ホメオパシーとアンドルー・ワイル

朝日新聞でホメオパシー関連の記事やブログが連続しています。このブログでも話題になる前からホメオパシーへの批判を書いてきたのですが、実際これほどまでに世間に広まっているとは思っていませんでした。がん患者のなかでもレメディーを投与されている方が多いようです。

  • 記者ブログ 第4弾 「赤ちゃんは治療法を選べない」(岡崎明子)(2010/8/12)
  • 代替療法ホメオパシー利用者、複数死亡例 通常医療拒む(2010/8/11)
  • 記者ブログ 第3弾 続々「ホメオパシー療法 信じる前に疑いを」(長野剛)(2010/8/8)
  • ビタミンK2投与を 周産期・新生児医学会が緊急声明(2010/8/6)
  • 記者ブログ 第2弾 続「ホメオパシー療法 信じる前に疑いを」(長野剛)(2010/8/5)
  • 5600万円の賠償求める 山口地裁 ホメオパシー絡みトラブル(2010/8/5)
  • 記者ブログ 「ホメオパシー療法 信じる前に疑いを」(長野剛)(2010/8/3)
  • 問われる真偽 ホメオパシー療法(2010/8/3)

朝日新聞は、関連企業である朝日カルチャーセンターにおいて由井寅子氏を講師とした教室を開いているのですね。ホメオパシー・ジャパンのwebでは朝日カルチャーセンターでの講座の開設情報がアップされています。また、帯津三敬塾クリニック院長の板村論子氏の講演が新宿の教室で開催されたりしています。帯津三敬病院のHPでも頻繁にホメオパシーの講演が予定されているようです。最近の一連の新聞記事は賞賛に値しますが、一方で別の法人格であるとはいえ、朝日の名を冠した企業でホメオパシーを宣伝し、本家の新聞ではそれを叩くというのはいかがなものでしょう。

人はなぜ治るのか―現代医学と代替医学にみる治癒と健康のメカニズム帯津系のホメオパシーは、現代医療の受診拒否までは要求していないようですが、がん患者にホメオパシーを浸透させる上では大きな役割を果たしていると思われます。アンドルー・ワイルもホメオパシーに関して多くの書籍で述べていますが、帯津良一先生とは考え方が違うようです。ワイルは『人はなぜ治るのか―現代医学と代替医学にみる治癒と健康のメカニズム』でホメオパシーについて詳細に書いています。

ワイル自身がホメオパシーによる「不可解な治験例」を経験しています。1980年にカリフォルニア州バークレー市(先日処分したタンノイのスピーカーがBerkeleyだった。関係ないけど)に出張していたワイルが、突然わけの分からない痛みに襲われます。その痛みが時間をおいて何度も繰り返し襲ってきます。現代医療での検診の結果は、胃潰瘍または食道痙攣とのことであり、バリウムによるエックス線検査を勧められるが、検査は受けずに友人のホメオパシー医の診断を受け、硫黄を希釈したレメディーを処方されます。それ以後痛みは再発することなく過ぎている。こうした体験を持つワイルはまた、実際にホメオパシーで治った(と思われる)多数の例も知っている。しかし、だからホメオパシーは効くのだ短絡的に結果を出すわけではない。ホメオパシーがなぜ効くのか、三つの仮説を立てる。①たいがいの患者はいずれ治るものだから効いたように見えるだけである。AとBが連続して起きたとき、人はAがBの原因だと考えたがる。②ホメオパシーはプラシーボ効果を誘発することによって効くのである。しかし、プラシーボ効果と治療の直接的効果は、たとえ二重盲検法を採用しても完全に分離することは不可能である。③アボガドロ数の限界を超えるために、振盪することで試薬の記憶が水に刷り込まれるとする。しかし、科学的に納得させることは難しいだろう。

ワイルはむしろ、ホメオパシーがなぜ効くのかという問いのなかには、健康とは何か?病気とは何か?治癒とはなにか?治療とは?治療と治癒の関係は?というすべてのテーマが含まれているからだというのです。

ホメオパシーが人気になるのは、現代医療の側にも大きな責任があると思います。「今使われている一切の薬剤を海底に沈めることができたら、人類のためには最善の、魚にとっては最悪の結果になるだろう」とオリバー・ウェルデン・ホームズが言い、「医師は自分でもよくわからない薬を、さらにわからない病気の治療のために、まったくわからない人間に浴びるほど服ませている」とヴォルテールが言うように、あるいは乳がんの手術ではハルステッド法による拡大手術が永年標準的に行なわれてきたが、効果に差がないことが明らかになって今では縮小手術が多くなってきているように、現代医療の”やり過ぎ”が人々の不安を助長しているのです。

「もう治療法はありません」と言われた末期がん患者や、「再発予防のために、生活上で気をつけるようなことは何もありません」といわれた患者が、現代医療を投げ捨てないかぎりにおいてホメオパシーを試してみることにたいして、私は反対するものではありません。「絶対に効果のある治療法もなければ、絶対に効果のない治療法もない」からです。プラシーボ効果であれなんであれ、患者にとっては治ればなんだって良いのです。とはいっても、私には、似非治療だと確信しているホメオパシーによってプラシーボ効果がおこるはずもないから試してみようという気にはなりません。

しかし、医師がホメオパシー治療をすることには反対です。その医師がホメオパシーは効くものだと考えているとしたら、彼の医学を行なおうとする者としての科学的思考法に問題があるだろうし、プラシーボ効果だと考えていてなお処方するのなら、それは患者を騙すことによってしか効果を上げることができないということであり、患者と医師の信頼関係を破壊するだろうからです。ホメオパシーに心底傾倒している医者から処方してもらうのも怖い。こうした医師なら「抗がん剤はダメ、手術もしてはいけない。レメディーの効果がなくなる」と言うだろうから。

治ることに希望を持つことは大切なことです。しかし、得てして「希望」は「執着」になってしまう。ホメオパシーにかぎらず、あれこれの代替医療をとっかえひっかえ試している人は、「執着」になっていないか、一度自分の心を覗いてみてはみてはどうだろう。「執着」のあるところに「自発的治癒」は起きないだろうと思うからです。


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