ペプチドワクチンで腫瘍が増大することがある
退院して6日目です。何とか、本来の体調に戻ってきたようです。
グラフィック・メディカル・マガジン「Mebio」12月号が「がん免疫療法の進歩と問題点」を特集しています。中村祐輔教授の「ゲノム抗原による新しい腫瘍抗原の同定」、近畿医大教授奥野清隆氏の「海外で臨床試験の進んでいるペプチドワクチン療法」、大阪大学の杉山治夫教授の「WT-1ペプチドを用いたがん免疫療法」、北海道大学遺伝子病制御研究所教授の西村孝司教授らの「巷間で行なわれるリンパ球移入療法の概説と問題点」など興味深い記事が揃っています。
なかでも三重大学大学院医学系研究科教授の珠玖洋教授らによる「ペプチドワクチンによる免疫機構の活性化」は気になる論文です。
- 実験的研究では、ワクチンなどの免疫操作がかえって腫瘍増殖
を促すことがあることがある - SEREX同定抗原を用いた免疫は、腫瘍肺転移の治療効果の増強と憎悪の二面性効果を引き起こす
- この二面性効果は、CD4陽性CD25陽性制御性T細胞活性及びCD4陽性ヘルパーT細胞活性の誘導によりもたらされ、IFN-γによりコントロールされている
- しかし、適当なアジュバントを採用することにより抗原特異的キラーT細胞のアポトーシスも抑制され、 in Viboにおいて強い腫瘍増殖抑制効果が誘導された
等と書かれています。
近年、主としてキラーT細胞が認識する抗原ペプチドをワクチン源とするペプチドワクチンが、多くの臨床試験で評価され、開発が進められている。その基盤となっているのは、種々のマウス実験腫蕩において、キラーT細胞認識ペプチドを用いたペプチドワクチンが腫蕩増殖の抑制を導くといういくつかの報告である。しかしながら一方で、(今も臨床試験で頻用される)ベプチドとフロイント不完全アジュパント(IFA:臨床試験で広く用いられているモンタナイド)の混合投与というぺプチドワクチンの投与方法は、投与経路やスケジュール、投与量によっては、抗原特異的CD8+細胞の活性化ではなく「免疫寛容」を誘導してしまうことが、マウスモデルで報告されている。「Mebio-12.pdf」をダウンロード
人体は複雑系であり、多田富雄氏が言うように免疫も複雑系のスーパーシステ
ムです。がん細胞を免疫系でやっつけることはなかなか一筋縄ではいかないのでしょう。アジュバントの工夫で何とか対応できそうですが、一層の研究が望まれます。それにしても国のがん予算が少なすぎます。