今日の一冊(89)『統合医療の真実』

Web交流会のご案内


【日 時】2020年12月12日(土) 13:00~16:00(開場:12:45)
【場 所】Zoomを使ったオンラインの集まりです
【対 象】膵臓がん患者とその家族、遺族
【参加費】500円 (PayPal決済、郵便振替)
【定 員】100名
【内 容】
第一部 がん研有明病院 腫瘍精神科部長 清水研先生の講演
『もしも一年後、この世にいないとしたら ~4000人の患者家族と対話した精神科医の学び~』
第二部 患者さん同士の交流会

ウェブ会議ツール「Zoom」を使ったWeb交流会となります。
スマホだけで簡単に参加することができます。

参加申込受付中です。 詳しくはオフィシャルサイトで


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現場から始まる医療革命 統合医療の真実

現場から始まる医療革命 統合医療の真実

篠浦 伸禎
1,728円(11/23 12:12時点)
発売日: 2018/01/11
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著者の篠浦伸禎氏は、都立駒込病院で脳神経外科部長を務める脳外科医です。脳外科と統合医療? どんな関係があるのか? 関係なさそうだけど? と不思議に思って手に取りました。

覚醒下手術の第一人者

脳腫瘍が言語野まで及んでいる場合を例に取ると、覚醒下手術とは、手術中に患者さんの意識を覚醒させ、摘出する部位に電気刺激を行いながら発話停止の有無にて言語領域を把握し、摘出範囲を決定する手術です。全身麻酔が効いていると患者の反応が分からないので、摘出する範囲を正確に決めることができません。覚醒下手術ならそれが可能になります。篠浦先生は、覚醒下手術の第一人者と言われています。

なぜ統合医療なのか

脳の病気は、外傷などとは違い、自分の体のなかから出てくる病気なので、がんと同じ生活習慣病だという認識です。

生活習慣病は、治療に多くの共通点があり、篠浦医師は、エビデンスがなくても「患者さんがよくなればいいじゃないか」という、何でもありで統合医療を標榜するスタンスを取っているのです。

覚醒下手術においても、患者の症状が悪くなればいったん休むと、患者の自然治癒力が働いて、症状が改善することがよくあります。こうすることで手術後の経過もよいことが多いのです。

また、覚醒下手術だけで、脳に浸潤した悪性脳腫瘍の患者を治癒までもっていくことは不可能です。悪性脳腫瘍も生活習慣病であり、食の乱れや運動不足、ストレスなどが原因となっています。したがって、西洋医療による手術と、免疫力や自己治癒力を上げる統合医療を最初から併用する必要があるのです。

その結果、『がんに効く生活』の著者シュレベールと同じ、余命1年とも言われる膠芽腫の患者で、治癒する症例も出てきたのです。

現場はエビデンス主義では回らない

エビデンス至上主義にも反対しています。

現場で実際医療をやっている私にとっては、この西洋的なエビデンスレベルが一番有用であり、それに基づいて治療法をすべて決めようとするやり方には、いくつか問題点をはらんでいると思います。

ランダム化比較試験は一番有用だと思いますが、我々のように、命に関わるような治療をしている人間は、治療法を現場に会わせて改善していくことの方が現実的なのです。

ランダム化比較試験は、命を左右するような治療には向いていいない。

がん治療だって、命に関わる治療ですからね。

目の前に病気で困っている患者さんがいるのに、エビデンスが高い治療のみしかやらない、それでダメならあきらめてくれという医師がかなりの割合でいるのです。

患者がよくなるためであれば、あらゆることを提案することが大事だと考えています。

その通りです。エビデンスの元となった臨床試験の条件にぴったりと当てはまる患者は、めったにいません。

ニンニクの効用は、ランダム化比較試験をしていないから、エビデンスレベルは低いのですが、せいぜい数千例の症例で数年間の臨床試験しかしていない新薬と比較して、何千年、何億人もが薬代わりに使ってきたニンニクのようなものの法が、エビデンスレベルは高いのではないかと、述べています。

これなど、漢方全般についても言えることです。

ここまでは、ガッテンです!

篠浦医師の勧める統合医療

さて、この篠浦医師の薦める統合医療の中身ですが、結論を先に言えば、玉石混淆、トンデモ療法も含んだ、首をかしげたくなる内容です。


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目次から引用すると、

  1. 食の原則1 玄米菜食を主体にする
  2. 食の原則2 肉、乳製品、砂糖、卵は控えめにする
  3. 食の原則3 発酵食品、海産物、キノコ類を摂る
  4. 食の原則4 食事から化学物質をできるだけ除く
  5. 食の原則5 食事量を減らす
  6. 食の原則6 サーパーフードをうまく活用する
  7. 食の原則7 食の原理主義者にならない
Πウォーター

4.の食事から化学物質をできるだけ除く、は当然よいことなんですが、その方法として持ち出してきたのが、「Π(パイ・ウォーター」です。

パイウォーターとは一体何か…。これは元名古屋大学農学部の山下昭治博士が、生体システムの研究の進行途中のさ中に発見された、 ヒトをはじめ、地球上の全ての生き物の細胞の内部にある「体の中にある水」と殆ど同じ働きをする、 極々微量の二価三価鉄塩に誘導された水の事を指します。 「体の中の水」は普通の飲料水とは構造が全く違っていて、酸化還元反応・化学反応を全く行わない、いわゆる「非イオン化水」なのであります。

極々微量の二価三価鉄塩が、なんと、「植物の種子遺伝子に温度や光の情報を伝達する役目をもっていることが解明され、食物の遺伝子情報も記憶することが証明された」という、トンデモ科学です。

物理学では水のクラスター理論は70年代に終わった理論デス。平熱でさえ1兆分の1秒で転位する水の分子の早さから考えれば、いかなる情報も保存しえないのは自明のことです。

水の結晶に「愛」とか「健康」と言葉をかければ、綺麗な結晶になる、水は言葉を記憶すると、一時流行ったものと同じ似非理論です。

ノニジュース

また、ノニジュースも勧めているのですが、これについては、『「健康食品」の安全性・有効性情報』にあるノニジュースの項を張っておきます。

●  ノニジュースの有効性と安全性
ノニジュースは、俗に糖尿病、高血圧、免疫力の強化、心臓病、ガンの予防、美容や健康に効果があるといわれていますが、ヒトにおけるそのような効果に対する科学的根拠は現時点では見当たりません。動物や細胞の実験において抗ガン作用を示した報告はありますが (PMID:11795436) (PMID:10441776) 、その作用についてはさらなる検討が必要とされています (PMID:14664736)

ノニの根にはアントラキノン (anthraquinones) が含まれていますが、果実には含まれていないと報告されています 。特に発ガン性があるアントラキノン誘導体のlucidin とrubiadinは、果実から調製するジュースには含まれていないと報告されています 。

2002年12月に欧州委員会 (Scientific Committee on Food) は、タヒチアン・ノニ・ジュース (モリンダ社 (MorindaInc.)) の安全性についての報告書を出しています (2) 。その報告書には、ノニジュースに (1) 亜急性および亜慢性毒性、遺伝毒性、アレルギー誘発性の試験において有害作用は検出できないこと、また数カ国で市販されてから数年経過しているが健康被害の報告はほとんどないこと 、(2)有効性においても他の果実ジュース以上の健康効果はないと記載されています。市販されているノニジュースにはいろいろな商品がありますので、全て同じとはいえません。特に天然のものから調製するときは、同じメーカーの商品であっても、常に同じ成分組成のジュースを作成することは極めて難しいことです。従って、この報告書の内容が全てのノニジュース商品に当てはまるとはいえません。

済陽式ゲルソン療法の勧め

食事については、多くが済陽高穂の著作から引用して手直しした内容です。普通のジューサーでは高温になって栄養分が壊れるから低速ジューサーで野菜ジュースをつくりましょう、等はその一例です。(巻末に参考文献として堂々と上げています)

「気療」なるものも登場します。手から強い「波動」がでて、ベンガルトラも眠らせるというものらしいが、「波動」が出てくれば、「イカサマ、似非療法」の資格十分です。

ホルミシス効果

放射線のホルミシス効果を肯定する立場から、LETモデル(しきい値なし直線モデル)に反対してます。玉川温泉や三朝温泉などのラドン温泉が治療に有効であるかのように説明しています。

LNTモデルに対しては、その元となった実験がショウジョウバエの精子を対象にしたものであり、この細胞にはDNAの修復作用がないために、低い放射線量でも障害を起こしたのであって、人間には当てはまらないと主張しています。

LNT仮説は、広島・長崎の被爆者生涯追跡調査の結果から引き出されたものであり、この追跡調査は開始して50年以上になるが、被爆による年間過剰死亡数は増え続けています。

また、米国科学アカデミーのBEIR-VII(電離放射線の生物学的影響に関する第7報告)では、低線量を0~約100ミリシーベルト程度までと定義し、この線量域での被曝によるリスク推定は「しきい値なしの直線モデル」が妥当としている。「放射線被ばくには、これ以下なら安全」と言える量はないと発表しています。さらに、15カ国の原子力施設労働者の調査によっても、線量限度以下の低線量被曝で、がん死のリスクが高まることが明らかになっているのです。

放射線ホルミシス効果は、原子力発電所の運転の障害にならないようにと、電力会社の音頭で持ち出された経緯があり、その代表格である電力中央研究所のサイト(「放射線ホルミシス効果に関する見解」)では、ホルミシス効果について、次のように載せています。

  • 現在、当センターでは、放射線ホルミシスの研究は行っておりません。
  • これまでに得られた知見からは、ホルミシス効果を低線量放射線の影響として一般化し、放射線リスクの評価に取り入れることは難しいと考えています。
  • 当所の成果を引用して放射線ホルミシス効果を謳った商品の販売を行っている例がありますが、当所とは一切関係ありませんのでご注意下さい。

詳しくは私の過去記事に書いています。

篠浦先生のこの本、総論はよいけど、各論ではトンデモ理論満載です。


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