世界初、がん患者のせん妄ガイドライン
世界初のがん患者を対象としたせん妄ガイドライン
日本サイコオンコロジー学会が編集出版した「がん患者における せん妄ガイドライン 2019年版」がPDFで読めるようになりました。
日本サイコオンコロジー学会の会員が中心となり,
がん患者のせん妄に関する先行知見を可能な限り実証的なエビデンスに基づき,そして臨床に即した形でまとめました。加えて,がん患者のせん妄に関しては,治療に関する良質なエビデンスが不十分であるのみならず,その背景知
識の流布も不十分であることから,重要な知識的な事項についてのエキスパート・コンセンサスも含めながら,少しでもわが国のがん医療の現状に即した形で先生方の診療に役立つよう腐心しながら作成しました。
せん妄に関する指針などはいくつかありますが、がん患者に特化したものは国内外でも初めてということです。
医療者向けですが、巻末の「患者・家族へのせん妄説明パンフレット」なども参考になるでしょう。
がんで入院した患者の17%、高齢進行がん患者の40%がせん妄を経験
このガイドラインの作成委員でもある名古屋市立大学大学院准教授の奥山徹氏によれば、名古屋市立大学病院に入院した高齢進行がん患者(65歳以上でPS2(パフォーマンスステイタス;日中の50%以上をベッドで過ごす)以上、化学療法以外での入院)73人を調べた研究では、約40%の患者にせん妄が出現したという。終末期にはせん妄になりやすく、海外の研究では、入院がん患者のせん妄の割合は17%だった一方で、死亡6時間前には88%だったと報告されている(下図)。
患者、家族はもとより、医師でさえも、がん患者のせん妄にどのように対処したらよいのかさえ知らない人が多いので、せん妄を見逃されることもあります。