期待のがん光免疫療法とは?


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光免疫療法は「免疫療法」なのか

光免疫療法は主な使い方では「免疫」でがん細胞を攻撃するわけではありません。 光免疫療法は、がん細胞に集まる抗体にIR700という色素を結合させて、その後、近赤外線を照射してIR700を発熱させることで、がんを狙い撃ちにするという治療法です。正常細胞にはダメージを与えず、がん細胞を速やかに死滅させることができます。

ではなぜ「光『免疫』療法」と呼ばれるのか。その理由を解説する論文が2016年に発表されています。抗体と抗原が結びつくことによって抗体抗原反応(免疫反応)が起きますが、光免疫療法では抗体抗原反応はがん細胞の破壊には関わっていません。ですから、オプジーボなどの免疫チェックポイント阻害薬や、NK細胞療法などの免疫細胞療法とは、その仕組みが根本的に違います。

鍵は「免疫原性細胞死」(免疫を誘導する細胞死)と呼ばれる細胞の死に方にあります。

免疫原性細胞死とは?

小林久隆氏が「ナノ・ダイナマイト」と命名したIR700付抗体に近赤外線を照射すると、がん細胞は内容物を噴出しながら壊れます。

すると、近くにいる免疫の司令塔「樹状細胞」には「がん細胞が死んだ」というシグナルが届いて、眠っていた樹状細胞が目ざめます。目ざめた樹状細胞は、受け取ったシグナルを使って、がん細胞を攻撃するリンパ球の一つであるT細胞にがん細胞の見分け方を教育します。しっかりと教育を受けたT細胞は分裂を始め、ナノ・ダイナマイトでも破壊されないで残ったがん細胞に対しても攻撃を始める。こうして免疫の仕組みが働き始めるのです。

これが「免疫原性細胞死」です。

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遠隔転移したがん細胞を攻撃する仕組み

さらに、光をあてた場所のがんだけではなく、遠隔転移したがんも消える手法を開発中である。

がん細胞は、免疫系の攻撃からわが身を守るために、がん組織の周囲に制御性T細胞を取りこんでいる。制御性T細胞は本来、過剰な免疫応答を制御するブレーキ役であり、免疫の恒常性に必要なものであるが、がんはこれを利用して、免疫系から身を守るための「門番役」としている。

制御性T細胞の表面にあるCD25抗原とくっつく抗体をIR700に結合して静脈注射し、がんのある場所に近赤外線を照射したところ、マウスの全身のがんが消えた。

がん細胞に結合する抗体を使っていないのにがんが消えた仕組みは、近赤外線を照射した数時間後には、制御性T細胞が押さえ込んでいたT細胞とNK細胞が目覚めてがん細胞への攻撃を始めたのである。

一部のメディアでは「光免疫療法は自分の免疫を活かす治療ではない」と書かれていますが、異常に見てきたように、それは光免疫療法を正しく理解していないと言わざるを得ません。

光免疫療法のイメージ

NIH(アメリカ国立衛生研究所)が公開している動画をもとにして、光免疫療法のイメージを紹介します。

  1. 抗体にIR700を結合させる
  2. それを患者の静脈に注射する(点滴)
  3. 薬剤は血管を通して腫瘍に集まってくる
  4. 腫瘍の周囲の血管から抗体が滲みだして・・・
  5. がん細胞表面の抗原に、IR700を結合させた抗体がくっつく
  6. そこに近赤外線を当てると、IR700は熱を帯びて化学反応により不溶性となり・・・
  7. 抗体が丸まって収縮を始める。細胞膜に力が加わってたくさんの小さな穴が開き、細胞内に周囲から水が入ってくる。
  8. がん細胞内の圧力が高まって破裂し、内部の物質をばらまく。
  9. がん細胞は死んでいき、がん細胞がなくなる。
  10. 周囲の血管や正常細胞は影響を受けないので、免疫が保たれている。

開発スケジュール

1月16日、米国アスピリアン・セラピューティクス社がプレスリリースを出しています。

和文抄訳から主な内容をピックアップしました。

「RM-1929」が、FDA より再発性頭頸部扁平上皮がんの一次化学療法と二次化学療法 のい ずれにおいても効果が現れなかった患者を対象とした治療法として、ファストトラック指 定を受ける

米国食品医薬品局(FDA)により、局所再発性頭頸部扁平上皮がんに対し、一次化 学療法、二次化学療法のいずれにおいても効果が現れなかった患者に向けた治療法として、フ ァストトラック指定を受けたことをお知らせいたします。 アスピリアンの会長である三木谷 浩史は、次のように述べています。「アスピリアンが、現 状に変革を起こすイノベーションをもたらし始めていることを、大変嬉しく思っています。ア スピリアンはイノベーションを通じ、人々ががんを克服して生きること (Conquering Cancer, for Life) を実現できるような世界を目指しています。無謀な挑戦だと思う方もいらっしゃるか もしれませんが、私たちはその最終目標に向けて力を尽くしていきます」

2018 年の第 1 四半期中に「RM-1929」のピボタル試験を開始予定

現 在、FDA の連邦規則集 Volume 7, Title 21 の Subpart E「Accelerated Approval of Biological Products for Serious or Life-Threatening Illnesses」に基づく迅速な承認に向けた戦略を含め、 ピボタル試験のデザインについても討議を実施しております。アスピリアンは、FDA からのフ ィードバックを踏まえ、「RM-1929」を再発性頭頸部扁平上皮がんに対するグローバル試験開 始を 2018 年の第 1 四半期中に予定しています。

アスピリアンのチーフ・メディカル・オフィサーのメリル・ビール博士は、次のようにコメ ントしています。「一次化学療法、二次化学療法を試みても効果が現れなかった局所再発性頭 頸部扁平上皮がん患者に対する First-in-class のターゲット治療法として、FDA が「RM-1929」 をファストトラック指定としたことをとても嬉しく思います。ファストトラック指定は、大き なアンメット・メディカル・ニーズに対処する「RM-1929」の潜在的な可能性を認めたものと 言えます。第 II 相臨床試験の中間結果は、現在承認されている標準治療の過去の臨床試験デー タと比較して、臨床的意義のある評価項目である全奏効率、無増悪生存率、全生存率において 効果があることを示しています。

「RM-1929」の日本における第 I 相臨床試験を開始

日本における「RM-1929」の臨床開発の前進を図るため、アスピリアンは独立行政法人医薬 品医療機器総合機構(PMDA)へ治験計画届を提出し、再発性頭頸部扁平上皮がんの日本人患 者に対する第 I 相臨床試験に着手しました。

RM-1929 について

セツキシマブ(アービタックス)と IRDye 700DX®の複合体である「RM-1929」は、頭頸部扁平上皮、食道、肺、 結腸、膵臓などのがんにおいて多種の固形腫瘍で発現する上皮成長因子受容体(EGFR)を標的にします。この最先端治療法は抗体コンジュゲートを用いて、正確にがん細胞を攻撃しま す。抗体が腫瘍に結合した後、結合色素は赤色光に反応し、迅速な抗腫瘍効果を誘発します。 腫瘍選択性と局所的活性化による二重の特異性には、周囲の正常な細胞や組織へのダメージを 最小限に留め、局所的腫瘍を制御することを、がん患者と医師は期待することができます。

IRDye 700DX

(株)エムエフテクノシステムズ社の近赤外線色素

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