なぜ抗がん剤の耐性がつくのか

抗がん剤を使い始めた当初は、腫瘍も小さくなり、マーカーも下がってくるので、もしかするとこのままがんが消えてくれるのでは、と期待します。しかし、ある程度経つと効果がなくなります。

「耐性が付いた」と言われますが、それは実際にはどのようなことなのでしょうか。

耐性:疾病の治療に用いられる医薬品などを反復して投与するうちに、投与されたヒトや動物が抵抗性を獲得して効力が低下していく現象のこと。

抗がん剤耐性が付く原因として、

  1. 患者個人に起因するもの。体内で不活性化する、排泄される、抗がん剤が腫瘍に到達しない。
  2. がん細胞のDNAが変化して、抗がん剤に抵抗性を示す。抵抗性のあるがん細胞が残る。

等が考えられます。

2.の原因として、多剤耐性のメカニズムが研究されてきました。簡単にいえば、がん細胞の細胞膜に”ポンプ作用”を持つタンパク質ができて、がん細胞内に入ってきた抗がん剤をことごとく排出するのです。

このタンパク質が「P-糖タンパク質」といわれるものです。

P-糖タンパク質は細胞膜上にあり、抗がん剤の細胞外排出などに寄与する。(Wikipediaより)

抗がん剤投与を続けていると、がん細胞の遺伝子が変化して、MDR1、λKA2.6遺伝子が活性化して、細胞膜上に大量のP-糖タンパク質によるポンプができるという仕組みです。

P-糖タンパク質は主に固形がんの細胞表面に発現します。

P-糖タンパク質が発現している臓器(未治療)としては、肝臓(胆道細管表面)、結腸(円柱上皮管腔表面)、膵臓(小膵管管腔表面)などとされています。

多くの抗がん剤が効きにくい固形がんでは、もともと未治療でも高い確率でP-糖タンパク質が発現しているのです。

がん細胞に直接抗がん剤を届けるという、DDS(ドラッグ・デリバリー・システム)が研究されていますが、届いた抗がん剤が、P-糖タンパク質のポンプで排出されてしまえば効果は期待できないですね。

P-糖タンパク質による耐性の克服も研究されているようです。カルシウム拮抗薬による耐性の克服は、臨床試験も行われており、動物実験のレベルでは克服作用が確認されています。

P-糖タンパク質はATP加水分解のエネルギーをタンパク質分子の構造変化に変換し、それとカップリングすることによって薬剤を細胞の中から外へ排出するタンパク質である。MDR1遺伝子にコードされたP-糖タンパク質はがん細胞に発現し、多くの抗がん剤を細胞外へ排出することにより、がん細胞を薬剤耐性にし、抗がん剤を効かなくする。 ゾスキダルはこのP-糖タンパク質を阻害することにより、癌細胞の薬剤耐性をなくし、抗がん剤を効くようにする。

P-糖タンパク質の作用を阻害するゾスキダルが、急性骨髄性白血病患者を対象にしてアメリカで治験が行われました。結果は、P値=0.617と、統計的有意差を出すことができなかったようです。

日本における治験情報を調べましたが、残念ながら該当するものはありませんでした。

膵臓がん患者にとっては、使える抗がん剤が次々となくなることが、不安の種です。海外で未承認の抗がん剤を使えるようにすることも切望されますが、ゾスキダルのような薬剤の研究が進んで臨床で使えるようになれば、一つの抗がん剤をより長く使えるわけで、国内外での研究が待たれます。


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