ビタミンC
Linuxの開発者リーナル・トーバルズは、彼の父親がライナス・ポーリングの信奉者だったことから命名されたそうです。ポーリングは個人で二つのノーベル賞(化学賞、平和賞)を受けた数少ない人物です。後年、ビタミンCの超高用量療法を提唱し、一部の専門家からは似非療法と非難されました。
- 1968年、サイエンス誌(PMID 5641253)に「分子矯正精神医学」と題した簡単な論文を書き、1970年代に流行し物議を醸したビタミン大量療法運動の原理を与えた。
- 1970年、イギリスの癌外科医ユアン・キャメロンと長期間の臨床協力を開始し、末期癌患者の治療にビタミンCを点滴及び経口投与した。
- Moertelらが無作為化試験、プラセボ対照試験を3回に渡り行ったが全て失敗し、超高用量のビタミンCの投与が癌の患者に効果があるという証明は得られなかった。
- 2006年、高用量ビタミンCの効能に関する新事実がカナダの研究グループによって提示された。同グループは、高用量ビタミンCを点滴投与した3人の患者が予想よりも長く生存していたことを確認した。
- 高用量ビタミンCの点滴投与は患者に重要な毒性を与えることが分かっており、腎不全や下痢などの副作用は十分に立証されている。
- ビタミンCの癌細胞への選択毒性も、2005年に in vitro (ペトリ皿を使用した細胞培養)で実証され、米国科学アカデミー紀要に報告されている。
以上はWikipediaからの抜粋ですが、ビタミンCの一定の効用は見直されているようですね。
『笑いと治癒力』のノーマン・カズンズも膠原病の治療に「笑い」と、実に1日25gというビタミンCの大用量静脈点滴を行ったのでした。ポーリングがビタミンCに関する最初の論文「ビタミンCと通常の風邪」を発表した1970年の6年も前の1964年でした。
カズンズは後に「私の回復のどこまでがビタミンCの点滴によるもので、どこまでが笑いとか、生への意欲の強さとかいうような健全な情緒の総動員によるものか、それを判断することは不可能であった」「自分で投与したプラシーボが効いたのかもしれないという可能性を認めておいた」と述べています。
ポーリングの結論はキャメロン博士との共同研究によるものですが、キャメロン博士自身は、ビタミンCががんを治すとは言っていないのです。ビタミンCががん患者の生存期間を月単位で延ばしはするが、がんの病勢を逆転させることはないことを示していたのです。しかし、ビタミンCにはがんの進行を遅らせる効果があると信じていたのです。
『がんの統合医療』ではビタミン Cに関して次のように述べています。
- ビタミンC欠乏症は、多くのがん患者に通常認められるが、それが正常に復した患者においては、予後や症状が改善されるというエピデンスがいくつか示されている
- ビタミンCはがんに対する宿主耐性に関与していること、がん患者では枯渇がよくみられることから、がん治療において重要な役割を担うと考えられている。ビタミンCの補充で、免疫機能の刺激、がん細胞が産生するヒアルリニダーゼによる細胞間基質の加水分解への耐性の増強、ホルモン産生の安定化、ストレスからの下垂体一副腎系の保護といった作用を介し、がんに対する宿主耐性が増強される可能性が示されている
- これまでの慎重に行われた進行がん患者を対象とした経口投与によるビタミンC療法のランダム化比較試験では、治療効果の証明には至らなかったが、高濃度ビタミンC点滴療法が効果的である可能性を支持するエビデンスが、最近、実験室レベルの研究結果から得られている。高濃度ビタミンCは、正常細胞と比較して鉄分濃度の高いがん細胞を標的にしており、鉄分濃度が高いがん組織ではビタミンCを酸化促進剤(pro-oxidant)に変換する可能性もいわれている。その酸化促進剤は、がん細胞の死を誘導することができる。
- Couterら(2006)は、ビタミンEとビタミンCについて、がんの予防、新たな腫瘍の発生、そして死亡率に関して解析した。有意な結果が認められたのは、ビタミンCを他のビタミン類と一緒に用いた膀胱癌の再発(BCGに加えて)に関する研究、ピタミンEをn-3系脂肪酸と一緒に進行がんに対して用いた研究、そしてビタミンCが前立腺癌の新たな腫瘍の発生を減らすが、死亡率には関係しなかったとする研究だけであった。
しかし、著者らは「実験デザインをできるだけ単純化させる目的で一つの栄養素か抗酸化物質のみを使用することは、一般的なサプリメント使用法とはいえず、また現代の施術者たちは、統合的介入だとは考えないであろう。1つの栄養素からなるサプリメントだけを実際に摂取している患者もいるが、そうしたサプリメントの摂取の仕方は非生産的であると助言をすべきである」と、エビデンスの解釈の難しさを強調している。
さて、私がビタミン Cの錠剤を1日1000mg経口摂取している理由は、経口摂取ていどの用量ではがんに対する効果はほとんど期待できないが、がん患者はビタミン不足になりがちであり、特にビタミン Cは体内で生産できないので、野菜や果物から取る必要がある。しかし、食事からだけでは十分ではないことが多い。ビタミン Cは摂りすぎ分は体外に排出されるから、正しく摂れば害はない。
「普通の食事をしていれば、マルチビタミンなどのサプリメントは必要ない」とのガイドラインもあるが、「普通の」とか「平均的な」には注意が必要だ。加工食品やコンビニ、郊外レストランなどでの外食が多い状態で、「平均的」で必要な微量栄養素が足りているとはとても思えないからだ。特に私のように血糖値管理で糖質を制限していればなおさら食事が偏ってしまう。
単独摂取では効果が証明されていなくても、他の栄養素、ビタミンとの併用ではどこうか、こちらもほとんど研究されることもないし、もちろんエビデンスもない。ビタミンCに対して、ビタミンD、メラトニン、葉酸はまだしもましなエビデンスがあるようだ。
ビタミン Cはバイオフラボノイドといっしょに摂るとより吸収されやすい。