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米国医療は「こころ」の重視へ

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「心と癌と量子力学の関係」などと、いささか「とんでも本」的な内容を書きましたが、量子力学はともかくとして、心と癌の関係はもはや常識になっているようです。

右の「膵臓癌おすすめサイト」にリンクを張っている安西英雄さんの「米国統合医療ノート」には数回にわたってアメリカの統合医療の現状が紹介されています。鍼灸・カイロプラクティック・ハーブを代表とする初期の補完代替医療と現代医療を組み合わせた「統合医療1.0」から、「こころ」の重要さを認識した「統合医療2.0」に変わってきた。現在のアメリカの医療は統合医療2.0にはっきりと変化して来たのだというお考えです。(Web 2.0 を借用して 統合医療 2.0 と命名されています)

「統合医療」は日本ではまだ医療の世界の片隅で一部の医師が行っている「変わった医療」にすぎません。しかし米国では、医学の主流が真剣にテーマとしている一大潮流なのです。(米国統合医療ノート 2009/5/25)

 

これほどこころに関心が向かうようになったのには2つの理由があります。心身のストレスの蓄積がおよぼす健康への深刻な悪影響が広く認識されるようになったこと。それから、心身相関についての医学研究が近年目覚しく進んだことです。

90年代にImmuno-neuro-endocrinilogy(免疫神経内分泌学)という言葉がはやりました。免疫系・神経系・内分泌系とも、生体が恒常性(ホメオスターシス)を維持するための重要なシステムですが、それらが互いに影響を与えあっていることがわかり、そこに研究者の関心が集まったのです。

いま医学の世界では、それと似たPsycho-neuro-immunology(心理神経免疫学)、あるいはPsycho-neuro-endocrinology(心理神経内分泌学)という言葉がもてはやされています。いうまでもなく、心理状態も免疫系・神経系・内分泌系と影響をおよぼしあう、という概念で、この分野の研究はいますごい勢いで進んでいます。

こころが重要ならば、こころの主体である患者を大切に扱うのは当然のことです。Body・Mind・Spiritという発想を常識として持ち、患者の主体性を尊重した優しい医療を目指そうとしている統合医療が、この心身医学の流れと合流するのはきわめて自然なことでした。

そしてこころのはたらきを考えた治療法を取り入れてみると、実際に治療効果があがることが次々に示されました。こうして基礎研究と臨床研究の裏づけが蓄積するとともに、心身医学は米国統合医療の重要な必須科目になったのです。(米国統合医療ノート 2009/5/31)

7月22日のブログ「心と癌と量子力学(4)」で紹介した『こころと治癒力』のような本が百万部のベストセラーを続けているということにもアメリカの現状が現われています。この本でも、医師は患者を一人の人間としてみること、患者の家庭状況まで知らないと本当の医療にはならない、この方向が結局はローコストの医療改革になるのだと主張していました。

「海外 癌医療情報リファレンス」の7月28日付でこんな記事が載っていました。M.D.アンダーソンがんセンターで、7月22日に次のような教育セミナーが開催されたという記事です。

7月22日(水)午後5:30~7:30(プログラム 6:00開始)
M.D.アンダーソンがんセンター、South Campus Research Building 7435 Fannin Street at Old Spanish Trail

テキサス大学M.D.アンダーソンがんセンターは、ベストセラー『がんに効く生活』の著者ダヴィド・S.シュレベール医師(医学博士)を迎え、教育セミナーを7月22日(水)に開催。
サウスキャンパス・リサーチ・ビルディング(7435 Fannin Street at Old Spanish Trail)にて5時30分に開場、その後6時からイブニングプログラム。一般入場無料。

S.シュレベール医師は著書を引用し、日々の生活やがん予防に関する人々の考え方に変化を与え、次の事柄について実践の方法を分かちあう。

・ 科学的根拠にもとづく抗がん食を取り入れる
・ ストレスがいかにがんに影響するかを認識する
・ 運動、ヨガ、瞑想のメリットを享受する
・ 環境有害物質への曝露を最小限に抑える
・ 従来の健康法と代替的な健康法のバランスをとる

S.
シュレベール氏は熱意ある科学者・医師であり、文筆家としての評価も高い。そして自身もがんサバイバーである。臨床精神医学教授、ピッツバーグ大学メディ
カルセンター内総合医療センターの共同創設者にして、国境なき医師団の創立メンバーであり現在も国際的危機への介入に尽力している。

シュレベール博士の『がんに効く生活』は、NHK出版から今年の2月に翻訳されて出版されています。あまり話題にはならなかったようですが、内容はまさに「統合医療 2.0」です。目次を紹介します。

がんに効く生活―克服した医師の自分でできる「統合医療」 がんに効く生活―克服した医師の自分でできる「統合医療」
ダヴィド・S. シュレベール David Servan Schreiber

日本放送出版協会  2009-02
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  1. 統計や数字でわからない、本当の「余命」
  2. がんの弱点を知る
  3. がんに効く生活―環境を知る
  4. がんに効く生活―効果のある食物
  5. がんに効く生活―心の力
  6. がんに効く生活―運動
  7. まとめ―(がんを)作らない、育てない、あきらめない

からだの見張り番である免疫細胞をどのように活性化するか、がんを防ぐこころのあり方の秘訣、死の恐怖を乗り越える秘訣。著者自身の実体験に基づく内容ですから説得力があります。

シュレベール博士が最初の外科手術と化学療法を受けたあと、担当のがん専門医に、今後どのような生活をした方がよいのか、再発しないためには何に注意するべきかと質問した。がん研究の第一人者でもある担当医は、「これといってすべきことはありません。普段どおりの生活を続けてください。定期的にMRI検査をしましょう。再発してもすぐに分かりますから。」と答えた。「でも、自分でできるエクササイズとか、食べた方がよいものや食べてはいけないものとかがあるのでは? 精神的には何に気をつけた方がよいでしょうか?」と食い下がったが、「日常生活のこういう点に注意すれば再発が防げると断言できるような科学的なデータなど存在しないのですから」とにべもない。

私の場合も同様でした。患者は再発するかもしれないと思いながら、何もしないで過ごすことには耐えられないのです。しかし、現代医学のエビデンス至上主義では確かに断言できるようなデータは存在しないかもしれません。でも、一方で同じ病期で、同じような治療をしても再発する人もいれば再発しない人もいる。そうした結果になるには何かが違うはずです。

彼は最終的には次のような結論に達します。「私たちは誰でも、体内にがん細胞の芽を持っているだけでなく、体自体がその芽ががんに育つプロセスを妨げるように作られている。それを活用するかしないかは、本人次第である

この本に書かれている「がんに効く生活」のほとんどが、私が「私のがん攻略法」に書いて実行していることと共通しています。この方向でよいのだと、更に確信を与えてくれる著作でした。内容を良く吟味して、私の攻略法に足りないものがあれば付け加えて修正したい、そうすれば一層の希望が持てると思います。巻頭にある次の言葉は、こころ(精神)の働きの重要さを改めて確認しているようで印象的でした。

「私はかねがね、科学としての医学の唯一の問題点は、十分に科学的でないところにあると考えている。医師と患者が、自然の治癒力を通じてからだと精神のもつ力を引き出すことができるようになるまでは、現代医学が真に科学的になることはないだろう」 ルネ・デュボス(抗生物質の発見者)

医師であり、研究者、ピッツバーグ大学統合医療センターの院長でもあった著者が、自分のがんを合理的・科学的に考え抜いてサバイバーになったのです。統合医療に興味がある人ならばぜひ読んでおきたい一冊です。間違いなく。


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