今日の一冊(166)「ステージ4の緩和ケア医が実践する がんを悪化させない試み」山崎 章郎
ステージ4だけど、標準治療の抗がん剤はしたくない、あるいはできないとき、がん患者にはどのような対応法があるのだろうか。
在宅緩和ケアのパイオニアとして、2000人以上の看取りを行ってきた「ケアタウン小平クリニック」院長 山崎章郎医師。
2018年6月に大腸がんが見つかり、腹腔内視鏡下の手術で腫瘍を切除し、再発防止のための経口抗がん剤「ゼローダ」を服用するが、その強烈な副作用に、日常生活も仕事もままならない状態に陥った。
そして副作用に耐えて頑張った甲斐もなく、半年後に両肺に多発転移が見つかる。ステージ4である。
30年以上も緩和ケアを行っていた医師であるから、ステージ4の抗がん剤治療は「症状の緩和と延命効果」を狙ったものであるという認識はもちろん持っている。
そして抗がん剤の効果も、化学療法を行わない場合に比べて数ヶ月から数年程度の延命が期待できる程度であることも分かっている。
しかしゼローダの副作用を経験した身としては、たとえ延命効果があったとしても、その期間を抗がん剤の副作用との戦いだけに費やすことになる。それでは自分のライフワークも貫徹することができない。
このような思いで、抗がん剤治療は選択せず、定期的な造影 CT 検査だけをお願いすることにしたのである。
ステージ4でも抗がん剤はしない、しかしがんは悪化させない療法とは?
ステージ4の固形がんに対して、ほとんどのがん治療医は、エビデンスに基づいた抗がん剤治療こそが最善の医療だと言うだろう。だが、それは治療を提供する 医師から見た場合の最善 という意味であり、上述してきた抗がん剤治療の現実をみれば、限られた時間を生きる患者さんにとって最善とは限らない
であるから、
まずは私自身の身体を実験台にして、少しでも穏やかに、がんと共存でき得る方法を探し求めてみた。結果、既存の代替療法を組み合わせて、標準治療としての抗がん剤治療は選択したくないステージ4の固形がん患者さんの役に立ち得る、副作用の少ない、高額ではない治療法である「がん共存療法」という基本形に辿り着いた。
山崎医師がたどり着いた「がん共存療法」を行った結果、両肺の転移巣は一旦縮小し、ほぼ消失したが、再び増大することになった。しかし、再発時の大きさよりは小さい状態で、3年以上「無増悪生存期間」を延長している。
その基本形は次の要素で構成されている。
- ビタミンD強化EPAたっぷり糖質制限ケトン食
- クエン酸療法(膵臓がん患者はやってはいけない!)
- 丸山ワクチン
- テクノセラピー
- 少用量抗がん剤治療
これらの療法は山崎医師が考案したものではなく、宗田哲男医師、古川健司医師、福田一典医師、高橋豊医師、三好立医師らが考案し実践している治療法である。
一般的な腫瘍内科医が見れば、「山崎よ、お前もか?」と言われそうな内容だと、本人も自覚している。
クエン酸療法は、メトホルミンを同時に服用する必要があるなど、一般の患者には難しい治療法である。
私から見ると怪しげな療法も含まれている。
しかし、この「がん共存療法」を臨床試験によって有効性を証明して標準治療にしようという、余命がない医師の壮大なチャレンジである。その臨床試験に参加してくださる大腸がん患者も募っている。
今後どのような展開になっていくのか、肺に転移した腫瘍が消失してしまうのか、それとも現状のままなのか、興味深く見守っていきたいと思います。
お久しぶりです。
相変わらず、素晴らしい内容ですね。
大変、参考になりました。
のっぽ先生
お久しぶりです。ブログの更新も見ていますので、お元気そうで何よりです。
15年も経つといささかくたびれてきましたが、後期高齢者、まだまだ頑張ります。