光免疫療法ー楽天の挑戦
楽天が本格的にがん事業に参入
光免疫療法は、開発者のアメリカ国立がん研究所(NCI)・国立衛生研究所(NIH)主任研究員の小林久隆氏は、論文などで「近赤外線免疫療法」と言ってきたのだが、先日の「がん撲滅サミット」に登壇した際に、「光免疫療法という呼び方が一般的になってきたので、私もこれで良いかなと、今後はこれにします」と語っていた。なので、このサイトでも今後は「光免疫療法」で統一する。
楽天が本格的にがん事業に参入し、「光免疫療法」の商業化を進めている米ベンチャー企業、アスピリアン・セラピューティクス(カリフォルニア州)に2割超出資して持ち分法適用会社とする。電子商取引(EC)会員の健康データと組み合わせた医療サービスを検討し、新たな収益源に育てる予定だという。
光免疫療法の治験はアメリカで進んでいて、頭頸部がんを対象とした第1相試験では、腫瘍が30%以上小さくなる奏功率が全ての患者に見られたという。3割の患者では腫瘍が消失した完全奏功を得ることができた。第2相試験も進んでいて、さらに良い成績が期待できるという。
三木谷会長は、末期の膵臓がんで父親を亡くしている。これが画期的ながん治療法への道を選ぶ契機になったのだが、もちろんそれだけではない。
今後老人人口が増える日本で、成長が見込める分野とみて出資し、日本での事業化をめざす。設立済みの日本法人は、商用化に向け100人規模の体制にし、大学などとの共同研究も推進する。主力の「楽天市場」での商品・サービスや個人会員の健康状態といったビッグ・データを組み合わせれば、がん治療などの医療サービスを効率的に提供できるとみている。
気になる承認の時期だが、アメリカでは2019年中の承認を目指しているという。日本でもできるかぎり早期の治験と承認を目指している。小林久隆氏は「日本で治療として実現するのは3年~4年後でしょうか」と期待を述べています。
効きすぎて副作用
ほぼ副作用のない画期的な治療法であるが、効きすぎることによる問題も指摘されている。腫瘍が上腸間膜動脈などの大きな血管に絡みついている場合、光免疫療法によってがん細胞が破裂して消失したら、それまで腫瘍が蓋をしていた血管に大きな穴が空いてしまい、大量出血で死亡する恐れがある。
光免疫療法に関する資料
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- ホテルニューオータニでのスペシャルセッション 小林久隆氏と三木谷浩史氏も出演
- 米国国立衛生研究所(NIH)が作成した動画
- 小林久隆氏が監修した『がん光免疫療法の登場』
- NCIプレスリリース2011年11月7日 「米国立衛生研究所のチームが考案した光線療法、マウスの癌細胞を標的として破壊」
- Cancer cell-selective in vivo near infrared photoimmunotherapy targeting specific membrane molecules
- 近赤外光線免疫療法による新規がん治療
- 特異性を重視した新たな癌の 分子イメージングと近赤外光線免疫療法
- 近赤外線を用いた標的分子特異的がん治療
- Wikipedia「光免疫療法」
- ClinicalTrials.gov 「Study of RM-1929 and Photoimmunotherapy in Patients With Recurrent Head and Neck Cancer」再発頭頸部癌患者におけるRM-1929および光免疫療法の臨床試験