週刊新潮に膵臓がんの最近治療情報

週刊新潮の11月26日号に、富山大学附属病院 膵臓・胆道センター長の藤井努教授の記事が載っています。

 膵臓がん治療の最前線

が要領よくまとめられています。

2010年くらいまでは膵臓がんの5年生存率は5%程度でしたが、今年3月に国立がん研究センターが発表したデータによれば、膵臓がんと診断された患者の5年生存率は9.9%と、以前よりも改善はされています。しかし依然として膵臓がんの5年生存率はダントツで最下位です。

とはいっても、膵臓がんをめぐる状況は明らかに良くなってきています。しかもこの数字は2009年から2011年までに診断された人たちのデータですから、最近になって膵臓がんが見つかった方の5年生存率はより高まっているはずです。

手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ」

手術ロボットダ・ヴィンチは、「ロボット支援下膵体尾部切除」で既に保険適応となっていたのですが、2020年の4月には膵頭十二指腸切除術に対して保険適用となりました。このことによって外科手術の安全性が飛躍的に向上しています。

2011年の統計では、膵臓がん患者100人のうち3人が手術が原因で命を落としています。しかし日本では欧米に比べて少ないほうです。術後に膵液が漏れる「膵液瘻」と呼ばれる合併症も発生するのですが、ダ・ヴィンチを用いるとそうしたリスクも少なくなります。

藤井教授が開発した「ブランガート変法縫合」という手術法によって、膵液瘻はこれまでの1/10以下にもなっています。

術前化学療法の効果

化学療法の効果について教授は次のように比較して述べています。

ゲムシタビンと S 1の効果を”ピンポン玉”に例えると、オニバイドは”ソフトボール”、FOLFIRINOXとアブラキサンは”ボーリング球”ほどの威力がある。

FOLFIRINOXの副作用に耐えられず治療を断念する患者も多いのですが、その点効果では多少劣るものの、オニバイドは副作用が抑えられています。膵臓がん患者にとって、選択肢が増えたことは非常にありがたいことです。

『膵がん診療ガイドライン2019』においても、ゲムシタビンと S 1を併用した術前化学療法が「弱く推奨」されていますが、膵臓がんの術前化学療法の臨床研究には藤井教授も参加したのですが、抗がん剤でがんを叩いてから手術を行った方が生存率も高く、再発率は低いという結果が出ています。

ステージ3のコンバージョン手術 5年生存率は73%

まだ保険には未収載ですが、ステージ4の膵臓がんへの特殊な治療法も臨床研究が進んでいます。

腹膜播種に対してカテーテルを挿入して腹腔内に直接抗がん剤を投与する治療法です。

藤井教授の患者でも、ステージ4と診断された50代女性ですが、かなり腹膜播種も進んでおり、CT 画像ではお腹中にがんが広がっていました。余命は持っても6ヶ月という状態でしたが、腹腔内に抗がん剤を投与した結果、がん細胞はほぼなくなり、元の原発巣の膵臓がん自体も小さくなっていました。

それでコンバージョン手術に踏み切ったのですが、この女性患者は2年半以上が経過した現在も再発はなく元気に過ごしています。

藤井教授の執刀した、ダ・ヴィンチを使ったステージ3「切除不能局所進行膵臓がん」のコンバージョン手術では、術後の5年生存率が73%に達しています。これは驚くような数字ですね。

こうした術前化学療法や腹腔内への直接抗がん剤投与によって、ステージ4でもダウンステージングして手術が可能となる例が徐々に増えてきています。

ダ・ヴィンチの導入されている病院

ダ・ヴィンチを導入する病院は急速に増加しています。そのため技術を持つ医師の数が足りなくて争奪戦の様相とも言われているようです。

また、ダ・ヴィンチの特許が切れたので、開発競争も熾烈になっており、様々な企業が開発をしているので、現在は3億円と言われるダ・ヴィンチもより安価になってくるでしょう。

導入している医療機関は把握できませんでしたが、日本ロボット外科学会に「専門医取得者一覧」が載っています。ここに記載された病院にはダ・ヴィンチが導入されていると考えて良いでしょう。

「がんの王様」と言われる膵臓がんでしたが、徐々にではありますが、治療成績も良くなってきています。


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