ゲノム・シークエンス―世界の趨勢に遅れている


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先の記事「プレシジョン・メディシンのまとめ」の続きです。

前回の記事を書いたあと、遺伝子解析に関して調べてみたが、どうにも納得できない点がいくつかある。

全ゲノムを鑑査しても10万円

ひとつには、遺伝子解析の費用の問題。SCRUM-Japanでは患者の自己負担はないが、他の北海道大学病院や京都大学病院の場合、検査費用が50万円~100万円以上となっている。

イルミナ社の最新式次世代シーケンサーを使えば、全ゲノムシークエンスでも10万円以下である。

遺伝子検査には、大きく分けて

  1. パネルシークエンス(特定の遺伝子を検査)
  2. 全エキソンシークエンス(タンパク質のコーディング領域(エキソン領域)を網羅的にシーケンス・変異解析を行う)
  3. 全ゲノムシークエンス

とあるが、国立がん研究センターなどが進めているのは1.のパネルシークエンスであり、せいぜい数百の遺伝子異常を見つけられるだけである。

厚生労働省では、国内の医療従事者や研究者による「がんゲノム医療推進コンソーシアム懇談会」を立ち上げ、がんゲノム情報を用いて、医薬品の適応拡大やがんの診断・治療、新薬の研究開発など、より有効・安全な個別化医療の提供体制(がんゲノム医療推進コンソーシアム)の構築を目指すとしています。

計画では、100種類以上の遺伝子変異を一度に調べられる検査機器を、優先的に薬事承認して開発を後押しし、医療現場での検査を早期に可能にする。

また、がんゲノム医療推進コンソーシアムでは、

  • 「遺伝子パネル検査(がん等に関する遺伝子を複数同時に測定する検査)」を早期に承認し、一定の要件を満たす医療機関において保険診療として実施すること
  • 保険外併用療養を活用した全ゲノム解析を実施すること

とされ、全ゲノム解析は費用がかかるから、当面はパネル検査で行こうということらしい。しかし、全エキソンシークエンスでも1人6万円くらい(市販価格は10倍としても60万円)で解析できると言われているから、

NCCオンコパネルは、国立がん研究センターが中心となり開発された遺伝子診断パネルであり、日本人に特徴的な遺伝子変異を適切に診断できるように作られている。 (国立がん研究センタープレスリリースより)

よりは優位なはずである。

北海道大学病院や京都大学病院の「オンコプライム」も、

OncoPrime(オンコプライム)では200を超えるがん関連遺伝子で起こっている遺伝子変異を一度に調べる事ができます。(京都大学医学部付属病院のサイトから)

と、200程度の遺伝子を検査できるだけです。これでは半分以上の遺伝子異常を見逃してしまう恐れがある。

世界の趨勢に遅れている日本の遺伝子解析

世界は「全ゲノムシークエンス」に舵を切っているのに、日本はガラパゴス化して、全エキソンシークエンスにも及ばないパネルシークエンスに固執しているのか、不可解である。

GI-screenの検体はアメリカに送って、

胃がんや大腸がんのような罹患率の高いがんでも複数の標的分子により1-5%の頻度の小集団に細分化され、希少がんのような小集団となりつつあります。このような背景のなか、がん患者さんに最適な治療薬をいち早く届けるためには、標的分子を正確かつ迅速に同定することです。そのためには標的分子を包括的に同定するマルチプレックス診断薬開発が必要となります。

解析手法としては、米Thermo Fisher Scientific社の次世代シーケンサーをベースとするマルチプレックス診断法「Oncomine Cancer Research Panel(OCP)」を採用する。

とのことだ。マルチプレックス診断とは、1サイクルのアッセイ(検定)手順の間に複数の被検体を解析できるのだが、効率は良いが特定の遺伝子のみの検査には変わりない。

素人考えで間違っているかもしれないが、どうも世界の趨勢に遅れているようで気に掛かる。

【追記】

私の素人考えが間違っていなかったようです。中村祐輔先生が「全エキソン解析でも10万円」とブログに書かれています。

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全ゲノム約30億塩基対(細胞の中は、両親それぞれ1ゲノム分ずつの60億塩基対)を調べる場合、少なくとも30億塩基の30倍量程度(おおよそ900億塩基)のシークエンス情報が必要だ。900億は100万の90,000倍なので、シークエンスだけのコストは900ドル、約100,000円となる。エキソンはゲノムの約1.5%なので、単純に考えると1,500円となる。ただし、がん組織の全エキソンシークエンスをする時は少なくとも100倍量くらいのデータを得たほうがいいが、それでも5,000円となる。

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ゲノム・シークエンス―世界の趨勢に遅れている” に対して1件のコメントがあります。

  1. キノシタ より:

    しまうまねっと受付係さん。
    この分野は専門用語も分かりづらく、私もまだ一知半解の状態ですが、今後はますます重要な治療法になりますね。
    勉強、勉強。
    『すい臓がんカフェ』を通じて相談を受けたNETの方は、しまうまネット、しまうまサークルを紹介するようにしていますよ。よろしくお願いいたします。

  2. しまうまねっと受付係 より:

    前回のゲノムシークエンスのまとめ記事
    わかりやすかったです。
    私は参加しませんでしたが、しまうまサークル@関西の
    2016年秋の勉強会での報告に興味深い記述があります。
    http://shimaumacircle.com/katsudo/pdf/19_houkoku.pdf
    4つの進行中の試験の内、一番成果を出せたものに
    なるという部分です。
    期間も設定されているようなので、今年度末くらいなのでしょうか?
    患者個人の利益につながるまでには、時間がかかりそうですが
    これからは理解していかなくてはならない分野のようで
    難解なことです!!

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