今日の一冊(77)『免疫栄養ケトン食で がんに勝つレシピ』
旧『すい臓がんカフェ』(現在は『膵臓がん患者と家族の集い』)でも何人かの方から質問されましたが、ケトン食に挑戦しているがん患者も多いことと思います。
ケトン食については、古川 健司さんの著作『ケトン食ががんを消す』がベストセラーになっています。
ケトン食=スーパー糖質制限食ですが、私自身はずっと糖質制限を続けてきました。その経験からも、私がもし再発・転移してしまった場合には、低用量抗がん剤治療とケトン食を試すことになろうと思います。(どちらもエビデンスはないが、さりとて再発した膵癌に対しては一切のエビデンスはありませんので)
まだ症例研究の段階ですので、過大な期待は禁物ですが、希望の持てる治療法だと受け止めています。しかし、患者が個人で行うには敷居が高いですね。(セミナーがある)
さまざまな代替療法を、根拠を示して紹介しているのも特徴です。
- 「免疫栄養ケトン食」は短期決戦。3ヶ月以上続けてはいけない
- EPAには、がん細胞が増殖するために、自ら血管を増やす「血管新生」を抑える働きがあり、転移を起こしにくくしたり、がん細胞のアポトーシス(自然死)を誘導したりする効果があることも確認されました。
ようするに、EPAには、がん細胞の炎症反応(CRP値)を抑制し、悪液質を改善させる力があるだけでなく、がんの進行をブロックする働きもある。- 体内の深部にあるすい臓のがんは、固い繊維芽細胞で覆われており、これによってがん細胞への抗がん剤や免疫細胞の侵入がブロックされたりするのです。すい臓がんの治療が難しいとされる理由です。
しかし、この繊維芽細胞の質を変えることで、すい臓がんと言えども、抗がん剤や免疫細胞の侵入をスムーズにすることが可能になります。たとえば、ハイパーサーミア(局所温熱療法。後述)には、すい臓がん細胞周辺の繊維芽細胞同士の結合を緩めて隙間を生じさせる働きがあります。- ゲルソン療法(その亜流が済陽高穂らの食事療法)に限って言えば、抗がん剤がまだ開発されていない戦前に産声を上げたものです。
- ニンジンニュースは糖質が多く含まれている。ケトン食とは真逆です。(ニンジンジュースとケトン食を併用するのは愚かな試みですね)
- 現在のゲルソン療法でも、抗がん剤治療後のすい臓がんの患者さんには、ゲルソン療法そのものを中止しています。
(私も何度も記事で注意しているが、いまだに済陽式を信じている患者がいる)- がんができたら肉を食いなさい。
- ビタミンDは一日5000IU以上が必要。
- 私の患者の中には、TS-1との併用ですい臓がんの進行がほぼストップしている患者が数人います。
- 牛蒡子のサプリメントとリポトール(スタチン製剤)を勧めた余命1ヶ月と宣告されたすい臓がん患者では、腹水が消え、2年経った現在でも元気です
のようなことが書かれています。
話しが脱線しますが、一日にニンジンを3本以上摂ると、βカロチンを取り過ぎて、肺がんのリスクが高くなります。がん情報サービスには、
1980年代に入って開始された、βーカロテンによるがんの化学予防の効果を検証する無作為化比較試験については、これまでに少なくとも4つの結果が示されています。いずれも2?3万人を対象とし、5?10年に及ぶ研究が行われました(表2) 。まず中国で行われた試験で、β-カロテン、セレニウム、ビタミンE投与群で、胃がんリスクが21%低くなりました。しかし、それ以外は期待していた結果が得られず、逆に高用量のβ-カロテン(20?30mg)を投与した喫煙者で、肺がんリスクが20?30%高くなることが明らかになりました。
と書かれています。ニンジン3本で20mg以上のβカロテンを含むのですから、済陽高穂のニンジンジュース療法は危険でしょう。それにニンジンには糖質が多く含まれているので、インスリンの少ない膵臓がん患者には逆効果です。
さて、本題です。
今回古川さんの監修により、麻生れいみさんが『免疫栄養ケトン食で がんに勝つレシピ』を上梓されました。
【内容紹介】
ガン細胞の主な栄養源は、炭水化物から合成されるブドウ糖。
「炭水化物摂取→ガン細胞の増加」という流れを断ち切るためには、ブドウ糖に代わるエネルギー「ケトン体」を体内で産生し、がんに負けない体をつくる必要がある。
数多くのヒット作を持ち、自身の経験を基にした糖質オフレシピの第一人者である著者が、臨床の現場で数多くの成果を上げ、学会からも注目を浴びているがん治療のエキスパートとタッグを組んだ、がん治療サポートのためのレシピ集。
「ケトン体」を効果的に産生でき、家庭でも手軽に再現でき、さらにおいしいレシピを60品紹介。
食の楽しみをあきらめないで、がんに負けない体を作る!
ケトン食に関心がある方には気になる一冊でしょう。