『がんの統合医療』(3)

がんの統合医療
統合医療に関する誤解の第一は「統合医療=補完代替医療」とする考えである。統合医療は現在の通常医療の範囲を超えた考えや実践を包括しているが、通常の医療を一方的に拒否するものでもないし、代替医療を無条件で受け入れるものでもない。その実際のイメージを掴んでいただくためには、『がんの統合医療』の二人の監修者、ワイルとアブラムス医師が、胆管癌の患者に与えた助言を見てみよう。

最近、胆管癌と診断された64歳の男性が、本書の2人の監修者に助言を求めてきた。彼を診ている、ある大きな大学病院の医師たちはWhipple法による膵頭十二指腸切除術が適応であるとの意見で一致していたが、この専門医たちは術後の補助療法に関しては意見が一致しないとのことであった。なぜなら、これはまれながんであり、補助療法に関する統計学的なエビデンスに乏しく、彼が相談していた腫瘍内科医たちは膵癌の経験に基づいて指導を行っていた。フルコースの放射線療法とそれに引き続いて積極的な化学療法をするようアドバイスした。

その患者は教養があり、健康を常に意識して、広い展望をもった専門家からの他の選択肢におおいに興味をもっていた。腫瘍内科医は、彼が使っているサプリメントの是非や、どんなものを食べてよいか、あるいは食べてはいけないかについて彼が質問しても答えることができなかった。また、(結果に影響するかもしれない)運動や精神的・感情的な要因について、あるいはライフスタイルの要因ーこれらはがんの進展に影響を及ぼすかもしれないし、手術療法や放射線療法・化学療法から逃れたがん組織を遺残させるかもしれない一について、何も説明できなかった。

私は、ある現代中国医学の施術者を彼に紹介した。その施術者は中国の医師(MD)で中国式のがん統合医療の経験をもっていた。この医師は、手術により遺残したがんの発育を遅らせ、骨髄や免疫組織を放射線や抗がん剤による障害から守るために、ハーブ製品を勧めた。彼は最終的なパートナーであった腫瘍内科医および外科医に相談することなく、この製品の使用を決断した。

私はまた彼に、たまたま近隣の都市で開業していた数少ない統合腫瘍医の一人を紹介した。患者は手術前に2回面談し、治療中の栄養とサプリメントに関する質問に答えてもらった。彼はさらにいくつかの点についてアドバイスを受けた。

その患者はそれから、私が紹介した催眠療法士(hypnotherapist)との電話でのやりとりで術前の準備を行い、病院内で使えるよう(催眠療法の)録音テープを入手した。彼がセカンドオピニオンのためにAbrams医師(本書の監修者の一人)に電話するまでに、私は彼が意見や情報が過多になって混乱していることを実感した。そこで、私は他の医師たちが対応できないような問題については、アドバイザーとして手近な統合腫瘍医にまず相談するよう提案した。Abrams医師は、最近膵癌でWhipple手術を受けて経過がすこぶる順調なある患者を彼に紹介した。二人は何度も電話でやり取りを交わした。彼は、手術を間近に控えた者にとって何が期待できるか随分多くの情報が得られたし、術後の回復状況や治療成績については十分楽観的になることができた。これは非常に有益であった。

(私自身も実践の場でいつも、慢性疾患をもった患者には、同様の問題を抱えつつも順調に経過している別の患者を紹介するようにしている。病んでいる患者に、もっと健康になれると確信させるのにこれほどよい方法はない。がんと診断されて間もない患者にとっては、特に重要である)

手術は順調にいった。がんは原発部位を越えて広がってはいなかったが、切除断端の一つはあやしかったので、患者は迷うことなく1コースの放射線治療を受けた。しかし、同時に化学療法を併用することについては、専門家の間で意見の一致をみなかった。

患者は順調に回復した。そして、健康によい食事をとっていることを確信し、植物薬やサプリメントをとり「こころと体」の療法を実践し、できるだけ毎日歩き始めた。彼の精神状態は前向きであったが、化学療法を受けるかどうかを決めるのには苦闘した。彼の腫瘍内科医はシスプラチンを用いた積極的な化学療法を強く推したが、毒性の低い通常量のフルオロウラシル(5-FU)なら快適に過ごせるであろうと言った。腫瘍外科医を含めた専門医たちのなかには、胆管癌に対する化学療法のベネフィットはないに等しいので、どんな化学療法も推奨しない、という者もいた。あらゆる意見を慎重に考慮した後、彼は5-FUを選んだ。そして、彼の統合腫瘍医はこの選択を支持し、6週間コースの放射線化学併用療法に対して、食事内容やハープ、サプリメントを調整した。

こうした治療に直接関わった医師たちの話によれば、この患者は、副作用もそれほどなく経過し、これまでの治療経験でみたことのないほど良好な結果が得られたという。患者自身の見方では、良好な経過をたどったのは、すべて健康全般や生体防御をサポートするよう実行してきたことによるものであり、さらに研究心から、がんの統合医療を学んだことによるものであった。彼は、もう大丈夫であるという確信をもったことと、人生のあらゆる面で自らが精進することにより健康を守ろうと励む動機づけにもなったことを実感している。他のがん患者が、彼が得た情報を求めているなら進んで提供すること、さらにはがんの統合医療の分野の発展に役立つことなら喜んでしょうと思っている。

統合医療とは、がんを予防し、治療し、そしてその影響を受ける体、こころ、スピリチュアリティをあらゆるレベルで支持するために、われわれができる最善のことを単に実行するものである。

体を温めていればがんは治るとか、抗がん剤は毒だからこれを止めればがんが治るだという日本の「代替療法家」とは、本質的に違うものなのです。


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