過剰なビタミンCはがんを育てる

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がん患者で高濃度ビタミンC注射をしている方は多いですが、逆にがん細胞を育てる可能性もあるよという記事です。ノーベル賞を二度受賞したライナス・ポーリングの業績は偉大ですが、ポーリングが主張した「ビタミンCががんに効く」は、すでに否定された仮説です。

その顛末は、Wikipediaの「ライナス・ポーリング」の項に詳細に書かれています。晩節を汚した例として。

なぜ、われわれはがんに勝てないのか?

日経メディカルに、デイビッド・B・エイガス氏の「なぜ、我々はがんに勝てないのか?」の記事が載っています。第1回目は「私たちがん研究者は、間違っていました」。

2009年、デンバーで開催された米国がん学会の会議で、私は数千人の医師や研究者を前にして、「私たちは、間違っていました」とはっきり言った。「細部に気を取られ、限られたテーマばかり追ううちに、私も含め、がんの研究者は皆、道を間違えてしまったのです。一歩下がって、否、2万5000フィートの高度から、この病気を眺めてみましょう」と私は続け、さらにその部屋の空気を乱す言葉を発した。

「がんをコントロールするのに、がんを理解する必要はありません」と。

ジエンド・オブ・イルネス病気にならない生き方これだけでも刺激的ですが、デイビッド・B・エイガスの著作『ジエンド・オブ・イルネス 病気にならない生き方』は更に刺激的でした。初版が出て1年もしないうちに改訂版が出て50万部のベストセラーとなり、ニューヨークタイムズなどが絶賛しています。邦訳版もときを措かずに出版されました。

主な内容は、

  • 今のがん治療は間違った方向に進んでいる
  • サプリメントはあなたの体を弱くする
  • がん細胞はビタミンCが大好き
  • タンパク質検査は医学に革命を起こす
  • 遺伝子検査で病気のリスクを知ろう
  • 生鮮野菜は思ったほど新鮮ではない
  • 運動はエピジェネティックに遺伝子を変える
  • 腸が喜べば体全体が健康になる
  • 高齢者でも運動により抗加齢遺伝子が発現する

著者は、マルチビタミンやビタミンDは摂る必要もないし、摂るできではないとする一方で、アスピリンとスタチンは積極的に摂るように薦めている。

そのために、多くの批判や、製薬会社の回し者ではないかという、あからさまな中傷も受けたという。しかし、全体を見るとごく常識的で真っ当なことを書いているように思える。新鮮な野菜や果物、魚類を食べなさい。定期的な運動を欠かさないようにしなさい。規則正しい生活をして必要な睡眠を取りなさい。必要な栄養素はサプリメントからではなく食事から充分に取れているから、金を払ってまで小さいとはいえリスクのあるものを服用する必要はない。

米国対がん協会のガイドライン『がんになってからの食事と運動』に書かれている内容とほとんど変わらないことを主張している。

人間もがんも複雑系システム

人間の身体は複雑なシステム(複雑系)であるであるから、ある現象には有効であると思われる介入であっても、それが他の部分に悪い影響を与えるということは、頻繁に観察される。人間の身体は恒常性(ホメオスタシス)を保とうとする高機能なシステムである。

ビタミンDを例にホメオスタシスを細胞レベルで見れば、細胞の表面にあるビタミンDの受容体は、周囲にあるビタミンDの濃度の応じて受容体の数を変化させる。必要な量を過不足なく摂るようにできているのであるから、大量のビタミンDを服用したからといって、それが細胞に取り込まれるわけではない。むしろ有害になる。

心に留めておきたいのは、サプリメントでビタミンDを補給した場合に、体のネットワークにどのような影響があるのかは分かっていないということだ。過剰なビタミンDが、受容体と、恒常性を保とうとする体のフィードバック機構をどう変化させのか、答えは出ていない。

科学的な裏付けでこうした主張を展開する内容には説得力がある。

「がんをコントロールするのに、がんを理解する必要なありません」とは、がんは身体のシステムが壊れた状態、細胞内あるいは細胞間の対話がうまくいかない結果であるのだから、複雑な身体をコントロールする方法を見つけることができたなら、がんへの恐怖を追い払うことができるだろう、ということだ。

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がんの特効薬はプロテオミクス技術で

それにはプロテオミクス技術が期待されている。DNAをシーケンス解析したようにタンパク質を解析する方法が進歩すれば、「がんの特効薬」が見つかるはずだという。そうあって欲しいものだと思うが、数十年先の話だろう。

ビタミンCはがん細胞を育てる

ビタミンCに関しても多くを記述しているが、がん患者にとって気になる点だけを転載しておく。

ビタミンCはがん予防には役立つが、がんを発症した人にとっては天敵となる。腫瘍はビタミンCが大好物なので、がんを抱えている時にビタミンCを過剰摂取すると、がんと戦うどころか、がんに餌を与えることになりかねないのだ。1990年後半、デビット・ゴールドのチームは、がん細胞がビタミンCをむさぼり食うことを発見した。ビタミンCは、がんの薬になるにせよ、餌になるにせよ、ブドウ糖が細胞内に入り込むのと同じ経路を通っていく。がん細胞は、急速に増殖するので大量のエネルギーを必要とし、ゆえに、正常細胞より多くのブドウ糖とビタミンCを取り込む。

よく知られるように、がん細胞の周囲の組織は炎症を起こしている。がんの増殖スピードが速く、血液と酸素がそちらに奪われるため、周囲の細胞が死んでいくのだ。この死んだ細胞が炎症を引き起こす。がん細胞の周辺では、この炎症のせいで、血液中のビタミンC (アスコルビン酸)は酸化し、デヒドロアスコルビン酸になり、がん細胞の内部に入り込む。その後、アスコルビン酸に戻って、がん細胞が増殖するために使われる。また、がん治療(放射線治療と化学療法)では一般に、酸化を促進してがん細胞を殺そうとするが、ビタミンCは「抗酸化物質」なので、それを妨害する。

済陽高穂の『今あるがんに勝つジュース』などは、がんを育てる方法を教えているのかもしれない。治ることを期待して飲んでいるのに、がんを育てているとなると、悔やんでも悔やみきれないだろう。

「健康になるのに、正しい答えはない。むしろ正しい答えはいくつもある」という著者は、自分自身のメトリクス(測定基準)に従って、自分の健康と対処法を決定するべきだと強調している。

私は高濃度ビタミンC注射を一概に否定するつもりはない。「効果が実感できるのなら、ビタミンC注射を続ければ良いでしょう」と考えている。判断するのはあなたです。


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