞑想の本質は”何もしない”ということです。何もしないで、あるがままに受け入れ、解き放つことによっ
て、”全体性”を体験するのです。そして、これが治癒力の基礎となるわけです。

瞑想をしていると、あらゆる雑念がわいてくる。「私はどうなるのだろう」とか、「がんは治るのだろうか」とかの疑問や迷いが生じる。そうした思いが生じたときには、「そう思っている自分がいる」ことを離れた位置から確かめるようにして、その思いを解き放つ。また別の思いが浮かんでくる。それに気づいて、再び解き放つ。その繰り返しが瞑想である。何もしない、何も期待しないのである。

~1日10分で自分を浄化する方法~マインドフルネス瞑想入門

~1日10分で自分を浄化する方法~マインドフルネス瞑想入門

吉田 昌生
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カバットジンの著作は良書である。『4枚組のCDで実践する マインドフルネス瞑想ガイド』と併用すれば、自分でマインドフルネス瞑想を実行することができる。2冊では6500円にもなるので気軽に購入するのを躊躇するかもしれない。手軽にはじめてみたいと考えるのなら、吉田昌生氏の『~1日10分で自分を浄化する方法~マインドフルネス瞑想入門
』がお勧めである。

吉田氏のナレーションも心を落ち着かせる気持ちの良いものであり、70分のCDには、

  1. 準備
  2. 基本姿勢
  3. 呼吸法
  4. マインドフルネス瞑想
  5. 歩く瞑想
  6. 食べる瞑想
  7. 感情を感じる
  8. 呼吸に集中する
  9. 何もしない
  10. 感謝の瞑想
  11. 慈悲の瞑想
  12. ハミング瞑想
  13. ボディスキャン
  14. 全身で呼吸する
  15. 観察瞑想

が収められている。

がんの治療に期待したほどの効果がないとき、否定的な考えでいっぱいになるかもしれない。そうしたとき「否定的に考えている自分がいる」と気づき、絶望に巻き込まれないようにする。瞑想はそうした感じ方を育んでくれる。

精神科医で、ナチスの強制収容所から奇跡的に生還したヴィクトール・フランクルは『夜と霧』のなかで、

強制収容所において人々の生死を分けたのは、多くの場合、ものごとへの対処の仕方を決めるのは自分だということを自覚しているかどうか、その苦しみの中に生きる意味をみつけられるかどうかであった。

人間だれしもアウシュビッツ(苦しみ)をもっている。あなたが人生に絶望しても、人生はあなたに絶望しない。あなたを待っている「誰か」や「何か」がある限り、あなたは生き延びることができるし、自己実現できる。

と述べている。


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