統計的有意差だけに拘る医療はもう止めませんか

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エビデンス(科学的な根拠)がなければ医療ではない、人体実験だ、がん拠点病院での自費による免疫療法はけしからん、てな議論?が盛んです。
(「じひ」を変換したら「慈悲」と誤変換された。これ、誤変換と言うより患者のことを思っての「慈悲」かも。)

エビデンスだけでがん治療ができるのか

このブログでも『エビデンスだけでがん治療ができるのか?(4)』で紹介している米国統計学会の2016年3月声明です。

また、こうした“P値信仰”ともいうべき風潮に関して、米国統計学会は2016年3月に声明を発表しました。「Statisticians issue warning over misuse of P values」(Nature. 2016;531:151.)この中で、「科学的な結論、ならびにビジネスや政策上の判断は、P値が特定の閾値を超えるかどうかだけに基づいてなされてはならない」とはっきりと述べられています。

三好立医師が、昨日のブログ『p値 <0.05』で書いていて、この声明の日本語関連記事をリンクされています。

「p値や有意性に拘り過ぎるな、p < 0.05かどうかが全てを決める時代はもう終わらせよう」というアメリカ統計学会の声明

米国統計学会の声明:「p値や有意性にこだわり過ぎるな、p<0.05かどうかがすべてを決める時代はもう終わらせよう」

  1. p値は「そのデータがある特定の統計モデルとどれくらい適合しないか」を示し得る
  2. p値は「その仮説が真である確率」は与えないし「ランダムな偶然だけからそのデータが得られる確率」も与えない
  3. 科学的結論及びビジネス・政策上の意思決定は「p値がある特定の閾値を切ったかどうか」だけに拠るべきではない
  4. 適切な推論は完全な(データ及びモデルに関する)レポーティングと透明性を要するべきである
  5. 単一のp値もしくは統計的有意性はその結果の効果や重要性の大きさを測るものではない
  6. p値そのものだけではモデルや仮説に関するエビデンス(科学的な根拠)の良い指標たり得ない

2や5、6は、多くのエビデンス(科学的な根拠)至上主義者が勘違いしている部分ですね。

統計的有意差がないことは、効果がないことではない

また、有名な医学誌『New England Journal of Medicine』(NEJM)も特別論文で、ずっと昔から同じことを注意喚起しているのです。

統計的有意差がない(P>0.05)ことは、効果がないことにはなりません。P値だけに関心が向いていると、いわゆるβエラー(第二種の過誤:本当は差があるのに、ないとする誤り。ぼんやりエラー)に陥ることもあります。

P値と統計的有意差があるなしだけを判断の基準とすることに対して、世界的権威のある医学誌が論文で注意を促しているのです。1978年New England Journal of Medicine (NEJM)に特別論文が掲載され、統計的な有意差がないために「Negative」とされた71編の臨床試験の結果のうち、点推定値と区間推定値で示すと、実は「Positive」な影響があったと思えるものが多数あることが分かったとし、βエラーを考慮することの重要性を強調しています。

エビデンス(科学的な根拠)だけでは現場の医療は回らないし、救えるはずの命も救えません。ガイドラインに従うだけの医療なら、将来的にはAIに任せた方が上手くやるだろうから、医者の存在価値はなくなります。

もちろん、エビデンス(科学的な根拠)なんかなくって良いというのではなく、少なくとも反証可能な手段での症例発表ぐらいはすべきです。


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