専門家の「分からない」は信用できる
トンガ王国の海底火山の噴火による影響で、日本の太平洋沿岸にも津波が押し寄せました。
気象庁は、最初は大きな影響はないと発表していたのですが、後から津波注意報や津波警報を出す事態になりました。通常の津波に比べて早いスピードで到達していることなどを考慮すると、火山爆発による衝撃波が伝わって日本全体に数ミリ hPa の気圧変動が生じているようです。その影響が日本付近で蓄積をして1 m を超える潮位の上昇になったという風に考えられています。(噴煙の周囲にある灰色の円状のものが衝撃波)
しかし、それは未解明の機序によるものです。そこで気象庁の発表は次のようなものでした。
「今まで私達はこういう現象を知りません」
分からないことを分からないとはっきりという専門家は、正直信用していいと思います。
ネット上では「専門家なのにわからないのか」というふうな非難がありますが、科学ではまだ解明できない部分はたくさんあります。未知の部分に対しては謙虚な姿勢で望むのが科学的な態度です。
医学でも同様です。
がんに関しても、分からないことを、さも全て知っているかのように断言する自称専門家や、医療従事者がいます。
膵臓がんで、CA19-9が30,000を超えているのに、「大丈夫ですよ。うちのクリニックでは30000から1000台になった患者もいます。治療を続ければあなたには10年の余命をプレゼントできます」と優しい笑顔でおっしゃった免疫細胞療法の自由診療クリニック医師もいました。「造影CT? まだ撮る必要はないでしょう」とも。患者は数カ月後に亡くなりましたが。
これなどはもう「殺人罪」でしょう。
本来は、専門家が質問に対して正確に応えようとすると、その説明は歯切れの悪いのものになるのです。色々な前提や条件によってその答えが変わってくるでしょうし、特に人間の体は同じ治療法に対しても反応が違うので、統計的にしか説明することができません。
となると必然的に回りくどく、歯切れの悪い、断定のできない説明になってしまうのです。
逆に、これをすればがんが治るだとか、これは新しい治療法だから、あるいは論文に載っているからだとか、そういったことで信用してはいけません。
仮に、論文に載った新しい治療法があったとしても、ノーベル賞を受賞した本庶佑氏は次のようなことを言っています。
「ネイチャーやサイエンス誌に出てくるものの9割は嘘で、10年経ったら残って1割」
今あるエビデンスも10年後にはそのほとんどが変わっているはずです。似非専門家の嘘に騙されないようにしましょう。