今日の一冊(91)『がんが再発・転移した時、あなたは?』

「ここではもう、できる治療法はなくなりました。ホスピスを紹介するので、そちらに移った方が良いでしょう」と説明する医師が増えています。

この、新しいパターナリズムに対応するには、患者の側に「患者力」をアップして備える必要があるでしょう。

一方で、患者の側にも「死ぬのか、生きることができるか」で治療法を選択する傾向があります。再発・転移したがんに対する抗がん剤は、治すことではなく、自分らしい日常生活をいかにして続けるか、がんに伴う辛い症状をいかに軽くすることができるかが目的なのですが、それを理解していない患者も多いです。

そうした、「こんなこと、知らなかった」がたくさん詰まった一冊です。

がんが再発・転移した時、あなたは?: 「末期がん」と共に生きる知恵

がんが再発・転移した時、あなたは?: 「末期がん」と共に生きる知恵

岩崎 瑞枝, 清水 大一郎, 原口 勝, 江﨑 泰斗, 五十嵐 享平, ファイナルステージを考える会
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抗がん剤治療を受けるときに考えること

受けようとしている抗がん剤治療の目的を、はっきりと医者に確認することです。術前・術後の再発転移予防なのか、手術ができない場合のQOLの維持と症状の緩和、延命が目的なのかという区別を理解しておきましょう。

手術ができないあるいは、再発・転移したがんの場合、腫瘍マーカーの増減やCT画像による腫瘍の縮小に一喜一憂するのではなく、それらはあくまでも「症状の緩和、延命」目的を達成するために投与する抗がん剤の効果を判断する「指標」の一つであって、数値自体が目的ではないのです。

抗がん剤による治療の効果がなくなったときは、早めに治療を止めることで返って延命につながることがあります。医師もなかなか言いづらいことなので、患者の側から「もうやめた方が良いのでしょうか」と聞いてみることも一案でしょう。

がんの痛みについて

第2章は正しく知れば怖くない「がんの痛み」についての解説です。

がんの痛みは、モルヒネ(医療用麻薬)が使用されることが多いのですが、このモルヒネに対し て、患者さんサイドに多くの不安や誤解が根強いと清水氏は言います。麻薬中毒になる、命が縮 む、長期に多量に飲むと効かなくなる、意識がもうろうとする等、すべて誤解です。また、がん患 者さんへのアンケートによると、がんの痛みは我慢すると思っている方が半数を超えています。痛 みを訴えると治療が進まないのではとか、モルヒネへの不安がそうさせているのでしょう。

しかし、清水氏は力説します。痛みがあると体力を消耗し、かえって治療に耐えるだけの余力が なくなり、免疫力を落としてしまうのです。

ただし、「痛み」は本人だけが感じるものです。痛みのプロであっても患者さんの痛みを直接感 じることはできません。どこが痛いのか、どんなふうに痛いのか、痛みの強さなど、患者さんが上 手に医師に伝えることで、痛みの治療は進み、患者さんは楽になり体力を温存できます。

患者力を育てる

4章は、末期がんの患者さん・家族を支える活動をしている「ファイナルステージを考える会」 の代表世話人である岩崎瑞枝が、豊富な経験や知見から賢い患者の心得を紹介しています。

その要となる言葉が「患者力」です。

患者力とは、自分の病気を見極め、医療者の力を借りながら自分の病気と向き合う力のことです。この力なくして再 発・転移になってからの自分らしい生き方はできません。

医療者には、自分のがんに今どんな治療が適切なのかを上手に尋ね、自分の生き方の要望も伝え、そのやりとりから医療者と良好な人間関係を育むことで、再発・転移になってからの自分らしい生活の指針が立てられます。

最近、患者さんに直接「この病院でできる治療はなくなりました。ホスピスを紹介しますので、 そちらに転院するのがよいでしょう」と説明する医師も多くなっています。今、緊急に、こういう新しいタイプのパターナリズム(強い立場にある者が、弱い立場にある者の利益になるようにと、本 人の意志に反して行動に介入・干渉すること)にも対応できる患者の足腰の強さも必要になってきていると感じます。

ここでコミュニケーションのツボを習得し、賢い患者になりましょう。

患者力を育てるには、まず知識の習得です。「がん情報サービス」などを上手に利用しましょう。もちろん、このブログも知識の宝庫です。

医師が教える患者のコミュニケーションおススメ事例

MDアンダーソンがんセンターの医師の上野直人氏が勧める会話例です

■医師を不機嫌にしない例、

1.病気のことをもっと教えて欲しいとき

X「この病気をもっと理解するために、いい本はないですか?」

○「病気のことを調べるために、どんなキーワードで検索すればいいですか?」

2.病気の正式名を教えて欲しいとき

○「インターネットで自分も勉強してみたいので、病気の正式名称を教えていただけますか」

■医師に何故がんになったか、原因ではなくメカニズムを聞く場合

×「私は、どうしてこの病気になったのですか?」

○「どういう理由で、このような症状がでているのでしょうか?」

4自分の予後が知りたいとき

X「私はこの後、生きているんでしょうか、死ぬんでしょうか?」

○「○○によってがんが縮小すれば、生きる確率は高くなるのでしょうか?」「検査の数値で 「○○くらいだと、治療は受けやすくなるのでしょうか?」など具体的に尋ねる。

がん遺伝子をオフにする生き方

第7章には、がん遺伝子をオフにする瞑想の力が説明されています。でも、それに関してはこのブログの記事の方が詳しいです。

マインドフルネス瞑想法は、遺伝子スイッチともかかわる ここが分かってきたのです。

アメリカ、フラン ス、スペインの研究者が、マインドフルネスにより、炎症にかかわる遺伝子に変化が起きることを実験で明らかにしたのです。 「8時間マインドフルネス瞑想を集中的に行うグループと、8時間静かな環境で過ごし瞑想を行わないグループに分け、遺伝子の状態を調べました。すると、瞑想を行ったグループに遺伝子の変化が現れたのです。その1つが、「スイッチオフ」現象でした。瞑想を行なったグループでは、スイッチオフ現象の発現が少なかったというのです。

アメリカのある研究チームは、マインドフルネス瞑想法が「テロメア」と呼ばれるDNAの一部に影響することを発見しています。テロメアは細胞が分裂するたびに短くなり、一定以下になると細胞分裂は行われなくなり、細胞の寿命に関わっていると考えられています。心理的ストレスの顕著な低下を示した患者を調べると、テロメアを保護する酵素が活発になっていました。このことは、マインドフルネスが細胞老化のプロセス を遅らせる可能性を示唆しているといいます。


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