米国対がん協会『がんになってからの食事と運動』
2012年、米国対がん協会の最新ガイドラインが発表され、その翻訳『「がん」になってからの食事と運動―米国対がん協会の最新ガイドライン』が6月に出版されています。「がんになり、初期の治療が一段落した後、どんな食事や生活をすればよいか。がん体験者と家族の方々がかならず直面するこの問題について、最新の科学的根拠に基づくアドバイスを提供する」ことを目的にしています。
- 現時点で、がんの再発率や生存率を改善することが科学的に充分確認されている食事療法はありません。「科学的に充分確認されている」とは、複数の臨床試験の評価で有効性が確認されているという意味です。
- 一方で、最近の10年間の研究の特徴として、運動ががん体験者の死亡率を改善する可能性を示すデータが増えています。ただしこれも「追跡調査(前向きコホート研究)」がほとんどであり、食事療法と同じように、運動が死亡率を改善する効果が科学的に充分確認されているわけではありません。しかし、運動は概ね安全で、生活の質を高めることに加えて、がん以外の病気の予防になることははっきりと分かっている。そのため、運動を「標準的がん治療」の一部に取り入れることは理に適っている。
としたうえで、非常にシンプルなガイドラインを提唱しています。
がん生存者の栄養と運動に関する米国対がん協会のガイドライン(2012年第4版)
健康的な体重を維持しましょう。
- もし過体重や肥満の場合は、高カロリーの食物や飲料を制限し、減量するための運動量を増やしましょう。
定期的に運動しましょう。
- 運動不足を避け、診断後もなるべく早く通常の日常生活に戻るようにしましょう。
- 1週間に150分以上運動することを目標にしましょう。
- 1週間のうち2日以上は筋力トレーニングを運動に含めましょう。
野菜、果物、全粒穀物が多い食事パターンにしましょう。
- 「がん予防のための栄養と運動に関する米国対がん協会ガイドライン」に従いましょう。
がん予防のための栄養と運動に関する米国対がん協会ガイドラインの概要(2012年)
生涯を通じて、健康体重を達成し維持しましょう。
- 生涯を通じて、やせにならない範囲で、できるだけ体重を減らしましょう。
- すべての年代で、過剰な体重増加を避けましょう。過体重や肥満の人にとって、すこしの体重減少であっても健康に有益であり、よい出発点となります。
- 健康体重を維持する手がかりとして、定期的に運動し、高カロリーの食物や飲み物の摂取を制限しましょう。
運動をしましょう。
- 成人:1週間に中等度の運動を150分間、または、強度の運動を75分間(または両者の組み合わせ)を、できれば1週間を通して偏らないように行いましょう。
- 小児と青少年:毎日、中等度または強度の運動を1時間以上行い、強度の運動を1週間に3日以上行いましょう。
- 椅子に座る、寝転ぶ、テレビを観る、映画やコンピュータなどの画面を見る娯楽などの、非活動的な行動を少なくしましょう。
- 普段の運動量が高くても低くても、普段以上の運動を行うことで、多くの健康上の利益が期待できます。
植物性の食物に重点を置いた、健康的な食事を摂りましょう。
- 食物と飲み物を選ぶ際には、健康体重を達成し維持するのに役立つだけの量にしましょう。
- 加工肉や赤肉の摂取を少なくしましょう。
- 毎日2.5盛り以上の野菜と2.5盛り以上の果物を食べましょう。
- 精製穀物製品の代わりに全粒穀物を選びましょう。
※1盛り:1/2カップの調理野菜、1/2カップの細切れ果物、1/4カップのドライフルーツ、1個の新鮮な果物(中程度のリンゴ、バナナ、オレンジ)、1カップの緑の葉の生野菜。1カップは250ml。
飲酒する場合は、量を制限しましょう。
- 女性は1日1ドリンク、男性は1日2ドリンクを限度としましょう。
ついでに関連する世界がん研究基金の指針を。
世界がん研究基金と米国がん研究機関のがん予防指針(2007年)
- やせ(BMI18.5未満)にならない範囲で、できるだけ体重を減らす。
- 毎日30分以上の運動をする(早歩きのような中等度の運動)。
- 高カロリーの食品を控え目にし、糖分を加えた飲料を避ける(ファストフードやソフトドリンクなど)。
- いろいろな野菜、果物、全粒穀類、豆類を食べる(野菜と果物は1日400g以上)。
- 肉類(牛・豚・羊等。鶏肉は除く)を控え目にし、加工肉(ハム・ベーコン・ソーセージ等)を避ける(肉類は週500g未満)。
- アルコール飲料を飲むなら、男性は1日2ドリンク、女性は1ドリンクまでにする(1ドリンクはアルコール10~15gに相当)。
- 塩分の多い食品を控え目にする。
- がん予防の目的でサプリメントを使わない。
- 生後6か月までは母乳のみで育てるようにする(母親の乳がん予防と小児の肥満予防)。
- 治療後のがん体験者は、がん予防のための上記の推奨にならう。
私の考え方はブログに書いてきた通りだが、次回にまとめるかも。